山の神様

お母さんが子供の頃な?

すっごい田舎の村に住んどったんよ。

見渡すかぎり山で…

いや、山の中に村がある感じやね。


ちっさい村でなぁ

子供なんて、お母さん合わせて5人くらいしかおらんかったよ。


ある日な?

子供が一人、行方不明になったんよ。

お母さんより2つくらい上の男の子やった。

もう村ん中大騒ぎで、こんなに村の人おったんかって思うほどの大人達が探し回っとったわ。


そんでなくても村の子供少なかったからなぁ

みんな血眼になって何日も何日も探したよ。

お母さん達子供も昼間は手伝ったけど、どこ探してもおらんくて正直諦めとった。


村中「もう無理かもなぁ」って薄々思い始めたある日な?

行方不明になった子の母親がこんなこと言い出した。

「うちの子は山の神様に気に入られたんです。

きっと今頃幸せに暮らしてますわぁ」

って。


お母さんは「あぁおかしくなってもうたんやな」って思っとった。

そりゃ大切な息子がいきなり居なくなったら仕方ないよなぁ…

子供ながらになんか同情してもうたわ。


でもな?

村の大人達の反応は違ったんよ。

みーんな

「よかったなぁ」「あんたの息子なら選ばれて当然や!」「お祝いせんとなぁ」

って。


すっごい不気味やった。

だって今までだーれも山の神様の事なんて言わんかったんやで?

そもそも山の神様の言い伝えなんて一回も聞いたこと無かった。


そんな神様、山におらんねん。

行方不明になった子の母親が勝手に言い出した事や。

それを信じた。


いや、信じてない。

山の神様のせいにしたんや。

村の子が一人居なくなったのを、

だーれも知らん神様のせいにした。


その後は捜索も中止。

結局「山の神様に気に入られた」って事で落ち着いた。


今その村な。

男の子の形した岩を"山の神様"って呼んでるんやで。



※方言は架空のものです。

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