第23話 オヤナ村1

 魔王城から大陸の南端、魔界と人間界の境界付近にある隠れ里、オヤナ村。

 早朝に村を散歩するのが日課の村長は、村の入り口に人が倒れているのを見つけた。長い髪をしていたので、おそらく村の若い娘が酔ってそのまま寝てしまったのだろうと思い「まったく最近の若い娘は」と言って倒れている娘に近づいた。


 娘の顔をよく見ると村の娘ではない。娘の顔は青白く、体は血だらけで、ただ事ではない事が分かる。


「これはいかん」


 村長は自分の家に帰り、ぐっすり寝ていた孫の小夜をたたき起こし、倒れている娘の前に連れて来た。

「どうだ小夜この娘は助かりそうか?」

「何かに襲われたんでしょうか?とても酷い傷です」

 娘の全身を見回し腹から腸が出ていることに気が付くと

「これはいけないですおじいちゃん。すぐ治療をしなくては」

「うむ頼むぞ小夜」


 小夜は手を娘の体にかざし「オキシダール」と言うと、皮膚の汚れが綺麗になり、黒ずんだ傷口がピンクになってゆく。

「よし汚れが落ちたので治療しますね」


 両手をさらに娘の傷口に近づけて

「ヒール」

 手からでた緑の輝きが娘の傷口に吸い込まれる。

 はみ出た腸は元の場所に収まってゆき、傷があったのもわからないほどに皮膚は綺麗にくっついていた。


「終わりましたおじいちゃん。もう大丈夫です」

「小夜よ、よくやってくれた」

 しかし何故よそ者が村の中に入ることができたのだ?物見櫓で村の者が監視していたはずだが?

 村長は白い顎髭を触りながら腑に落ちない顔をした。


 村長は改めて娘をよく見てみると、先程は血の汚れで気が付かなかったが、右腕が人間のものではなかった。

「これはどういうことだ小夜。この娘は魔族ではないのか?」

「おじいちゃん魔族をヒールで回復することは出来ません。そんなことより触れていて分かったのですが、このお姉さんは、身も心もボロボロです。お休みが必要です。家に運んでベッドで寝かせてあげましょう」


「しかし小夜よ、どうやって運ぶのだ?」

「おじいちゃんが運んでください」

「わしの腰がどうなってもいいのか?」

 悲しそうな顔をする村長。

「それはちょっとかわいそうです。どうしましょう」

「勇者と守を呼べばいいのではないか?頭は悪いが力だけはあるぞ」

「あの二人は駄目です。頭が悪いから村の人にお姉さんの事をしゃべってしまいます」


 噂をすればなんとやら、村長の家の方から二人の少年が歩いてこっちに来た。

「おーっす小夜ここにいたのか。家に行ってもいないからさあ」

 勇者は頭を掻きながら言った。

「おはよう小夜ちん」と言ったのは守の方。

「あ、おはよう勇者くん、守くん」

 この3人、年の頃は12歳。仲が良く、3人はもう昔に消えてしまった勇者のような特殊能力を持っていたので、村の人達からちびっこ勇者パーティと言われていた。


 勇者は倒れている娘を見つけると

「なあ村長、そこの姉ちゃん誰なんだ?村長の知り合い?」

「ああ、まあそんなとこだ」

「ふーん」

「悪いがそこの二人、この娘を家に運ぶのを手伝ってくれんか?」

「何で?俺たちは暇じゃないんだぞ村長」

「嘘つけ、いつも暇だろうが。この娘は瀕死の重傷で倒れていたのだ。いいから手伝え」


「なあ勇者よ」

「なんだ守」

「村の姉ちゃん達より綺麗だな、手足が細くてさー」

「俺は太いのも好きだけどな」と言って娘の腕を何気なく見た勇者は腰を抜かす。

「こいつ魔族じゃねーか。魔族の腕が付いてるじゃねーか」


 娘の肩から緑色の硬く金属の様な質感の魔族の腕が生えていた。

 そして筋張った手には長く黒い爪がついていた。


「こんなの村に入れて大丈夫なのか村長?」

「まあ腕だけだから大丈夫だ。この娘の腕のことは村の者たちに絶対言うなよ勇者。お前は口が軽いからな」

「わかったよ村長。それでどうやってこの姉ちゃん運べばいいんだ?」


「俺がこの姉ちゃんの上の方を持つから勇者は足を持て」と守が急に指示を出した。

 娘の上半身を触ろうとした守は、そわそわしだした。

 それを見た小夜は、走って村の倉庫まで行き、木と布で作られた担架を引きずって持ってくる。

「これに乗せて運んでくださいね二人とも」

 乱暴に二人の前に担架を置く。

 何故かがっかりする守。


「よし運ぶぞ」

 村長が手伝い、娘を担架に乗せ、勇者、守が担架の両側をそれぞれ持ち、いっちに、と村長の家に運んでいく。

 小夜は二人の後ろからついていく。


 三人を見送った村長は娘が倒れていた場所に一本の羽が落ちてるのを見つけた。

「鳥にしては大きな羽だな、後で図鑑で調べようか」と言ってポケットに入れた。


「私のベッドに寝かせてください」

 村長の家の二階にある小夜のベッドに、担架から娘を移動させる小夜と勇者と守。

「こいつが目が覚めて暴れたらどうするんだ?お前のベッドだぞ」

 勇者が小夜の方を心配そうに見る。

「大丈夫です。お姉さんは魔族ではありません」

「でもさー、なんで魔族の腕がくっついてるんだろうな?」

「うーん」と唸る3人

「まあ起きたら聞いてみようよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る