午前の授業も無難に終わりお昼の時間になった。私は昨日と同じようにお弁当を持参している。

　斜め前のあいかさんを見るとカバンからお弁当を取り出すところだっだ。

　このままだと前回同様にあいかさんグループと一緒にお弁当を食べる流れになることは確実だ。

　このクラスの女子達は面倒見が良く何かと私のことを目にかけてくれる。不慣れな私にとってその好意はとても嬉しいんだけど、女の子に囲まれる状態は非常に窮屈で、そして恥ずかしい。

　男子？　私達のことをチラチラ見てコソコソ話をしてるよ。どんな話をしてるんだろうね、内容がわかれば私から会話に混ざって男の輪を広げる事ができるのに。

　昨日は郷くんをきっかけに！　と思って話しかけたけど……悲しいかな私を嫌ってる可能性がある。

　なんとか修正もしくは替わりの案を考えねば。まだ男の輪計画を諦めるには早い！

　きっかけがあれば別の人にアプローチする案もありだけど人選は慎重にいこうと思っている。郷くんには悪いけど会話が成り立たない相手ではお話になりませんから。

　まぁ、この話は置いとくとして。

　さてさてこれからのお昼どうしよう。できればぼっち飯を希望するのだが……何か妙案はないものか。

　今日は学食だと嘘をついてみるか？　んーだめだね。お弁当グループの誘いを回避できても学食派に誘われそうだ。

　先生に用事があるって事にして抜け出してみる？　抜け出せても美里さんあたりがついてきそう。

　トイレを理由に、なぁんて思ったけど昨日散々な目にあったから却下。

　んー、あとは……

「沙月ちゃん！　お昼いこ！」

　あいかさんがお弁当を片手に声をかけてきた。

　あー時間切れタイムオーバーのようです。仕方ない、ぼっち飯は次回にとっておこう。

　あいかさんに了承の返事を返しお弁当を持つと、昨日一緒だったお弁当派メンバーが集まってきた。

「一緒にお弁当うれしー！」

「今日も手作り？」

「いっぱいお話しよ」

「スマイルください！」

　各々が話し始め一気に賑やかになる。私が返答するより早く周りが反応するので私のことは割とどうでもいいのかもしれない。てかスマイルでよければいくらでもあげますからね。

　流れを邪魔しないように笑顔（スマイル）を向けて聞いていると、あいかさんが、続きは多目的ホールで！　って言って移動するように促してきた。

　あいかさんの声を聞いたみんなが、そうだね。って言って移動をはじめたので私もついて行こうと思ったら横から声がかかる。

「沙月さん、少しいい？」

　声の主は美里さんだった。昨日の新湖先輩との打ち合わせの詳細を話したいらしく時間を作ってほしいとの事。しかも新湖組と打ち合わせが始まる放課後までに、って。

　ふむぅ、映画撮影の話かぁ。クラスの人に聞かれたら騒がれるだろうし、みんなに内緒にしたい。でも私をひとりにしてもらえる時間がそもそもある？　無いんだよね、これが。

　んー、困った。どうしよう。

「もし良かったら私とお昼ごはん一緒に食べない？」

　ふむふむなるほど、二人きりで食べれるならそれいいかも。

「ちょっと！　沙月ちゃんとお昼ごはん食べる約束したのこっちなんだから横やりはだめだよ。それに美里っち学食じゃん！　沙月ちゃんは今日もお弁当持ってきてるんだから私と多目的ホールに行くの！」

　あいかさんが不機嫌な声を出し美里さんに抗議する。

「そうね。いつもは学食よ。でも今回はこれを用意したの」

　美里さんが手に持っている物を見せる。

「私の今日のお昼ごはんよ。これで文句はないでしょ」

　なんと美里さんの手にはお弁当があった。

「ええっ、美里っちがお弁当！？　えっ、初めてじゃない？　どうしたの？？」

「今日は沙月さんと内密のお話がしたくてお昼の時間を利用しようと思ったのよ」

　私が大事（おおごと）にしたくないのを分かって、内密って言葉で伝えてくれてる美里さん。

「内密の話？　ってことは二人でお昼ご飯食べるってこと！？　なんで？　私達がいちゃだめなの？」

　だめではないけど、私の心の安寧が損なわれます。

「だめ。あいかさんも薄々気付いていると思うけど芸能科絡みの話なの。芸能科はその特異性もあって関係者以外には話せない事が多いから。ごめんなさいね」

　なんと、そんなルールがあるのか。私は目立つのが嫌だから言わなかっただけですけど。

　芸能科のワードが聞こえたからか、まだ多目的ホールに向かってなかったあいかさんグループの人達が私達からすーっと離れていった。

　やっぱりみんな芸能科がやばい集まりって分かってるんだね。そんな頭おかしい連中に巻き込まれた私に同情してほしい。

　なおも食い下がるあいかさんも先ほどまでの勢いがない。

「あいかさん、今日は美里さんとお昼にします。せっかく誘ってもらったのにごめんなさい」

　状況を考えると今日は美里さんとお昼ごはんを食べた方がいい。

　私の断りを聞いたあいかさんは、次は絶対に私とお昼ごはんだからね！　って言って教室から出ていった。

「それでは私達も移動しましょう」

　私に声をかけて教室から出ようとする美里さん。

　……あぁ、やっぱり場所を移動するのね。

　美里さんの後を追いかけるかたちで教室を出る私だった。

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ぼっち飯に辿り着くまでは先が長そうです。

次回もよろしくお願いします。