悪役貴族の殺人のススメ
@yama44kas
最終話 華麗なる貴族レオナルド・フォン・プレイステッド
闇の底で、豚が喘いでいた。
脂ぎった頬に汗を浮かべ、涎を垂らしながら、
ひとりの少女の黄金の髪を撫でている。
「ぶひゅひゅっ……やはり美しぃ……。この黄金色の髪は、僕ちんに愛でられるためにあるのだぁ……」
少女――アリアと呼ばれたその名を、豚が喉の奥で何度も転がした。
声は濁っていた。言葉でありながら、欲そのものの形をしていた。
「下郎……。たとえ体を好きにしても、何をしても、私の心は手に入りません」
震える声で少女が告げる。
恐怖と嫌悪を抱えながら、それでも瞳の芯に残る光。
その強さが、豚をいっそう昂ぶらせる。
「ぶひゅぅっ! 流石はアリア、王家の至宝。苦心して手に入れた甲斐があるよぉ……」
豚が天蓋を上げさせると、
そこには既に蹂躙された二人の少女がいた。
シャーロットとオリヴィア。
かつてアリアが最も信を置いた友人たち。
「ああっ……シャーロット……オリヴィア……!」
絶望に満ちた声が、夜の空気を切り裂いた。
豚――レオナルド・フォン・プレイステッドは歓喜に震え、
その肥えた腕でアリアを押し倒した。
「誰か! 助けて! アレン! 助けて!」
その名を耳にして、豚は苛立ちを覚える。
「まだあんな平民のことを言ってるの? あいつはもう終わりさ。僕ちんが君の全てを手に入れたんだよぉ……」
笑い声。
歪んだ勝利の叫び。
だがその背後で、声が響いた。
「――そいつはどうかな?」
豚の背中に、重い衝撃。
胸を貫く剣。
血が、温かい。
「……え、あ……?」
崩れ落ちる視界。
豚が見た最後のものは、自らの血を浴びながらも静かに剣を引き抜くアレンの顔だった。
そして闇が落ちた。
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