第245話 犬好きが一人……


 俺達は部屋で話をしながら過ごし、夜になった。

 夕食も食べ、いい時間となったので準備をする。


「このメンツだとルドーの町に潜入した時のことを思い出しますね」


 準備を終えたメレルが立っている俺、AIちゃん、リアーヌを見渡す。


「そうだな」


 まあ、あの時ほど危険でもないし、緊急性があるわけでもないが。


「ライトは使える? 私は隠蔽魔法に集中するから使えないですよ?」


 確かにメレルにはそっちに集中してもらった方が良いな。

 洞窟に入るのも魔族を連れているのも見られるとマズい。


「AIちゃん」

「バッチシです! 私はマルチでハイスペックなのでサーチを使いながらでもライトも狐火も使えます!」


 さすがはAIちゃん。

 ポンコツじゃない。


「リアーヌ、前と一緒だ。大丈夫だと思うが、合図を送ったら転移してくれ」


 そう言いながらリアーヌを抱える。


「はいっ!」


 リアーヌは頬を染めながらも頷いた。


「じゃあ、行くか。宿屋に飛んでくれ」

「わかりました」


 リアーヌがもう一度頷くと、AIちゃんとメレルがリアーヌに触れる。

 すると、すぐに視界が変わり、リアンの宿屋に転移した。


「ユウマさん、私はこれからナタリアさんに化けます。とはいえ、嫌な気持ちになるでしょうからあなた達には私のままに見えますのでご安心ください」


 メレルがそう言うと、魔力を感じた。


「もうナタリアなのか?」

「ええ。もう大丈夫です。もし、バレたら人気のないところに逃げますので追ってきてください」

「そこで転移すればいいわけだな?」

「そういうことです」


 それがいいか。


「わかった。じゃあ、行こう」


 俺達は部屋を出ると、階段を降りる。


「あ、お客さん、今夜はその人達とデート?」


 宿屋の子が声をかけてきた。


「まあな」

「そうやって抱えていると、親子にしか見えませんね」


 皆、そう思うわな。

 リアーヌはこの子と同じくらいだし。


「親子ではないな」

「お客さん、業が深いねー……まあいいや。昼にだけど、これまた女性の方がお客さんを訪ねてきましたよ」


 ん?


「ギルドのジーナか?」

「ううん、イルヴァっていう金髪の人。冒険者に見えたし、仲間? それとも新しい人?」


 こんな子まで俺のことをそういう目で見るんだな。


「冒険者仲間だ。何て言ってた?」

「ほら、例の5-2迷宮のこと。ちょっと話がしたいんだってさ。もし、空いてたら明日、ギルドに来てくれないかって」


 イルヴァも状況をわかっていないだろうし、情報交換くらいするか。


「それは構わんが……あいつら、どこの宿屋だ?」


 時間を伝えないと待たせてしまうことになる。


「私が知ってるよ。宿屋も横の繋がりがあるからね。明日でオーケーって伝えておくよ?」

「じゃあ、頼むわ。昼一って伝えてくれ」


 そう言って、チップを渡し、頭を撫でた。


「りょうかーい! あ、デート、楽しんできてねー」


 満面の笑みになった宿屋の子に見送られ、宿屋を出ると、5-2迷宮に向かう。


「あなたって、女性にはいつもあんな感じなんですねー……」


 歩いていると、メレルが呆れたように声をかけてきた。


「子供相手には優しくするもんだ」

「ぜーったいに男の子にはしませんね」


 しないね。

 男と女で対応が違うのは当たり前だ。

 あの子くらいの年齢の男の子だったら認めてやることが大事だからそういう対応をする。


「いいから行くぞ。あまり時間はかけたくない」

「はいはい。それにしてもまた変わった町ですねー」


 メレルが歩きながら町中を見渡す。


「それは俺達もそう思った。世界は広いな」


 前世では当主だったから外国どころか都から出ることも少なかったと思う。

 こうやって自由に他国に行けるのは楽しい。


「確かに広いですね。しかも、見る限り、強い冒険者も多そうです。今だから言いますけど、私がまだ軍にいた時はこの国もターゲットの1つだったんですよ」

「そうなのか?」

「ええ。まずはライズ王国から領土を広げ、その後にこの国を挑発し、軍を遠征させます。その後に別動隊がこの国に上陸するという作戦でしたね。まあ、人手不足でしたので実行には数十年の時を要したでしょうけど」


 気長だなー。

 例の鏡によるスタンピード作戦だろうけど、そう何度も使えんし、上手くいく可能性は低いだろう。

 でもまあ、フォルカーはそんなことどうでも良かったんだろうな。


 俺達は歩いていき、広場の近くまでやってくる。

 さすがに夜になると、野次馬はいなかった。


「さて、まだいるな……」


 この位置から広場は見えないが、魔力を持った複数の人間が迷宮前にいることは探知でわかる。


「当然でしょうね。では、今から隠蔽魔法を使います。姿を消すことができるすごいやつです。ちょっとユウマさんの式神で気を逸らしてもらえませんかね? その隙に入ってしまいましょう」

「わかった。AIちゃん以外にその隠蔽魔法をかけてくれ」

「いきます。はい」


 メレルがパンと手を叩くと、魔力を感じた。


「もういいのか?」

「ええ。わかりやすいようにしていますが、他人には認識されません。たとえ、魔法使いでも無理ですね。ただ、かなり高度な魔法ですので私の魔力では5分程度です。急ぎましょう」


 本当に隠蔽特化だな。


「よし。AIちゃん、狛ちゃんを出すから頼むぞ」

「お任せください」


 護符を取り出し、地面に投げる。

 そして、狛ちゃんを出すと、広場に向かった。

 広場は閑散としているが、迷宮の前には4人の兵士がいる。


「狛ちゃん、ゴーです」


 AIちゃんが指示すると、狛ちゃんが左の方に駆けていった。

 それと同時にAIちゃんも走り出し、俺達も逆の右の方から洞窟に近づいていく。


「すみませーん! ウチの子を捕まえてー!」


 AIちゃんが走りながら叫ぶと、4人の兵士が狛ちゃんを見る。


「なんだ?」

「子供と犬だな。逃げられたか?」

「いや、めちゃくちゃ尻尾を振ってるし、犬は追いかけっこで遊んでるだけだな」

「ったく……しゃーねーな」


 兵士達がやれやれといった感じで狛ちゃんの方に向かった。

 俺達はその隙に洞窟に入る。


『AIちゃん、狛ちゃん、もういいぞ』

『先に行ってください。人気のないところまで行きますのでそこで消して、また出してください』

『わかった』


 便利な子達だわ。


「……メレル、行こう」

「……了解です」


 俺達は階段を降りていき、奥に進むことにした。




――――――――――――

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

本作ですが、コミカライズすることになり、来週の水曜日より連載がスタートします。

『ギルド追放された雑用係の下剋上』を描かれている柳 輪先生が担当してくださいます。

コミカライズで描かれる有能で可愛いAIちゃんをぜひともお楽しみください。


それに伴い、本作の更新を金曜から水曜に変更します。



また、本作の続きを5話くらいを先行してサポーター限定の近況ノートに載せております。

サポーターの方はせっかくなので読んで頂けると幸いです。


【サポーター限定の近況ノートリンク集】

https://kakuyomu.jp/works/16818622172952059597/episodes/16818622172952148425


今後ともよろしくお願いいたします。

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