第12話 バリアを割った

ダンジョンを歩いていく。


"ここから完全に未知のエリアなんだっけ?"

"そうそう。今までミノタウロスで詰まっててここから完全に未知だね"


そんなコメントを見ながら歩いていると。


ピチャッ。

なにか、踏んだ。


水溜まりのようななにか、


「なんか踏んだな」


下にライトを向けて照らしてみるとそれは


"血溜まりだ"

"うわぁぁあぁ"

"なんの血?"


俺はしゃがみこんで観察してみた。


それは緑色の血液だった。


「ゴブリンかなにかの血だな。そのへんに肉も転がってるよ。食べられたような感じだな」


"うへぇ"

"モンスターを捕食するなにか?"

"モンスターじゃね?"

"でも、モンスターを食うってどんなモンスター?"

"なんだろうなwww"


俺はその血をそれ以上観察することなく歩き出した。

近くになにかいるのは確定したようだ。


気をつけて進もう。


先輩が話しかけてくる。


「怖いよー」


俺よりも先にコメント欄が反応してたらしい。


「わぁっ!諭吉さんをありがとう!諭吉さんがいると怖くなくなる!」


この人のスパチャの貰い方にはいろいろとバリエーションがあるらしい。


そうして歩いてるとダンジョンの上の方から気配を感じた。


「ンガッ!」


声と同時に岩が投げられてきた。


「きゃっ!」


突然の事でビビる先輩。


だが


「バリア!」


今度ばかりは動いていた。


だが俺も動いていた。


「おらっ!」


パンチ!


岩と俺たちの間にバリアがあったけど、バリアを砕いて俺は岩にパンチをねじ込んだ。


パリン。


割れるバリア。


「ば、バリア割られたんだけどぉぉぉぉぉ?!!!!」


横で先輩が困惑していたが。


ぐっと力を込めて調整して岩をはじき返す。


「そらっ、俺からのプレゼントだ。ありがたく受け取れよ」


岩を投げてきたやつに贈り返す。


「ふがっ!」


岩が当たったのかそんな声を出していた。


"www"

"岩殴り返しとるw"

"こんなことできるんだ"


俺は岩を投げられた方向に登っていくことにした。

ダンジョンの上の方にはチラホラと穴が空いていた。


そこからモンスターが俺たちに向かって岩を投げつけてきたというわけだ。


そしてそこには赤い小鬼みたいなのがいた。


「なんだこれ」


俺がそう呟いてると後から登ってきた先輩が言った。


「これオーガだね」

「オーガ。あんまり聞かないモンスターだな」

「わりと珍しいモンスターだよ」


そう言ってライトを向けて死体を観察する先輩。


そのとき。ぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっと死体が淡い光に包まれて消えていった。


あとにはドロップ品が残った。


【レッドオーガの首飾り】


というアイテムが落ちていた。


「レッドオーガか。オーガの中でも凶暴なやつだね」


そう言って首飾りを拾っていた先輩。


「これ、もらっていい?」

「別にいいですけど。俺アイテムなんていらないし」


"武器もいらないし金もいらなさそうだしなぁシュヤちゃんはwww"

"モンスターのアイテムなくても己の【拳】があるからな"

"武器なんて作る必要も買う必要もないんですわw"


ってな訳で俺はアイテムを譲ることにした。


そこで先輩が話しかけてきた。


「ていうか、岩殴り返すのすごくない?!あなた何者なの?!」

「何者っていわれても普通の一般人だけど」

「一般人は岩なんて殴り返せないよ?!」


そう言われても一般人なんだけどなぁ。


その後先輩のコメント欄が反応してた。


"ていうか、るりちーのバリアがパリンって割れてて草www"

"あのバリアけっこう分厚いのにな"

"今まで仲間のこと守ってきたバリアなのに、パリーンって簡単に割れてたなwww"


先輩が言い返してた。


「私のバリアは計算によるとミノタウロスのタックルも止めれるんだよ?この子のパンチ能力がおかしいんだって!」


俺は先輩に聞き返してみた。


「俺のパンチ能力なにかおかしかったですか?」


思い返してみればそうだな。

先輩はサポート能力に自信を持ってそうだった。


そんな人のバリアをあんなに簡単に敗れるんだろうか?


「もしかして俺のパンチには魔法を解除する力があったりしますか?」


そう聞いてみると先輩は叫ぶようにして返してきた。


「え?な、ないと思うよ。君のパンチが強すぎて耐えられなくなっただけだよ?!私のバリア!私の計算によるとミノタウロスのタックルに耐えれるのにそれを壊したってことはめちゃくちゃ強いパンチなんだよ」


そのときコメント欄のコメントが読み上げられていた。


"ほんま草だわ。どんなパンチしてんだよw"

"るりちーのバリア実は大したことないんじゃね?"


先輩は拗ねたように言った。


「しょぼくないもん。私はこのバリアでここまできたもん。ふえぇ……みんながいじめるぅ」



嘘泣きでまたスパチャもらってた。

しかもこれまでにない量。



るりちーファン

¥10,000

るりちー、修行代お布施



そのあとるりちーは聞いてきた。


「ところで今回はどこまで進むつもり?」


俺は時計を見た。

もう既に夕方の6時前くらいになってた。


「次のダンジョンボス倒したら中断ポイントあるらしいし、そこで終わりにしよっか」


俺はゴソゴソとアイテムポーチを探して【フラッグ】を取りだした。


「今回はフラッグあるからちゃんと中断セーブできるし。先輩も持ってますよね?」

「当たり前だよ。フラッグないと毎回攻略し直しだし」


フラッグはいわゆるセーブみたいなものだ。

これがないと毎回最初から攻略しなおしになる。


俺は前回これすら持ち込んでなかったからセーブができてなかった。


とりあえず今後の方針をまとめて歩いてると、また扉があった。


「ボス部屋!毎時間ボス戦してる気がするね!私たち!」


そうして俺を見てこう続けてきた。


「次は頑張るから!」


俺は心の中で答えた。


(さて、ソッコーで終わらせようかな)







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