第47話 「敗北」

ドレファスが目を覚ました時、多くの騎士たちに囲まれていた。


「ここは?」


「ドレファス様!!」


そこには戦いで散っていった騎士達が整列をいていた。


「俺はニセ聖女に殺られたのでは、なかったのか?皆が無事ということは一体どういうことなんだ!!」


俺の質問に皆は黙り込んでいる。ニセ聖女に殺られたのであれば、俺たちは神の元へ召されはず、それは自壊という最終兵器があるからだ。しかし、皆は黙り込んでいる。ある者は体を震わせ悲しみを堪えている。そして、ある者は呆然と生きた骸となっている。


「一体、何があったんだ?」


すると俺の背後から優しい女性の声がした。


「お目覚めになりましたか?」


その姿を見た途端、あの地獄絵が甦り恐怖として襲いかかってきた。


「あ…あ…」


声が出ない。しかし、目の前のニセ聖女は、俺に微笑みかけている。


「ドレファス師団長様ですよね」


冷や汗が背中を流れている。そこへ副団長ブライアンが俺との間に入った。


「フリージア殿、この方がドレファス師団長で間違いありません」


すると彼女は手をパンと叩いて


「これで死者はゼロですね」


死者ゼロとはどういう事だ?するとブライアンは


「はい。フリージア殿のおっしゃる通りであります」


そして、フリージアと呼ばれるニセ聖女は、納得したかのように頷いている。


「それでは、私としてはこのまま撤退して頂ければ、助かりますが如何でしょうか」


なに?!撤退だと、俺は立ち上がりニセ聖女に駆け寄った。


『自壊』


聖騎士団の誇りを胸に最期の技を放った。


!


何も起きない。どういう事だ?俺一人焦っているが周りの目は冷やかだ。


「何故だ!!何故発動しない?」


するとブライアンが


「ドレファス団長、我々は、自壊の呪縛を解かれています」


「どういう事だ」


「フリージア殿が呪縛を解かれています」


「なんだと」


「それに我々は既に負けております。今の我々に彼女を倒すすべはございません」


ブライアンの表情から彼は嘘をついていない。


「そうか、負けたのか」


「はい、完敗です」

 

するとフリージアは再び


「それでは、先程申し上げた通り、聖騎士団には撤退して頂きます。と言ってもこのままでは、撤退はできませんよね。ここで私から提案です。ニセ聖女及び聖女はいなかったと報告して欲しいのです」


「そんなことできるはずない!!まずは、ドミニク司教が報告書を撤回しないといけない」


「では、これを聞いてください」


彼女は例の録音を聞かせてきた。


「はぁはぁはぁ…わしの妾にならぬか?」


「はぁ?」


「はぁはぁはぁ…どうじゃ悪い条件ではないと思うが、このエセ聖女様」


「やめてください」


「貴様!!優しくしていれば…調子に乗りおって、わしが本部に魔王の手下と報告していいのか?」


「くっ?」


「どうせ、魔力は5なんだろ。そんな奴がこのわしに勝てるはずはないわ」


「はなして~!!」


「ほう…まだ抵抗するのか、抵抗されるほどやりがいがある。」


「やめてー!!」


「うわ!!」


「貴様!!」


「きゃ!!」


「このわしに歯向かうなんぞ、100年早いわ」


『テレポート』


「ほう…結界の中で魔法を使うか、しかし、もう魔力はないはず」


『パラライズ』


「くっ…まだ魔力が残っていたか。しかし、この程度の魔力はわしには効かぬ」


『サイコキネシス』


「フン!!そんな魔法が効くか」


パリン!!


「な…なんだ?うわ~目…目がぎ…ゃぁああああ…目…目が…」


バタバタバタ


「司祭様!!」


「貴様!!司祭様に何をした!!」


「目が…目が…」


「お前は司祭様を守れ、早くヒールだ!!」


「目が…目が…」



俺は、これを聞いて呆れているとブライアンも既に知っているのか、うなずいている。


「これでお分かり頂けたでしょうか」


「これが事実であれば、ドミニク司教の報告は信ぴょう性に欠ける」


すると彼女は笑顔で


「それでは、王都クラリスへ入城していただけますか?」


「どういうことだ?」


「それは、ニセ聖女はいなかったことを証明する為です」


「わかりました」


こうして我々は入場後、国王へ謁見、ドミニク司祭は婦女暴行未遂で投獄されていることが判明、俺が話を聞きに行くと


「あれはニセ聖女だ。魔王の手先だ」


「ドミニク司教、我々はあなたがあの女性を襲おうとした事実を知っている」


「な…何を言っておるのだ!!どこにそんな証拠が」


俺はさっきの録音データをドミニクに聞かせた


「それは偽造だ!!」


「この録音は鑑定済みだ。言っている意味は分かるよな」


「う…」


俺は、教会へ報告の使者を送った。そして、答えはエターナルは無実、ドミニクの処分は追って伝えるという内容であった。


こうして、エターナルで起きたニセ聖女問題は解決し、聖騎士団は教会に戻っていった。





しかし、教会に戻った俺達に放たれた言葉は


破門だった









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