~After~対面

 イブの日の放課後、買い物を済ませた私たちは、私の家に向かって歩いていた。

途中、緋月の元カノさんにあって変な絡みを受けたけど……。


 もう少しで家ってところで、私のスマホが鳴った。


「着信……蓮にぃからだ……」


「出なくていいのか?」


 緋月にそう言われて、出るにしても……またうるさいんだろうなぁ……。

 でも、出なかったら、それはそれでうるさいし……。


「蓮さん……出なかったら、後で猛攻撃をしませんか?」


「準人にまで言われた……。

出るしかないかぁ……。


……はい」


『やーっと出た!! メリークリスマス!

なぁ~、聞いてくれよ、理央!


この間、少し早めのプレゼントをもらったんだ!』


「へー……よかったね」


『冷た?! もっと根掘り葉掘り聞いてくれ!!』


「はいはい。

それで? 誰から、何をもらったの?」


『よくぞ聞いてくれた! それはな、サンタからのプレゼントだ!』


「……」


「あ……理央ちゃんがスマホ切った」


 聞いた私がバカだったかも……。

 サンタって何?

 って、また着信だし……はぁ……。


「……なに」


『サンタって言うか、神様からのプレゼントだな!』


「へー……」


『理央、聞いてやって。

にぃさん、この間からこの調子で止まらないんだ』


 あ、海斗にぃだ。

 てことは、一緒にいるんだな。


『あ、海斗、横入りズルいぞ!』


「……海斗にぃが言うなら聞くけど、手短にお願い。

今外だし、寒いし」


『なんか釈然としないが……まぁ、いいか。


もらったプレゼントと言うのが、新しい人員なんだよ!

すっごく仕事が出来て、物腰もやわらかい!

まさに求めてた人材そのものなんだ!


なんか……前の会社が不当な扱いをしたみたいで……予定よりもだいぶ早く解雇になったんだと……。

だから、即刻働いてもらうように交渉したら、二つ返事をくれたんだよ!

しかも、社長秘書に抜擢! おかげで業務が回り始めたんだ!


まさに奇跡! ありがとう、新しい人員さん! そして神様!

ま、そーゆーことだから、話聞いてくれてありがとうな! じゃぁな!』


「……なに……なんだったの……」


「……蓮さん……相変わらずだなー。

社内自慢……ってやつか?」


「……うん……悠の言う通り、なんも変わってないよ……。

この間もこんな感じの電話をかけてきたんだよ……。

前はグチだったけど……」


「まぁ、でも、いい事があったみたいでよかったな、蓮さん」


「うん。

それより、早く家に帰ろう。

日が落ちて、だんだん寒くなってきたし」


***


 突然の蓮にぃからの連絡を受け、相変わらず自由人だなと思いながら再び家に足を向けた……のだけど、家に着くと……。


「「おかえりー!!」」


「おかえり」


「……なんでいるの?」


「なんでって……この家の家主だから?」


「いや、まぁ、そうだけど……。

というか、翔にぃもいるし……」


 まさかのリビングで、上の兄二人と担任である翔にぃが、おつまみとお酒を広げてくつろいでいた。


「というか、翔から聞いたぞ、理央! 彼氏いるって! 誰だ! 陸か?!」


「はぁ?! ちげーよ!」


 おぉ……蓮にぃ……陸に掴みかかってる……。

 というか、また翔にぃか……口、軽すぎない?


 にしても……これは、まずい……。


「ん? 理央、どした? 俺の前に立ちふさがって」


 蓮にぃが緋月に掴みかからないように、私が守らなきゃ。


「蓮さん、落ち着いてください」


「そーそー。

ちなみに彼氏は理央の後ろにいるやつー」


 ……悠……サラッとバラさないで……。

 まぁ、いずれは話す事だけど……。


「……理央の後ろの……。

お前か……理央の彼氏は……」


「蓮にぃ……掴みかからないでね」


「大丈夫、大丈夫。

ただー……どんなやつか調べないとな。

表へ出な」


「だから、そういうのやめてってば!」


「そうだよ、にぃさん、せっかくのイヴの日に。

しかも、こんな所で。

ごめんね。

さ、中へ入って……皆もごめんね」


 さすが海斗にぃ。

 私たちがまだ、リビングに入りきってないのをわかってくれた!

 廊下はすっごく寒いんだよ。


 海斗にぃが間に入ってくれたおかげで皆がリビングに入れて、料理や飲み物、ケーキなどのクリスマスの準備が出来た。


 その間、蓮にぃは私を手伝う緋月をガン見していて、緋月も蓮にぃを見ては、何か考える素振りを見せた。


「さて、パーティーの準備も出来て、メンバーもそろったところで……。


君はいったい、何者だ」


「どんな聞き方なの……。

普通に聞きなよ……」


「挨拶が遅くなりました。

初めまして、雨宮 緋月です。

理央さんとお付き合いさせて頂いてます」


 んー……緋月のこの挨拶、恥ずかしいし、むずがゆい……。


「雨宮……」


「? はい、雨宮です……どこかでお会いしましたか?

というより……どこかで見た気が……」


 え……緋月……蓮にぃと知り合い?

 そうそういないと思うけど……こんなキャラの濃い人……。


「え……っと……どこで……。


……あ……社長……」


 たしかに蓮にぃは社長で、緋月以外は知ってることだけど……。

 

 実は、私の兄は会社経営をしているんだ。

 不動産とか食品関連に化粧品に……その他にもいろいろしてる。

もともとは祖父の代から始めた事業が、父の代でさらに発展して、長男に引き継いだ時にさらに事業を拡大したんだ。


 長男である蓮にぃが社長なんだけど……普段は一般社員に混ざって営業したり、人事採用担当もしてる。

そして次男である海斗にぃが副社長で、社長業務をこなしてるんだ。

実質、海斗にぃが社長みたいなものだよね……。


 まぁ、二人はそれが楽しいみたいで、会社もうまく回ってるみたい。

 さらに事業を拡大するって話をこの間チラッと聞いたっけ。


 でも、緋月が知ってるのはなんで?


「緋月……どうして知ってるの?」


「あー……父さんの新しい会社のパンフレット……テーブルの上にあるのを見かけて……。

キレイな会社だなーって見てたら、社長の顔写真があって……それで……」


「なるほど」


「もしかして……雨宮って……雨宮 誠あまみや まことさんは、君のお父さん?!」


「はい……雨宮 誠は父の名前です……。

えっと……父がお世話になってます……。

待遇とか何もかも親切で、すごい助かったと聞いてます」


「いやいやいや、お世話になってるのはこっちの方だよ!

すっごく助かってるんだから!!


雨宮さんちの子なら安心だ! それで、式はいつだ? 子どもは何人の予定?!

おじちゃんとか呼ばれたいなぁ~」


 ちょ、手の返し早過ぎない?!

 さっきまで掴みかかる勢いだったよね?!

 なにデレ~って鼻の下伸ばしてるのよ!

 しかも式とかなんとか早すぎだっての!

 

 どんだけ自由人なんだ……。

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