第21話 唯一の救いとなったのは「何にも縛られぬもの」

生まれた意味なんてわかるわけないが、

ただただ心を殺して同じような毎日が続く。


新卒当初は「やりたくない仕事」で

イヤイヤやっていたITインフラの仕事だったが


気がつけばだんだん仕事には慣れてきたし

技術的には毎月心を殺して働けば

一応レベルで飯は食えるまでには成長させることができた。


イヤイヤやっていた仕事も

心が吹っ切れたハズなのに

どういうわけか毎日が全然楽しくなく。


かといって会社を辞めるなんてリスクでしかないので

どうすれば良いかもわからず。


誰に相談しても、どうにかなるわけでもない。


どうするべきかわからないので

ただただ不安があっても何も考えないように、

誰にも自らの心を悟られぬよう、

心を殺す毎日が続いていた。


ただただ会社から与えられた仕事を淡々とこなし、1日が終わる。

言われたことさえやってれば

会社からそこそこの評価はもらえるだろうが

「そこそこの評価」止まりでそこから先に行くことはない…、


そのことだけは、なんとなしレベルで感じていた。


物足りない気持ちを何とかだましだましやって

モヤモヤした中でも一生懸命仕事をやって


週末に酒を飲んでいればなんとか誤魔化せるが

どこか鬱屈した感情が溜まっていくだけだった。


気がついたら、心なしか顔から生気が失われており

僕はいつからか「覇気がない」などと

周りの人から評されるようにもなった。


平日はそのことの繰り返しで、休日になってようやく少し日がさす。


その繰り返し。


じゃあ、どういう進路を選択したらいいのか?

じゃあ、どういう仕事がいいのか?


結局選ぶのは「じぶん」。

それはわかりきっているが

どうすればいいか全く手立てもさっぱり見つからなかった。


僕には会社にも味方はいなかったから

誰に相談するにも相談相手がおらず、そこに不安を覚えていた。


孤独の中でどのようにしてもがいていくか??

暗闇の中で活路を見出す術はあるのか??


そんな中で山に登るということが唯一、自らの心を生かす手段だった。


何にも縛られない自然の風景こそが、僕の心を解放する唯一のものだったー。

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