第15話:海賊との遭遇戦
尉達を乗せた潜水艦は水上航行でUボート・バンカーを出発してから約3時間、艦内で尉はドレイクから潜水艦の細かい事を聞いていた。
「この
ドレイクは説明をしながら尉を連れて船内を案内する。
「動力は魔力水素コアプラズマ炉心を採用。三年間の試験運用で良好なデータが取れて更なる次期艦の建造の為に軍所属から除外された」
「それでどうやってこの艦を購入したんだドレイク?」
艦首の魚雷発射管室まで来た時に尉はドレイクに問うとドレイクは笑顔で答える。
「ああ、海軍内にいる俺の知り合いを通してな。交渉を重ねて安くしてもらった」
「はははははっこれを安くとは。流石だぜドレイク」
尉は笑顔でドレイクに向かってサムズアップをするとドレイクも笑顔で尉に向かってサムズアップをする。
そして尉は一人、艦橋から外に出て快晴の下で穏やかな潮風を受けながら広大な海を眺めていた。
「んーーーーーーーーーーーっやっぱり海風はいいな」
するとヴィーナス、アース、マーズ、そしてセトラが艦橋へと登って来る。
「うわぁーーーーーーーーーーーっ‼これが船の旅なのね!港から海を眺めた事はあるけど、やっぱり海って広いのね‼」
いつもの王族の衣服で子供の様にはしゃぐセトラを落ち着かせる様にアースが彼女の両肩を掴み落ち着かせる。
「ママ!あまりはしゃがないで。あまりブリッジから身を乗り出すと落ちちゃうわよ!」
顔を後ろに向けてアースとセトラの娘と母親が逆転している光景を見ていた尉はフッと笑い、前を向くと上着として着ている焦げ茶色の革ジャンの内ポケットから
普段は見ない尉の姿が不思議に思ったヴィーナスは彼の右隣に行き、問う。
「ねぇパパ、タバコを吸うなんて珍しいわね。急にどうしたの?」
尉は一回、タバコを吸って煙を出すとヴィーナスの方を向き、彼女の問いに笑顔で答える。
「実はパパはこう見えて喫煙家で一ヶ月に一、二本は吸っていたんだ。でも、お前達を育てる為に禁煙していたんだ。何だか久しぶりに吸いたくなってな」
「へぇーーーーーっそえは知らなかったわ。パパの知らない一面を発っ見ーーーーん♪」
「ハハハハハッ♫それはよかった。この発見は論文を作って学界に出せば有名になれるぞ」
「アハハハッそれはいいわね♬」
尉とヴィーナスは笑い合っていると尉の左隣に双眼鏡を持ったアースが行き、右手で真っ直ぐ水平線を指す。
「ねぇパパ、あの船、何だか様子が変よ。こっちに全速力で進んで来るわよ」
尉は真っ直ぐ前を向き禁術、
「やべぇ!あれは海賊船だ‼」
「「「「え⁉」」」」
ヴィーナス、アース、マーズ、セトラが驚く中で尉は周りを見渡し何かを探す。
「どこだ!どこにあるんだ!あ!あったぞ!これか」
すると配電盤を納めるような四角いボックスを見付け、尉は迷わず開け中から有線式の無線機を取り出す。
「操縦室!応答せよ!ドレイク!パーシー!誰かいないのか!」
『はい、こちらドレイクだ』
「ドレイク!非常事態だ‼前方12時に海賊の駆逐艦が一隻!急速に接近中‼」
『何!分かった!急速潜航する!皆は早く艦内へ入れ‼』
「分かった!」
尉は急いで無線機をボックスに入れ、閉める。
「皆!早く入れ!潜航するぞ‼」
尉がそう言うとヴィーナス、アース、マーズ、セトラは頷き急いで梯子を滑り降り、最後に尉はハッチを閉め、梯子を滑り降りる。
■
急速潜航をした潜水艦は深度500mまで潜りスクリューを停止させる。
操舵室のソナー席に座る矗はヘッドホンを着け、海賊が乗る船のスクリュー音を聞いていた。
「このスクリュー音は駆逐艦だな。えーと、艦種は・・・」
矗は目の前の画面に映し出されているスクリュー音の波長を見ながら各国の軍艦の性能とスクリュー音が載っている資料本を手に取り調べる。
「あった!艦種はムー海軍に在籍していたストロジェヴォイ級駆逐艦。武装は主砲が四門、高射砲が三門、機関砲が五から八門、魚雷発射管を二基、爆雷は大小合わせて三十個を搭載している」
それを聞いたパーシーは少し険しい表情をする。
「ストロジェヴォイ級駆逐艦か。退役した軍艦とは言え、確か高い索敵能力を持つぞ」
すると潜水艦の外からソナー音が響き渡り、尉達に緊張が走る。
一方で駆逐艦、ストロジェヴォイの艦橋ではスキンヘッドで左目を黒い眼帯で隠した男が双眼鏡を使いラティメリアを探していた。
「くそ‼潜りやがったなぁ!おい!爆雷を投下しろ。あの潜水艦をあぶり出せ!」
「ヘイ!キャプテン!」
キャプテンからの指示に、いかにも海賊と思える黒髪の厳つい男性が舵の近くにある伝声管に向かって命令をする。
「爆雷班長!爆雷を投下しろ‼潜水艦を水面に引きずり出せ!」
「ヘイ!副長!」
すると大砲の様な爆発音と共に片舷用爆雷投射機からドラム缶型の爆雷が発射された。
