第34話 決断
頭はパンク状態やけど、確かなことは一つ。
後はおーちゃんがどうしたいか、ってことよな。
あ、待って。
「ごめんなさい、もう一つだけ教えてください」
「なにかしら」
不機嫌そうに言われるかと思ったら、聖さんは優しく聞いてくれた。
よかった。
「家に残した荷物はどないしたらええんですか。聖さんたちからもらった大事な人形も――」
「大丈夫、後から送るわ。それと、今日はホテルを予約してあるから。そこに泊まりなさい。他に聞きたいことは?」
「あっ、大丈夫です。ありがとうございます」
疑問を先回りして答えてくれた。
流石聖さんや。
私の考えはお見通しなんやなあ。
ぐすん。
「ん?」
隣から鼻をすする音がした。
「おーちゃん」
ポロポロ涙をこぼして泣いとった。
「おーちゃん」
背中をさすることしか私にはできん。
これはおーちゃんが決めることで、私が、私らが強制することちゃうから。
「おっ……お姉ちゃんとか、小鳥さんとか……神様と離れたくない」
「うん」
大切な家族やもん。
離れとうないよな。
「で、でも」
「うん」
相づち打つしか私にはできへん。
「ゆーちゃんとも離れたくない」
「おーちゃん……」
なんや私も泣きそうになってきた。
もらい泣きや。
我慢我慢我慢。
ここで私が泣いたら、きっとおーちゃんはもっと泣いてまう。
「音葉」
琴葉さんが立ち上がり、おーちゃんの頭を優しく撫でた。
「優ちゃんにあげたお人形が、私たちの代わりに傍にいてくれるから」
ホンマにおーちゃんのことを大切に想ってるんやな、って伝わってくる言い方やった。
小鳥さんも聖さんも立ち上がる。
「二度と会えなくなるわけじゃない。帰りたくなったら帰って来な」
ぶっきらぼうな言い方やけど、温かい言葉。
「私はいつだって傍にいるわ。わかっているでしょう?」
あぁ、あの聖さんそっくりのお人形のことやな。
見てるだけで不思議と聖さんが傍にいてくれる気がする、不思議な人形。
おーちゃんはゆっくりと頷いた。
もう涙は止まっとる。
決まったみたいやな。
「私、ゆーちゃんとこに行く」
「おーちゃん!」
その言葉が嬉しくって思わず抱き着いてしもうた。
「これからもずっと一緒やな」
「うん」
おーちゃんはやっと笑った。
涙で顔はびちゃびちゃやけど、向日葵みたいに素敵な笑顔。
その後私らは聖さんたちにお礼を言って、祠に手を合わせに行った。
今までお世話になりました。
これからも見守ってください。
また来ます。
絶対。
「元気に暮らすのよ」
「またな」
「じゃあ……ね」
三人からの最後のサプライズ。
なんと、ママ名義の軽自動車が用意されとった。
ホンマ凄い人らやわ。
「バイバイ、またね」
「ほな、また!」
サヨナラ、はいつかにとっとくわ。
きっとまた会えるから。
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