　「10月の鉄道の日,か…」

　雉くんは,ウーヅに呟（つぶや）く。休暇でも制帽と制服を着たまま,八（は）皓（じろ）1号踏切にいた。

　ウーヅは,雉くんの右手へ寄りかかる。

　電鐘式の警報機へ増設された,全方向式警報灯を見上げたまま,縦に顔を振った。

　「あたし…,雉くん…,今はいつで…行けます,だけど,何だか特,別な時間（か）…が欲しいから―」

　詰襟の制服と長ブリオー,互いの袖から腕の体温が伝わる。女の子がケープ付きの耐火フードを着ていないから, だろうか?。

　官給品のエストックの柄（つか）に添えていた左手を離し,同姓同名の幼馴染の,金糸の髪を撫でた。巡り合った日でも,それ以外の思い出がある日でもない。

　インクブルーの黒目が,黒縁の眼鏡越しの視線を動かし,同姓同名の幼馴染の黒髪へ右手で触れる。2人ずっと一緒にいる事が

可能になってから,一ヶ月ほど。

　この子爵令嬢の為（ため）だけの勇者は,彼女の他（ほか）には何を,黒縁の眼鏡越しに見ているか。

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　10月14日は,日本の鉄道の日ですね。

　新橋から横浜まで,陸（おか）蒸気が牽引する営業列車が最初に走った事を記念しています。

　実は,双瑞帝国も同じ日に最初の鉄道

(双瑞国鉄南（なん）至（とう）本線の瑞歯駅から西ノ口駅)が開業した事から,10月14日は通称として,鉄道の日と呼ばれています。

　そして,先月27日は英国（イギリス）（イングランドのダラム州）で,世界初の公共交通機関としての鉄道,ストックトン・アンド・ダーリントン鉄道が1825年9月27日に開業してから200年を迎えましたね。

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