第58話

《前書き》

あ、はい。

ここでエタりました。

というか去年は高校生になってクラスに馴染めず少し塞ぎ込んでいたせいで、執筆できていなかった時期がありまして。

しかも、こんなクッソ長い小説(しかもプロットがない)……ぶっちゃけると細かい設定が頭から飛んでいきました。

中途半端かつ行替えもしていませんが、一応掲載しておきます。

流石にいつかリメイク出す。


***



殺しあいを、と言われて光はとっさに一歩ほどの距離を後退した。何か、今までに感じたことのないようなものを感じら気がして、しかしそれは言葉にできるものではなかった。

「あんたは……」

「だから、《ハンター》だと言っているだろう?」

 嘘がはいていないな、と光は感じとる。されど、目の前の男はどこかつかみどころを見つけることのできない存在で、ギリギリと光は小さな歯軋りをこぼした。

「あんたが《幹部》って言うのなら、どうしてここまでノコノコと出てきたの?」

 もっとやり用はあるだろうに、と光が口にしたそれに対する答えは簡潔だった。

「犬どもでは貴様を殺すことはできなかっただろうさ」

 それもそうだろう、と光は思う。礼儀もわきまえずに攻めてきた敵に容赦はしないから。だとしても、だ。

「それはあんたの出てくる理由ではないでしょう?」

「クハッ、さすが《風神》。そうだよ、俺が出てきたのは元々そういうプランになっていたからだ」

「プラ……ン?」

光は、一瞬その言葉の意味を理解し損ねた。とはいえ、その刹那の時間にその言葉の意味をきちんと理解するまで至るところが光らしいのだろうか。

「じゃぁ、ここまでの流れは全て計画の中で行われていた、と。そうでもいうつもりじゃないでしょうね?」

 ありえてほしくはないな、と思いながら口にしたその言葉には思ったよりも焦りが浮かんでいたのかもしれない。ヴォルダがそれを見て、クハハと小さく笑いをこぼしたので半歩、光はさらに後ろへと下がった。のだが、

「無駄だ」

「っ、後ろ・・!」

 仮にも相手は空間に干渉するタイプの《ウエポン》を使う人間。面と向かった時のその間合いなどあまり意味をなさなかった。だとしても、光の体は風で防壁が作られている。

「それの対策を、俺が行なっていないとでも?」

「ちっ。そういうのは良くないと思うんだけどね!」

敵の言葉がブラフという可能性はないだろうと__光自身も敵の危険性を__理解して、空中で舞っていた光は、前へ飛んだ。

「私の周りを覆っていた空気そのものと、自身の位置を入れ替えた?」

「それが回答ならば、不正解だ。我々ハンターが他の一般人でも思いつきそうなそんな策に走ると思ってでもいるのか?」

それでも、光は自分の後ろで起こった事象をまるで理解することができずにいる。先の可能性が完全に否定されたのだ。だったら、これはどういうことだ?

「貴様は、一度これと同じものを見たことがあるはずだ」

「これ?」

そう言って、堂々と見せつけてきたのは指に嵌められたリングであった。指輪、とも言えない歪なものだったのでリングと言った方がしっくりくるのだ。光は首を傾げる。

「そんなもの、私は見たことがないわよ」

確かに、そのようなものをつけているような人間を見た記憶は光の中に存在しなかった。それが、それと同じ形をしているのならば。

「まさか、《地獄の守護者ケルベロス》?!」

みことならばそれが何か即答できた代物。不完全で、使い捨ての下っ端に持たせていたものとは違う。この世界の均衡を一気に崩してしまいかねない、史上最悪の道具。

「御名答、と言ってやりたいところだが。これをあんな失敗作と一緒にしてしまわないでくれ」

光が目を見開いたのも仕方がなかっただろう。どういうことか、あの黒に覆われ周りに甚大な被害を生み出した《ケルベロス》でさえも《ハンター》は失敗作と堂々と言えるまでに力をつけてしまったのか。

「あんたたちは、この一年間何をしていた」

光が激昂するようにそのアルトの声を響かせると、ヴォルダはそれを不気味な笑いと共に吐き捨てる。

「逆に聞くが、貴様らはこの一年間ずっと何をしていた?」

「……少なくとも、怠けてはいなかったわね」

言い返されて、光は歯痒そうにしながら返答する。

「そう、それだよ。怠けてはいなかった、自分は強くなれるように努力をしていた。表社会の人間は全員そういうけどさぁ」

心底幻滅した、とでもいうようにヴォルダは首を横に振る。

「表社会の人間は全く進歩してねぇなぁ」

フッと、光の目の前にいたはずのその敵の姿がかき消えた。初見殺しのその能力だが、一度見てしまった光はもうそれに驚くことはしなかった。

「上ね」

「ほう、流石にこれくらいならば察知されるか」

吹き荒れる。ヴォルダを殺そうと、自然界では絶対に起こらないような空気の本流が。それを、さらに転移してヴォルダはかわす。

「だとしても、それだけだ。一年前と確かに技の練度は上がっているかもしれないがそれだけだ。たったそれっぽっちだ」

 今度の風は、差し出された右手に触れて全てを霧散させられてしまった。

「それだけで、あんたを倒すには十分だとは思わないの?」

「へぇ、まだそんな見栄を張れるだけの余力は残しているのか。興味深い」

懐に、拳が潜ってくる。《ウエポンキャンセラー》がついたその拳に対して光は無理に能力で対抗しようとはせずにかわすことに専念した。

「あんたこそ、そうも飄々としていて足元を掬われても文句は言わせないわよ」

「俺が足元を掬われるだって? ありえないな、表社会で人殺しの快感を知らずに生きている人間くらいありえない」

 その例えこそ光には理解できないものだったが、そんなことを口にはしない。そんなことを口にしても、無駄だとわかっていたから。

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