第29話「すれ違いディストーション③」
翌日、平井正志と伊藤ののかへの処分が発表された。両名共に謹慎3日間と厳重注意。その他にも、部活動の掲示板やSNSに対する注意事項や、写真等を保存した生徒は削除し、同様の問題や告発、いじめや嫌がらせに繋がる写真、話題を今後インターネット等で話題に出す事を禁じる旨も告知された。概ね、ののかの言い分が通った形だった。
それもそのはずで、昨日の放課後にののかの父親と弁護士が押し掛けて来て、学校側と話し合いがもたれたようだった。その場にののかは勿論、平井と平井の両親も呼び出され、遅くまで話し合ったようだ。とは言っても、プロの弁護士が同席しているので平井サイドは何を言っても無駄だったらしい。ただ、ののかの要求していた部員の前よ連絡掲示板、個人のSNSでの謝罪はこの場で謝るという事で収めたようだ。2人の処分が部活の連絡掲示板で発表された後に、バンドの連絡掲示板でののかが謝罪と共に経緯を教えてくれた。
『事情はわかりました。まあ、なんというかぁ、はぁ、一度目の前で話さなあかんレベルの問題や思うんやけどな』
優里は連絡掲示板に打ち込むと更に続けた。
『文字だけでやり取りしても語弊が出てうまく行かんもん。とにかく、今から会えへんかなァ? 文字だけじゃ絶対伝わらんって思うねん』
優里は冷静だ。と、環は思った。だから優里に同調する事にした。
『優里が言うんならそうした方がええ思うわ。一回集まってとことん話そ』
環のメッセにようやくののかが反応した。
『確かにちゃんと伝えなスッキリせえへんもんな。ちょっと待ってな』
そういうと、ののかの返信は五分くらい途絶えた。
『とりあえずなー、いつものジミーちゃん16時から2時間押さえたで』
ジミーちゃんと言うのは、環たちがいつも練習したりミーティングしたりしているレンタルスタジオで、一軒家で1時間/1000円(税込)でレンタルの楽器は無料、冷蔵庫の中にあるジュースが50円だったりするので環たちの溜まり場になっているスタジオだった。ちなみに環たちは学生なので、学割で2時間1600円で使わしてもらっている。
『じゃあ今日学校終わったら直行やんな』
『それがええ思いますえ』
『いや、ちょっと待って。瑞稀の返信が無い』
ののかの説明の時から既読は3。つまり瑞稀はバンドの連絡掲示板を見てないって事だ。
『そういえば、今日瑞稀学校休んでましたえ』
優里は顔が広い。瑞稀のクラスの子とも親交があるから情報が入って来たんだろう。
とりあえず環が電話をしてみる。コールは鳴るが留守番電話センターに繋がってしまう。ののかが掛けても同じ。ののかは一言連絡してと留守電に残した。
レンタルスタジオジミーちゃんに到着して、ある程度落ち着いくると、ののかは事の真相を少しづつ話し始めた。噂されてる半分以上は身体の関係まで至ってない事。しかし、それに近い事は要求されて断りきれずに応じてしまった事、優里が気になっていた大智とぼ関係は一回切りで最後までした事、それ以来は身体の関係は無くいい友人として付き合ってくれている事、問題の発端である舞瀬の彼氏についてはあまり記憶は無いが、基本彼女がいるか確認するので、嘘を吐かれた可能性は高いが行為はしてしまった可能性は高いとのことだった。もちろん、舞星の彼氏とは知らなかったようだ。
そんな事を話している時に瑞稀からメッセージが届いた。
『もう誰も信用出来ひん。一緒にはやれへんからもうやめる』
環はその文面をじっと見て言った。
「瑞稀ん家行くで」
「今から?」
流石にと思い優里は止めようとするが、ののかが制す。
「直接話さんと拗れてまうからな、特に瑞稀の場合」
そう言うと荷物を持って走り出して行った。
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