海と月の、恐ろしくも美しい、魅入られずにはいられない物語
- ★★★ Excellent!!!
深い深い、溟い溟い海の底。恐ろしく年古りた螭は、ふと思い立った。夜空で輝く月を呑んでやろう、と。
あまりにも果てしない、到底叶いそうにない試みですが、この螭は只者ではありません。身を起こせば大海嘯を起こすほどに巨きな、口吻を峰かと見紛ってしまう巨螭なのです。だから、あるいは……。
一たび磨き抜かれた玉のような文体で綴られた物語を知ってしまうと、螭の試みの結果を確かめずにはいられなくなることでしょう。そうして、このお話で最も畏怖すべき存在は何だったのかを悟るでしょう。
ひたひたと全てを包み込む海のように静謐で、月の光のごとく清かな物語に、あなたも酔いしれてください。