着水して海中へ沈む爆雷、深度500mへ到達した瞬間、爆雷は爆発する。だが、その深度にはラティメリアはおらず、現在は深度1000mまで潜っていた。
「あらあら。無駄な爆雷攻撃、お疲れ様。ドレイク、もう魚雷攻撃しようか?」
尉からの提案にドレイクは腕を組んで考え、答えを出す。
「いいや。相手は魚雷を搭載した駆逐艦だ。向こうが魚雷攻撃をして回避行動を終えたタイミングで反撃する」
するとドレイクの右肩をパーシーが軽くポンポンと叩く。
「ドレイク、今、俺達は深度1000mに居るんだぞ。上の駆逐艦が搭載している魚雷がこの深度まで届くか?」
それを聞いたドレイクはハッとする。
「あ!そうだ。海賊が乗る駆逐艦の魚雷は質が良くても旧型。深度は300mが限界だ」
「そうさ、ドレイク。こっちは1100mから射出可能なMk.107酸素魚雷を搭載している」
そう言うとパーシーは尉に向かって笑顔で右手をクイクイっとする。
「尉!手伝ってくれ!海賊に格の違いを思い知らせる!」
それを聞いた尉は笑顔で頷く。
「ああ!分かった!」
尉とパーシーは操舵室から出ようとした瞬間、尉は立ち止まり振り返るとマーキュリーとヴィーナスに向かって右手をクイクイっとする。
「マーキュリー、ヴィーナス、手伝ってくれ」
マーキュリーとヴィーナスは尉からの頼みに喜ぶ様に笑顔になる。
「「はい!パパ!」」
そして四人は急いで魚雷室へと向かう。
■
海賊が爆雷を投下を開始して約数十分が経過した。
いっこうにラティメリアが浮上する気配がなく、海賊のキャプテンは苛立ちを募らせる。
「畜生!これだけ爆雷を投下しているのにに何で浮上して来ないんだ?」
すると副長が慌てた様子で駆け足でキャプテンの元に来る。
「キャプテン!大変です‼ソナー室から報告で探している潜水艦が深度1000mにいる事が分かって‼」
「何!クッソ‼そんな深度じゃ積んでいた魚雷じゃ無理じゃねか‼」
一方、尉達は魚雷室で魚雷管に二発のMk.107酸素魚雷の装填作業をしていた。
「パーシー!こっちは俺、一人で装填が出来るからマーキュリーとヴィーナスを頼む!」
「分かった!尉!」
パーシーはサムズアップをし、左で作業をするマーキュリーとヴィーナスの手伝いに入る。
尉は禁術で筋力を増加させ一人で一番発射管へ魚雷を装填を終え、マーキュリー、ヴィーナス、パーシーの二番発射管の装填も終える。
そしてパーシーは壁に設置された有線式の無線機のスイッチを入れる。
「ドレイク!こちら魚雷室!魚雷の装填完了!いつでも打てる」
『こちら了解!パーシー!』
操舵室の無線から魚雷室と通信していたドレイクは無線機を掛け、目の前の操縦長の席と副操縦長の席の間にある鍵穴にキーを入れ、回す。
ロックが解除され1と2の赤いカバーを外し、スイッチを入れ赤ランプが点滅する。
「ロイ!艦首を十度、上げてくれ!」
「了解した!ドレイク」
右の操縦長席に座りラティメリアを操縦するロイはパワーステアリングを手前に引き、艦首を十度、上げる。
「よし!一番魚雷、発射!二番魚雷、発射!」
ドレイクはそう言いながら一番魚雷の発射スイッチを押し、続けて二番魚雷の発射スイッチを押す。
発射された二発の魚雷は物凄いスピードで海面に向かって行く。そして魚雷に搭載されたレーザーソナーで海賊のストロジェヴォイ級駆逐艦に自動ロックする。
一方、駆逐艦のソナー室の海賊はソナーでラティメリアを常に監視していた。
「今だ動く気配なし。でも、さっき何かを発射したな?魚雷か?でも向こうからのソナー音がないな」
すると突然、ソナーで捕らえた魚雷が真っ直ぐ左舷から近づいている事に気付き慌てる。
「キャプテン!キャプテン!大変です‼追っていた潜水艦から魚雷攻撃です!」
側にあった伝声管で艦橋に報告するが、キャプテンは聞く耳を持たなかった。
「魚雷だと?潜水艦からのソナー音はあったのか?」
「い、いいえ。それは・・・ありませんが」
「じゃダミー魚雷だ。それに艦橋からでは魚雷が接近している様子はない」
魚雷が近づくに連れてソナー音が早くなり、ついに一番魚雷が命中し、艦内は大混乱となり駆逐艦は左に傾く。
「な⁉魚雷攻撃だと!でも、白線は確認されなかった・・・‼」
次に命中した二番魚雷は燃料及び弾薬室に命中し、ストロジェヴォイ級駆逐艦は大爆発と共に中心から真っ二つになり轟沈する。
沈み行くストロジェヴォイ級駆逐艦の轟音をソナーで聞いていた矗が笑顔で皆に戦果を報告する。
「皆!魚雷は見事、命中‼海賊共は
それを操舵室の皆や艦内放送で聞いて魚雷室の尉達は喜びに沸くのであった。
あとがき
今回の海洋戦闘は戦争映画、『
二次創作品、『幼女戦記if ~帝国軍第1装甲軍の戦歴~』も並行して執筆しますので応援、よろしくお願いします。
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