温かな絶望に足を取られて

ホラーと気付かず手を出してしまいましたが、読み出したら最後、あとがきまでほとんどひと息で読了してしまいました。

非常に読みやすい作品だと思います。

美しく整えられた文章、情景が浮かぶ見事な描写。
交わされる会話の端々にも血の通った温かみを感じられます。それだけに結末がひどく苦しい。

みんな、普通の人間なんですよね。

意地汚く生にしがみつく人も、耐え切れず死を選んでしまう人も。

追い詰められた人達が、重い苦しみを抱えた人達が、だけどその時その瞬間だけは笑顔でキャンプファイヤーを楽しんでいた。
読み進めて真実を知るにつけ、あのシーンの和やかさに胸を締め付けられるようでした。

素敵な読書体験をありがとうございました。