手に取って読める「エイボンの書」!?

クトゥルフ神話という底なし沼に片足を突っこみ始めた方にとって、やはり気になるのは魔導まどう書でしょう。無名祭祀書ネームレス・カルト、ネクロノミコン、そしてエイボンの書。


新紀元社から発売された「クトゥルフ神話カルトブック エイボンの書」は、エイボンの書を完全再現するためにつくられた本です。いっそ、エイボンの書そのものといってもいいかもしれません。


エイボンの書は、クラーク・アシュトン・スミスという方によって生み出された魔導書です。魔術師であるエイボンが書いたからエイボンの書。わかりやすいですね。


この「エイボンの書」(以降カッコがついてるやつはカルトブックの方です)は、スミスが書いた「白蛆の襲来」が、エイボンの書の第1章であるという作者本人の主張から、リン・カーターがつくりだしたものです。


しかしながら、リン・カーターはこころざし半ばになくなってしまいます。その後を継いでできたのがこの「エイボンの書」なのです。





内容としては、第一の書から第五の書まであり、


第一の書には、エイボン以前を生きた魔術師の物語を通じて警告するための物語がまとめられています。そのためか不幸な終わり方をするのが多いです。


第二の書には、エイボンその人が活躍する物語がまとめられています。エイボンが魔術師になるところから、土星へと向かい消息を断つまでです。


第三の書には、物語というよりかは、情報をまとめた論文とかそういうものになります。短いものですが、地球のすべてのものを生み出したウボ=サスラから、南極の古きもの、イス人とクトゥルフの襲来……がまとめられています。


第四の書には、神に対する祈祷きとう文がまとめられています。詩に近いでしょうか。詩に詳しいわけではないのでわかりませんけどね。


第五の書には、具体的な魔術の呪文や魔法陣がまとめられています。イア!イア! というお決まりの口上に飽きた狂信者の方にオススメ。


最後に、補遺ほいがあります。付け加えられたもの、ということになるのでしょうか。この「エイボンの書」はエイボンの書を翻訳した、という体です。もしかしたら、どこかで紛れ込んだのかもしれませんね。






全部の書を通じて言えることなんですが、あまり知られていない邪神が登場します。ルリム=シャイコースはTRPGのシナリオで見たことがありますが、 ズ=チェン=クォン、ズスティルゼムグニ、イクナグンニスススズ、フジウルクォイグムンズハーなど、「マレウス・モンストロルム」に記載のある謎めいた邪神がバンバン出るので、そういうのが知りたいという方にはおすすめです。


また、地味なところなんですけど、聖書に詳しい方が編者にいるらしく、解説がそっち方面からなされていて、なんだか信憑しんぴょう性が増しているのが面白いです。序論であったり、歴史の解説なんかあって、嘘が真に迫ってるんですよね。


あと、たぶんですけど、リン・カーターの作品がこれほど収録されてる本は他にないはずです。全部読んだわけではありませんから、一概いちがいにはいえませんけど、少なくとも自分が知る限りはそのはずですから、レアかもしれません。




レアついでですが、これをお持ちの方、すごく貴重なので大事にしてください。実は、この本絶版状態で、中古市場では3万円を超える価格でやりとりされてます。ちなみに元値は2200円(税別)。10倍以上ってどうなってるんですか!?


ものすごく貴重な本なので、これを読んだ出版社の方(いるわけないんですけど)どうか再販してください……!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る