girl


じんわりと夜が始まる


嵐は止まることを知らず

立て付けの悪い彼女の家を揺らす。

家に着いたずぶ濡れの彼女は、キッチンの

上の棚からガサゴソとティーパックを取り出し、お湯を沸かしている間に大急ぎで風呂に入った。

湯気が風呂とキッチンで泳ぐ。

風呂から上がった彼女はティーパックにお湯を注ぎ、レモンを絞りリビングへ持っていった。

ソファに座りゆっくり飲み干すと、

昨日途中だった映画の続きを見始めた。

40分たったあたりから睡魔に見舞われ、

意識朦朧とする中床についた。


彼女の名前は蛇。

2歳までは路頭に迷う生活をしていたが、

ある日通りすがった若く美しい女性に家に誘われた。 目から溢れ出した合図をその女性は

聞くまでもなくそっと手を繋ぎ家へ導いた。

名前をつけられ、学校にも通わせてもらい、

世間からも人として扱われるようになった。

ただ、名前や境遇からハブられたり、辱められたりしていた。

そんな時に心の拠り所にしていたのはある本だった。

挫けそうになった時は惰性で、とにかくそれを愛し続けた。


『ゲンローの草案』


何もかもあって何もかもないこの世界への

草案(蛇)。

却下され続けることで保たれているこの世界の均衡。

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