今回と前回の戦いで聖騎士団5万の内、2万が失われていたんだけど、教皇様はまだ懲りていないようだ。

そう損害賠償には応じないと言ってきたのだった。更に周辺諸国に、クラウスファースは魔族に支配された。今こそ聖戦の時だ。と伝令を出し、それに呼応した周辺諸国7万の兵士を合わせ総勢10万という大軍でクラウスファースに向け進軍を始めたのだった。

「王様！！私が出陣いたします」

「しかし…」

黒王は戸惑っていた。なにせ10万もの大軍、その中には、教会騎士団ベストナインもいたからだ。おそらく多国籍軍は所詮は烏合の衆、フリージアの一撃を見たら一瞬で逃げていくに違いない。噂で聞いたシュバルツバルト湖の形成の秘密。あの一撃で魔物たちは恐れ、魔王ですらフリージアとは戦わない旨の親書を送ってきたとか、しかも、フリージアの臣下の一人であるライデンは、どう見ても魔王クラスの怪物だとマーリンが言っていた。

「大丈夫です」

「うむ、ではこの戦いの戦術をいうので一同集まるように、軍師のリョー・イスケンダールはいるか」

「は…陛下…ここに」

「それでは軍議を開く」

こうして、開かれた会議、私（フリージア）に言われた戦術とはこうだった。現在、教会諸国連合軍はテカテカ平原を進軍中とのことだった。テカテカ平原は荒野と言っていいほどの、平原。そこを進軍してくる連合軍の手前10キロ地点に最大出力のファイヤーボールを落とすということだった。

「うーん。よくわかんないだけど」

それもそのはず、敵の目の前に爆弾を落としたとしても何の意味もない。魔力の無駄使いとしか思えなかった。すると軍師様は

「これは陽動作戦だ。本当の目的は、奴らの食糧だ」

「食料？」

「そうだ。この爆発の隙に食料を盗め」

「ええーーー！！盗賊なれと」

「ちがう！！奴らの食料を略奪するのだ」

「やっぱ嫌だよ。そんな他人の物を盗むのは」

私にも良心というものがある。だから、人様の物を盗むのはどうしてもできない

「しかし、これは戦争だ。10万もの兵の食料がなくなれば、奴らは戦うこともできなくなる」

「その意見は御尤もですが、食料が無くなった彼らは、どうなるでしょう？ここまで少なくとも数日の行軍をしてきているはずです。つまり、目の前の食料に群がることになりませんか？窮鼠猫を噛むといいますが、空腹な彼は必死になって、我が国へ殺到することでしょう」

「そうだな…では、どうしたものか？」

「ふふふ…私にいい考えがあるんだけど」

「わかった。その作戦で聞きましょう」

こうして作戦は実行された。

ちゅどどどどーーーーすばばばばばーーーーーん！！

私の最大級のファイヤーボールが連合軍の手前でさく裂したのだった。その間に私がリモートビューイングでチェックした食料の位置までテレポーテーションで飛んでいき。全ての食料にある魔力を付与したのだった。

―――これは教会騎士団ベストナインファーストのワン・リベルテの手記

目の前で紅蓮の焔が天高く立ち上り轟音とともに地響きと地揺れが起き、立つのもままならない。その光景を見て「おお！！神よ」そう叫んだのは私だけではない。しかし、しかしだ。この光景を見て…絶望。その二文字がよぎってくる。

そこには、大きな湖ができていたのだった。