第8話 応戦

ブリードの加護が生命の加護と知って驚きましたが、それより今は盗賊団です。

盗賊団が襲って来る可能性はありましたが、こんなにすぐに襲われるとは思いもしませんでした。


「とにかく、アストリアに任せましょう」

「わかりました。しかし、この馬車では銃弾が防げませんが、かと言って外に出るのはもっと危険です」

「そうですね。でも、大事な馬車が穴だらけです」

「仕方がありません。物よりも人命が大事です」

「そうですね」


わたくしたちは馬車の中で身をかがめていますが、その間アストリアが盗賊団相手にライフルを数発撃っています。


――――――――――――――


「流石に谷間で風がありますし、木の陰では命中しませね……」


相手が見えなくても相手の居場所ははっきりわかりますが

風で弾が流される上に、木の陰に隠れているので命中しません。

しかし、弾が命中しなくても、正確な銃撃で相手も怯んでいるらしく撃ち返してきませんね。

なので、今ある弾をどんどん撃て行きましょう。


 わたしはどんどん弾を撃って行きますが、スコープがなくても狙を定められます。

この位置からは相手に当たる事は無いですが、それよりも撃ち返してくる方が困ります。


「おい、あのチビ女、スコープがないのにかなり正確に撃ってくるぞ!」

「上から撃っても風で弾が流されるのに、上へ向かって数十センチの距離に当てるってなんだよ!」

「そもそも、女からこっちはみえてねえはずだろ」

「ありゃ、鷹の加護があるかもしれん」

「鷹の加護って、狙撃のプロじゃねえか」

「まともにやりあったら勝ち目がねえよ」


流石に声までは聞き取れませんが、何か話してるのは加護の力でわかります。

そして、今までいた場所から移動しているようですね。

お陰で銃撃はやみますが、これで諦めた訳ではなさそうです。


「銃撃はひとまずやみましたよ」


わたしは馬車の中にいるエルマ様とブリード様に声をかけました。


――――――――――――――


「ひとまずは一安心ですね」

「諦めた訳ではないですから、場所を替えるか全員で襲ってくるかもしれません」

「あとは待ち伏せですかね。一本道なので逃げ場はありません」

「集団戦や接近戦なったら、わたしは不利です」

「接近戦なら、わたくしの出番ですね」


接近戦と言えば私の大得意です。5,6人ならまとめて相手出来ますし。


「エルマにそんな事をさせる訳にはいきません!」

「ブリード、わたくしが帝都の狂犬令嬢と言う事をお忘れですが?」

「し、しかし……」

「わたくしは求婚のためにお相手をした現役の軍人を秒で倒しましたし

街では大男5人と殴り合って、無傷で勝っていますから」


わたくしはほほほと笑って、胸をはりますがそれでもブリードは


「まだ式も挙げてない妻になる女性に、そんな事をさせられません!」


とわたくしのわたくしの肩を掴みますが、流石も取り陸軍に居ただけ力が強いです。

ただ、この程度ならばかるく触れれた程度ではありますが。


「それでは今すぐ結婚の誓いをしましょう。それならよろしいですね?」

「し、しかし、ここには牧師も神父も居ませんので……」

「結婚の誓いはキスだけでもよいのではないのでしょうか?」

「キスですか……」

「ええ、誓いの口付けです」


わたくしはこの場の勢いでこんな事を言っていますが、鼓動がとても速くなっています。

子作りどころか、キスすらした事ありませんが、どうせ結婚式ではしないといけませんし

これから何度もする事になりますので、ここで思いきり最初のしておきましょう。


「わかりました。正式な式は後日にして、今は形式的な誓いの口付けですよ」

「はい、お願いします……」


ブリードはわたくしの肩を掴んだまま、顔を近づけます。

ブリードの顔が近づき、息づかいも伝わってきます。

そして、ブリードの顔が血ても近くなると、お互いの唇が触れあいました。


「こんな時にキスなんて、エルマ様もブリード様もすごいですね」


アストリアが茶化しますが、わたくしだっていっぱいっぱいですから。

鼓動が早くなりすぎて、このまま止まってすまうかと思うぐらいです。

また、キスをしているため言い返す事もできません。


「これで形式的に夫婦になりましたから、戦いましょう」

