暁斗

1

夢。それは身分の高い人が見るもの。

両親にそう教わってきた。

私は金持ちでもないが貧乏でもない。

ただの一般人。ただの高校1年生。

もう甘ったるい夢なんて見ていられない。

自分に才能なんてないし、夢を見たって無駄なだけ。現実を見ないと。

そう思っていた半年前の私に言ってやりたい。

夢を見たっていいんだよって。

私の考えが変わったきっかけは謎の男子生徒だった。

今回はその話をしようと思う。





4月。自己紹介で

「将来の夢はありますか?」なんて聞かれて

「ありません。夢なんて見ないで現実見ます。」なんて答えたくらい

夢を見ていなかった。いや、見るのを諦めていた。

周りからしたら空気は凍るし反応していいのか困るし、

迷惑なやつだったと思う。

今思うと初対面の時にする解答じゃなかったと思う。

ただその時は本当に思っていたのだ。

夢なんて見ない方がいいと。

ただ1人笑った人がいた。

?「ごめんごめんw笑うつもりはなかったのw」

「いや…大丈夫です。」

?「面白いなw日向だっけ。ユニークな考えしてるな。」

「そうですか。私が思っているだけなんで。」

?「へー。やっぱ面白い。」

「おい和狸!」

?「やっべ、先生だ。邪魔しちゃってすみませんでした。じゃ。」

「わたぬき」という人はクラスメイトではなかったらしい。

担任もポカンとしたままだ。

廊下を覗くと嵐のように去って行った男子生徒は

体育教師みたいな先生に捕まっていた。

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