いじめを知るための教本
- ★★★ Excellent!!!
ざまぁ系は相手が良心の欠片もないクズでない限り苦手で、正直ラブコメとしては全く楽しめていませんが(私は読んだ後1週間病み気味になりました)、いじめを知るための教本としては非常に良いと思いました。痴情のもつれ、嫉妬等の原因となる部分。そしてSNSによる追撃、誤った情報に踊らされ義憤に駆られての糾弾、集団心理によるいじめ加担へのハードルの低下、脅迫などによる中立及び被害者側への圧力、本人にその気がなくても周囲の悪意によって加害者となってしまうこと、加害者になってしまったという危機感・罪悪感などから逃げられない・後戻りはできないという心理的束縛と思考力の低下、裏で暗躍し自身は手を出さない黒幕など、非常に多くの要素が含まれていてとても参考になりました。
このいじめを中心に考えると主人公はやはり美雪でしょう。著者も裏主人公と言っていますし。美雪はこのいじめの加害者中核であり、また近藤達の悪意を最も近くで浴びた被害者とも言えます。実際この2人がいなかったら美雪と英治の仲は引き裂かれることはなく、そのまま結婚という未来もあったでしょう。(私がそう思っただけで著者がどう考えているかはわかりませんが)しかしその幸せな未来はもう訪れない。個人的には救われ、元通りは無理でも一緒にいられるようにして欲しいところですが、いじめを題材とした作品で加害者への甘い処遇は筋が通らないため無理でしょうね。悲しい。美雪を見ていて悪意と罪が別物であるということを気付かされました。
いじめが世間的に問題視されるようになった今だからこそ特に若い世代が(と言う私もまだ20代前半ですが)読むべきだと感じました。何なら課題図書にするとか学校の図書室に置く価値がある作品だと思います。(思春期少年少女にはキツイ内容かもしれませんが)ついでにネットリテラシーも一緒に学べますしね。
最後に単なる願望を。英治と美雪の純愛ラブコメ読みたいです。愛も含めた1対2、あるいは学年違うし2人の妹化もありですね。とにかく同じ世界線上の悪意のないver.をください。以上。