真利子さんの手紙。
それまで健一郎と同じ視点でしたので、彼女がすべてを理解してこの恋の時間を選んでいたのだと分かった時、最初に曼珠沙華を見つめていた場面まで一気につながる感じがありました。短編としての構成そのものの完成度が非常に高いと思います。思い付きではとても書けない作品です。
鎌倉の海や部屋の一輪挿しの曼珠沙華など、静かな景色が繰り返し置かれているのも印象的でした。
特に曼珠沙華の「鮮やかだけれど寂しい」という最初の印象が、そのまま真利子さんの存在やこの恋の短さに重なっていて、読み終えてから効いてきます。
とてもまっすぐな純愛の話で、「悔いのない――でした」という一文が心に強く残ります。
短い時間をどう生き、どう愛したかをそのまま描いていながらも、構成の巧みさが光る作品でした。