第21話 オルグレン王国最後の日
オルグレン王国で過ごす最後の日、昨夜からほとんど眠ることなどできないまま、朝を迎えてしまった。
昨夜のあの出来事がなんだったのか、誰かに説明して欲しい。
自分のような立場で、エルランド王子にお伺いに行くわけにもいかないし……
疑問を抱えたままお昼にはここをたって、レオドル王国に戻らなければならないなんて……
身支度を整え部屋を出ると、その日は誰もかれもがいつもより慌ただしく動き回っているように感じられた。
今日に限って、エルランド王子の姿も、サイラスも見当たらない。
誰の邪魔にもならないよう、借りていた本を返すため、静かに図書室に向かった。
図書室の入り口では、コンラッドが初めて会った時と変わらない様子で職務についていた。
「おはようございます、コンラッドさん」
声をかけると、コンラッドが顔を上げた。
「やあ、おはよう、セシリアさん。昨夜は大変でしたね。セシリアさんもお人が悪い。ああ、でもわたしなどにわざわざ言う話でもないですよね」
コンラッドが言っていることの意味がよくわからない。
「本をお返しに上がりました」
「いかがでしたか?」
「コンラッドさんにおすすめいただいた本は特に面白かったです。ありがとうございました」
コンラッドに本を渡すと、思い切って聞いてみた。
「昨夜のこと、何かご存知なのでしょうか?」
コンラッドは目をぱちくりしとした。
「え? 昨夜のことですか?」
「はい。今朝はどの方もお忙しくされているみたいですし」
「ああ、それは…」
コンラッドは言いかけて、わたしのの背後に目を向けて急に話を止めた。
「おはようコンラッド」
わたしの後ろからサイラスの声がした。
いつからここにいたんだろう?
「おはようございます……」
コンラッドが戸惑ったように返答する。
「仕事に戻ったら?」
「は、はい。失礼します」
コンラッドは一礼すると、図書室の奥へと消えていった。
「セシリア、いろいろ話さなければいけないことがある」
いつになく真面目顔つきでサイラスが言った。
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