「え、ええ……そうですね」


ブリードが肩から手を離しましたので、背を向けますが顔は真っ赤でブリードにみせられません。


「ブリード様、ライフルの弾を持てるだけ持ってきました!」


後ろの馬車から護衛がライフルの弾を持ってきました。


「うむ、ありがとう。アストリア、これだけあれば十分ですね」

「はい、大丈夫です」

「ブリード様、エルマ様、お怪我はありませんでしたが?あとお顔が赤いですが……」

「ああ、大丈夫だ。これは臥せった時に息を思わず止めて、赤くなっただけだ。

それより、前の馬車は大丈夫ですか?」

「ええ、弾は命中しませんでしたが……馬が銃撃に驚いて逃げてしまいました……」


護衛の話では前の馬車の馬は馬具に弾が命中して外れてしまい逃げしまったようです。


「それは困った……」

「どの道、盗賊団を何とかしないと先に進めませんので」

「そうですね。しかし、数からして勝てるかわからないです」

「我々が食い止めますからブリード様とエルマ様がブソンニに到着すればよいのです」

「いや、誰1人欠ける事となく全員でブソンニへ戻るんだ、これは命令だ」

「わかりました!」


ブリードは護衛に激を飛ばしますが、まともに戦ったら勝つのは難しいです。


「アストリア、賊たちの位置はわかりますか?」

「待ってくださいね」


ブリードに聞かれてアストリアは集中して、盗賊団の位置を確かめます。


「どうやら、このカーブの先に集結してるみたいです」

「そうか、ありがとう。待ち伏せと言うよりは……一気に襲う気ですか。

よし、護衛は馬車の前に銃を構えて集結するんだ。アストリアは後方から狙撃を頼みます」

「わかりました。地形的と数的に難しいですが、おまかせあれ」

「よし、すべての弾と銃をもって、前の馬車の前で迎え撃つ!」

「馬車の前に隠れるのに良い岩がありますから、そこで応戦をしましょう」

「そうですね。急いで準備してください!」

「「はい!」」


ブリードとアストリア、護衛たちは盗賊団を迎え撃つための準備をします。

わたくしは赤くなった顔をが元に戻りましたので、馬車を降りてブリードの元へと行きます。


「ブリード、生命の加護があるからと言って無理はしないでください」

「わかってるいます、ブソンニで正式な結婚式を上げるのですからね」

「わたくしの身は自分で守りますから、盗賊団を倒してください」

「もちろんです」

「あと、これはわたくしからの鼓舞です」


わたくしは背伸びをして、ブリードのほほにキスをしました。


「ありがとうございます。エルマは安全な所に隠れていてください」

「わかりました」


わたくしはブリードの背中を見送り、御者が隠れている岩陰に一緒に身を隠しましす。

生命の加護で死ぬことはなくても、怪我や病気の治りは普通の人間と変わりません。

なのでブリード、どうかご無事で。



―――――――――――――――—


「お頭、準備は出来ました」

「そうか。よし、お前ら行くぞ!」

「「へい!」」


俺は部下たちを率いて、ブリードの馬車へ向かって行く。

1年前は生死の境をさまよう怪我をしたが、ここまで俺を追い詰めたのはブリードが初めてだ。


 しかし、ブリードの奴も俺と同じぐらいの怪我をしたのに、さっき崖の上から

望遠鏡で見たが顔に全く傷がないってどういうことだ。

俺はブリードに付けられた顔の傷跡があるっていのうに。

何か魔道具でもつかったのか?

いや、こんな田舎の伯爵にそんなもんはないか。


 となると……まさか、生命の加護なのか?

初代皇帝と5代目皇帝の2人しか授かってない加護が、こんな田舎の伯爵が授かっただと?

しかし、生命の加護を授かった奴が、こんなところにいるはずがないか……。

どうあれ、奴が死んでないどころが、傷が1つも残ってない事だけは確かだ。


 しかも、帝都から公爵令嬢を嫁に貰うとは、いい御身分だな。

だが、その嫁さんはいい人質でもあるから、ブリードは殺せなくてその嫁さんだけでも攫ってばいい。

ブリード、お前には絶対に勝つからな!

俺は馬に乗り、部下共と一緒にブリードのいる馬車へ向かって行ったのだった。

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