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自動階段の降りる音を聞いている。
灯が反射し頭痛がして生温かい空気が後ろにある。
駆動機の音に血流が圧迫され、呼吸が浅くなり手摺に置く右手が僅かに湿る。
前に切った唇が乾燥してまた切れそうになっていて、マフラーで鼻先位迄顔を覆い隠す。余裕のなさそうな表情をしていると思うから、隠せる口実に安心する。
天井の鏡には飾り気のない明滅があるだけで、氷解したみたいに暖かみのある透明な建造物の内部がわたしを見下ろしていた。
降りる先、冬の景色が広がる。降る雪を包む灰色の雲や街並みに、白息が消える。
風が天井から吹く。
羽根に締め付けられる。
最初は脳というより心臓の近く。
伝達の順番は肋骨から肺、心臓、脊椎、それから脳へ。
経由する発露は眼と声帯に。
顔が剝がれそうになるずれのようなものが表情筋を中心として起こっている。
きかれている。
きかれている。
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