第39話

2025年  11月 11日

今日、切り取った腫瘍の病理診断の為 主治医と面談したが結局白黒はっきりせず

12月1日にCT検査。9日に結果を見て抗がん剤を投与するかどうか判断する事になった。今日の血液検査では今のところ投与に支障はないらしいが そんな事は実際にやってみなければ分からないと思っている。

それにしても、3月から始まって今年ももう残すところ一か月ちょい。

せめて、家族が集まるお正月くらいは抗がん剤による不調も気にせず過ごしてもらいたいと考えているが、急いだ方がいいに決まっているだろうからそうもいかないか…

まったく、癌と云う怪物に出会った為に本人は勿論周りも巻き込んで苦痛の種を撒き散らす。 癌め! 大きな顔すんな!


近ごろ 町内のパトロールが頻繫に走る様になった。  熊、ではない。

高齢者の行方不明である。 「○○さんと仰る92歳の男性の行方が分からなくなって……」

夏ならまだしも(良くないか)こう寒くなっては あっという間に低体温症になってしまうだろう。アルツハイマー型認知症の心理は全く分からないが、でも、悪だくみだけはしないよね。


ひと月程前近所で、小雨模様の夜花火大会があった。 気温が10度くらいまで下がってとても寒かった。私は冬のハーフコートにフリースのパンツ姿で傘を差しながらの観賞で寒くはなかったのだが 意外や夏服の人ばかりでとても心配になった。

今年はインフルエンザの流行が早いそうだが、そりゃそうでしょ、と思う。みんな気分は夏だもの。 ブルブル震えながら観賞しているギャラリーの中に 車椅子に乗った高齢の女性がいた。驚いたのはその女性が夏物のパジャマ一枚だった事。

足元は素足にサンダル。羽織るものやひざ掛けもなく一人ポツンと車椅子に座っている。認知症なのかどうか、顔の表情からは読み取れない。

花火大会が終わってもその女性は車椅子に座ったままである。 私は困ってしまった。声を掛けた方が良いのか、余計なお節介なのか……

そこでこう考えることに。 連れがいて寒さしのぎの衣服を取りに行ったのかもしれないと…… 結局私はその女性の横を通り過ぎ家路についたのだが、翌日遊びに来る孫たちの為に花火の録画を撮ったつもりが 女性を気にするあまりスタートボタンをタップせずに延々とスマホ越しに花火を見ていたと云うオソマツさ…ああ…


パトロールカーが通る度 あの女性が頭をよぎる。 やはり声を掛けるべきではなかったかと後悔している。 後悔先に立たず   ーー実感してますーー


オジサンが、やっと重い腰を上げて散歩に行く様になった。

病気を盾にあまりにも動かないので 「心臓も筋肉だかんね!」 と、脅したのが思いの外刺さったのだが、奇しくも今日主治医から 歩行云々は放射線治療や摘出手術とは関係なく、単に横たわる時間が長くて筋肉が弱っただけと言われていた。

ちょっと可笑しかった……歩こうぜ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

よた日記 @0074889

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る