心揺さぶられた

挿絵の一つも無い文章にここまで感情を揺さぶられたのは初めてかもしれません。一から十まで最高の作品でした。
「百合」の文字に飛びついた羽虫の読書感想文にはなりますが、本当に語りたいことが沢山あります。

読み始めは「ほえ~最近のファンタジーの中では珍しい雰囲気だな~。百合はどこだ?」と今思えば殴りたくなる軽率な心持ちで読んでいたのですが、徐々に流麗な筆致とシビアな世界観に惹かれていきました。

そして終盤の展開でびっくり仰天。シームレスな中盤からの移行と伏線回収に本当に脱帽しました。言いたいことが死ぬほどあるけどネタバレしたくないから言えない……!

この作品の特長は
「人間の描写」と
「一貫した文語的な表現による独特な世界観」
にあると思います。

まず一つ、最後の最後まであまりにも〝人間〟すぎる。勿論誉め言葉です。GL、つまり恋愛モノということで心理描写が中心となるわけですが、この修辞が本当に素晴らしい。特に最終盤は存在しない映像とBGMとボイスが生えてきました。文章に感情を揺さぶられる体験があまり無くて、感情のジェットコースターに吐くかと思った。わかりきった矛盾、自己嫌悪、その末の終着点。私は文章を通し間違いなく〝人間〟を見ていたと、そう断言できます。

そしてもう一つ、読み始めの初期から感じられるのですが、物語全体が美麗でどこか儚げな雰囲気を纏っています。お恥ずかしながらちょっと晦渋で苦戦したのですが、その硬質な文体がお姫様の主人公にとても合っています。

また、ここは単に私の好みとなるのですが、ファンタジーとしての設定の作り込みも評価したいです。いわゆる「魔力」とか「聖女」みたいな、朧気なテンプレートの拡張ですね。
初見の印象としては「ちょっと難解」でした。別に全く難しいことは言ってないのですが、あんまりテンプレには当てはまらないものだったので……。
しかし! 別にごりごり魔法戦に組み込まれるとか、理解してないと何言ってるかわからないとかは全然無く、何よりその洗練された設定が物語で完璧に生きていることに感銘を受けました。ここに限った話では無いですが読み飛ばしはオススメしません……序盤を噛んでおくほど後で味が出る……。

総じて
・起承転結など「物語」としての完成度
・心理描写による「恋愛モノ、百合」としての完成度
・それの土台となる、文体とファンタジーとしての世界観

これらを全て備えた素晴らしい作品だと思います。投稿間隔的に全部書き終わってから投稿したと思うのですが、この物語を紡ぐのに一体どれだけの思考と試行があったのか想像すると少し恐ろしくなります……。

最後に、二年強越しになりますが、完結おめでとうございます。
まだエピローグの段階ですので、断章、後日談、おまけ、全て大切に拝見させていただきます!!