第5話 after a fall
落下した二人は体を小さく丸め、全身に力を込めた。
金属が落下したような甲高い音が鳴り響き、地面が大きくへこむ。
床は一部金属製で、衝撃に強く作られていた。
「大丈夫?」
全身の痛みを感じながら、ゆっくりと体を起こす。
「大丈夫。痛みはあるけど、問題ない。あんたは?」
「全然大丈夫!」
と、サムズアップで答える。
「あんたは本当に丈夫ね」
眼球を熱源探知モードに切り替えて索敵を行う。
「いる?」
「5から8くらい」
「了解。周囲を確認する」
ライトをつけたⅠが周囲を確認する。
「ねぇⅤ、これって何?」
照らした先には、大きなポッドが無数に並んでいた。
「これは……」
と近づこうとした瞬間、左右のドアから機動隊が入ってくる。
「動くな! 両手を挙げて膝をつけ!」
『どうするⅤ』
『従って、出方をうかがう』
二人は背中合わせで両手を挙げて膝をつく。すると奥から白衣を着た女性が歩いてくる。
「待って、撃たないで」
と制止する。
「博士、しかし」
「いいの」
と語気を強めて言い放つ。
「一応、拘束をしても?」
兵士が確認をする。
「あなたたちはそれでも?」
なぜ私たちにそれを聞く?
「いや、私たちは構わないが……」
すると、兵士たちが後ろに回り込み手錠をかけてくる。
「立て」
アサルトライフルで小突かれる。
立ち上がり、兵士たちに囲まれる。
「じゃ、ついてきて」
白衣の女性が扉の方へ先導する。
真っ白な廊下を延々と歩かされる。
「それで……あなたたちは何でここに?」
急に話題を振られて、少し固まってしまう。
「仕事でここの調査に」
「前情報だとどんな感じだったの?」
「100年ほど前の研究施設だと聞いていました」
「ああ、間違いではないかなぁ……」
少し嫌な顔をする。
「この場所を見る限り、今でも稼働しているんですか?」
「ええ、していますが……していないとも言えます」
「それはどういう意味ですか?」
「まあ、詳しい話はこちらでどうぞ」
と部屋に通される。
「タナカ少尉だけ残って。他は大丈夫です」
他の2、3人の兵が敬礼し、タナカと呼ばれた男以外が退出する。その後、女性がタナカに耳打ちをすると、二人の拘束が解かれる。
「さ、座って」
にこやかな顔で対面に座るように促され、それに従って椅子に腰掛ける。
「まあ、話したいことはいろいろありますが、まずは自己紹介から。私は元新人類軍第1秘匿研究施設【
「ました? 今は?」
「今は、ここにいる全員で新人類軍を離れ、この戦争を終わらせるために活動しています……いえ、活動するための準備をしています」
「ということは、今は新人類軍には所属していないということですか?」
「そういうことになります」
「そうですか、ありがとうございます」
にこやかにこちらを向いているが……こちらも名を名乗れと言うことか。
「ああ、申し訳ない。我々は現在傭兵業をやっている」
「お二人だけで?」
「ああ、いや。ほかにも整備士と私たちのマスターが」
「そうですか。見たところ、筋肉少女のようにお見受けしましたので。防衛軍の方かと」
「いえ、いろいろあって離反することに」
「なるほど。これは、吉兆かもしれませんね」
「吉兆?」
「ええ、一つ。これを機にお願いしたいことがございます」
女性が席から立ち上がり、こちらに近づいてくる。
「我々は決定的な戦力が足りず、どちらの勢力にも介入できない状況でした。ですが、あなた方と我々の技術があれば、この不毛で終わりのない、ただ一部のみが利益を生み続けるためだけの殺し合いを終わらせるために、一緒に戦っていただけませんでしょうか」
彼女は深々と頭を下げる。懇願するように、願うように。
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