#05 不幸でも幸運でも
今日は4月16日。
早速だが、僕の不幸の話をしたい。
こっちに引っ越してきた理由は、親の僕たちは幸せに生きてほしいと言う、親切心と、学校からの推薦で、こっちにきたわけで。
が、僕にはもう一つある。それは【逃避】。
とある対象から逃げるため。
その対象が。
「なんで、隣にいるんですか…」
僕の……元彼女だ。
*
「私と付き合ってくれませんか!?」
彼女と初めて会話したのがこれだ。
中学1年。
女の子と付き合うことに憧れというか、他よりも先をいけるという優越感で、付き合いを簡単に了承した。
…その後、これが間違いであったことも知らずに。
異変に気づいたのは、一週間もかからなかった。
彼女は、家の場所を知っていた。
彼女は、僕がしているゲームを全部知っていた。
彼女は、僕が寝る時間を知っていた。
彼女は、彼女は。
僕以上に僕のことを知っていた。
「ねぇねぇ、紗凪がさーあおちゃんのお家に行ったらご挨拶しなきゃだよねー」
「…そう、かもねー…」
この時は付き合ってちょうど一ヶ月。僕と彼女が別れた日でもある。いつもより寒く、寒雨が降っていたような気がする。
彼女は。
「あのさ。別れない?」
「……え?」
「いや、紗凪ちゃんさ、なんでもかんでも僕のこと知ってるでしょ」
「……」
「なんで知ってるの」
「______なさい」
「え、」
「ごめんなさい!!」
ここからの会話は一切無し。
家に帰った後、彼女は僕と相合傘で帰っていたことを思い出した。しかも、天気はさらに悪化していた。ゲリラ豪雨というのだろうか。
「もう、いいのか。」
この後のことといえば、僕の靴底と、バックにGPS。家のコンセントの中と、テレビとパソコンから音声、監視カメラから映像をハッキングして情報を得ていたことがわかった。
そして。
その前から、ストーカーをしていたことも知っている。
そう。ストーカーだった。
何が彼女をそうさせたのかわからないけど。
*
「……久しぶり、あおちゃん。さて。」
隣の席の彼女は、僕の方に体を90°回転させて。
「……私と結婚しましょ?」
と、小さな箱と、紙を一枚渡してきた。
【結婚指輪】と【婚約届】だ。
ここで僕はどれだけこの女を軽く見ていたのか思い知らされた。こいつはどこまでいっても…
【
そう。今は昼休みという時間帯。周りに人はいるわけで。
こんな話を聞いた同級生たちはどよめき、困惑に包まれており。
この後の顛末を見守っている。
これを彼女は企んでいたんだろう。周りに聞かれて、後戻りができない状態に。
だったら、それを使ってやる。
「馬鹿か、この歳で結婚はできないだろうが」
と、デコピンを喰らわせた。
「いった〜、もう!書いてくれるだけでいいのにー」
「じゃ、こっちはつけてやるよ」
と、【結婚指輪】の方を手に取って。
右手の薬指に嵌め込んだ。当たり前かのように、ちょうどいいサイズ。
彼女も同じように指輪をつけた。
「ちょっと〜、なんで右手なのさ」
「いいでしょ、別に。結婚するときに左手にしてあげるよ」
「もー…なら許す」
彼女は頬を膨らます。
こういうところは素直に可愛いと思うのだけど。
他がひどすぎる。
その後彼女と高度な会話が続いたのだが。
彼女は一切として、【連絡先】の交換を打診しなかった。
まぁ、全てを知っている相手の連絡先なんていらないか。必要になったら、ハッキングくらいするだろうし。
彼女はそういう
そして、今起こした行動も、全て彼女の手のひらの上のような気がして止まないのだ。
*
午後。
微睡に襲われながら、今日の最後の授業を受けていた。
何かと特殊な授業なので、暇だと思い、寝ようかと思っていたんだけど。
「では毎週この授業では、各班で研究する時間にします。今日は班の中の研究テーマを決めてもらいます。班はこのような形で…」
と、班員の書かれた紙が回された。
その紙をみて、僕はまたもや、不幸は続くのだと思い知った。
「あおちゃん、一緒だね♪よろしくね?」
その、F班には僕の名前、橘花葵と、彼女の名前、八咫蔵紗凪が連なっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます