第40話リバースバベル

 リバースバベル バベルの塔が神に近づく塔だとすれば、地下に伸びるリバースバベルは地獄につながってると言われている。 

 

 第七層まである地獄の最深部、七層、その奥には神が眠りし楽園が存在していると言う、人はその楽園をエリュシオンと呼んだ。 

 

 一輝、セバス、狂は第一層の門まで迫っていた。 

 

 門番は地獄のケルベロス、セバスが糸で縛り簡単に門を抜ける。 

 

 「地獄といわれているが、他愛ないものですな」 

 

 三人は駆け抜ける様にどんどんと奥に進んでいく。 

 

 第二層の門番は王種の悪魔だった。 

 

 「我が名は色欲のアスモデウス、第三層に降りたければ私と戦え!!!」 

 

 すかさずセバスは糸でアスモデウスを拘束する。 

 

 「やれ、そう簡単にはいかないようで、ここは私が引き受けますのでお二人はお先に」 

 

 「すまんな」 

 

 「先に行く」 

 

 そういうと一輝と狂はいっきに門を駆け抜けた。 

 

 「じじぃ本当に俺と一対一でやって勝てると思ってるのか?」 

 

 「思ってますよ。あとを追わなきゃいけないので手早く終わらせましょう」 

 

 「貴様ああああああああああ」 

 

 「私はセバス、冥王セバスです。枷を外すのは何十年ぶりか・・・・・・・いくぞ!醜悪な化け物目!!!」 

 

 セバスは白髪が黒髪に戻り、白目になり、痩せているが濃密な筋肉に引き締まった体に変貌し、バチバチと体にオーラを纏わせていた。 

 

 一輝と狂は第三層の門まで来ていた。 

 

 第三層の門番強欲のマモン 

 

 「よくここまでこれたな」 

 

 「主、ここは俺にまかせてくれ、おらぁまどろっこしいのは嫌いでな、あと七門もあるなんて面倒くさくってしかたかねぇ、出てこい!宿儺ぁ!」 

 

 おどろおどろしい両面宿儺が狂の背後に現れる。 

 

 「こんなもんよぉ、地形事ふっとばしちまえばよぅ、七門全部すっきりして気持ちがいいってもんじゃねぇかよ」 

 

 宿儺と狂の圧縮した魔力が臨界点を超え、さらに膨張していく、それを放つとマモンはもちろん第七門までが更地となってしまった。 

 

 「めんどくせぇ」 

 

 更地となった奥から出てきたのは、ベルゼブブだった。 

 

 「貴様ら、よくも好き勝手やってくれたな」 

 

 「ああ?そりゃこっちのセリフだ。あこ様をかえしやがれ!」 

 

 「お嬢様が会いたがっているのは、そちらの方だ。そちらの方は通そう、だが貴様には地獄を破壊した分償ってもらうぞ!」 

 

 「不意打ちかましたくらいで、調子のってんじゃねーぞこのくそハエ野郎」 

 

 天照あこを攫われた、不意を突かれた鬱憤を晴らすように、挑発し戦闘に入る二人を横目に一輝は奥に進む 

 

 エリュシオンのエリアに入ると大樹の下にルシフェルととらえられた、あこがそこにはいた。 

 

 「ずいぶんお早いお着きですね。お父様」 

 

 「私は君の父ではない」 

 

 「パパぁ!!!」 

 

 「あこ」 

 

 「そんなにその子が大事ですか?その子にはパパって呼ばれてるのに、私はダメなんですか?」 

 

 「正式にはあこも私の子ではない」 

 

 「ゼウスやオーディンなどと比較にならない程の神聖力を身にまとっていて、大いなる父ではないと?」 

 

 「似て非なる者、それが俺だ」 

 

 「嘘だ!どうしてそんな嘘!!!その子だけ可愛がって!私たちのことは簡単に捨てたくせに!!!」 

 

 「あこが失われてしまえば、日ノ本は太陽を失う事になる」 

  

 「でも私たちのことは地上の底に押し込めたじゃない!!」 

 

 「土人形に仕えろなんていって、いやだって言ったら私たちをあっけなく捨てたじゃない!!!」 

 

 泣き叫ぶ様に攻撃の雨が降る、癇癪を起した子供の様に美しいエリュシオンが地形事ボロボロになっていく。 

 

 「どれだけ攻撃しても私の防御を抜ける事はない」 

 

 「試してみなきゃ気が済まない質なのよ!!!」 

 

 巨大なレーザーも爆発も、氷結も電撃も巨大な核撃魔法やそれを超えるもの半物質でさえ、一輝の防御を抜くことはできなかった。 

 

 「どうして何も効かないのよ!!どうして!!どうして!!」 

 

 泣き始めるルシフェル。 

 

 「俺はお前の父ではない、大いなる父ではないが、お前たちの全てを赦そう」 

 

 「はっ?」 

 

 ルシフェルが本当に欲しかった言葉、それは大いなる父からの許しの言葉。 

 

 泥人形から作り上げた人間に仕える事を拒否したことへの許しの言葉、そうルシフェル達は許してほしかったのだ、人形に仕える事を拒否した自分たちをまた右腕として、かけがえなくなくてはならない者として扱ってくれるはずだと、そう思っていたのだ。 

 

 それがただ拒否しただけで、天から追放され、さらにはその下の底まで落とされるなんて誰も思わなかった。 

 

 自分たちはいう事を聞かない、じゃあいいやと簡単に捨てられる存在ではないと、そう思っていたのだ。 

 

 「どうして、今になって・・・・今になってそんなこと言うのよ」 

 

 「お前が俺の事を父と呼ぶなら、俺はお前の全てを赦そう、すまなかった。間違っていたのは私のほうだ」 

 

 「ずっと!ずっといってほしかった。お前じゃなきゃダメだって、そばにいろって!」 

 

 「ああ、そばにいてくれ、お前じゃなきゃダメなんだ」 

 

 「父さま!父様ああああああああああああああ、あああああああああああああああああああ!!」 

 

 しがみつき絶叫するように泣くルシフェルをやさしく抱きしめた。

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