第26話

京たちが門を開けると、そこには一本道がひたすら続いていた。


愛海

「あそこに行けばいいみたい」


愛海は虹色の水晶を見て、矢印を確認する。

京たちは歩いて広間にたどり着く。そこには何人かのプレイヤーが一列に並んで立っていた。


「なんだ?並んでるのか?」


京が背伸びして列の前を覗く。

すると隣にいた手越が右手をあげ指差す。


手越

「おいあれを見ろ」

京たちは手越が指差した方向へ顔を向ける。


そこには大きなスクリーンがあり、『ここで整列して待て』と一文が表示されている。


「なるほど…あの画面を見て皆並んでいたのか」

京がポンッと手を叩く横で盛北はある人物が列に並んでいることに気づく。


盛北

「あいつは…!」


盛北は突然走り出す!


「おい盛北どうした?」

京が盛北の方へ振り返ると、盛北の向かう先に仁がいることに気づく。


盛北

「仁!!」


仁は盛北の声に反応し、盛北の方へ体を向ける。


「盛北!?なぜここに!?」


盛北は仁に殴りかかる!!


ガッ!!!


仁の前に大男が入り込み、盛北のこぶしを掴む!

そして背後に周り盛北を羽交い締めにする!

仁は盛北に近づき、顔を近づける。


「まさかお前が牢屋から出るとは計算外だった」


盛北

「ふざけんな!!どうして裏切った!?」

盛北が金切り声を上げて仁へ問いかける!


「お前では力不足だと思ったからだ」


盛北

「何よ!!こいつッ!!」


盛北はジタバタと暴れ、仁を殴り付けようとする!

しかし、大男にガッシリ捕まれており微動だにできない。


「盛北!!」

京たちが追ってやってきた。


「まさかお前らがこいつを牢屋から出したのか?」


「そのまさかだ!盛北を離せ!!」


京は虹色の玉からかぎ爪を取り出す!


「ここでやる気か?」


仁たち一同は武器を構えて戦闘体勢に入る。



『やめろ人間ども』

突如スクリーンから渋い男の声が聞こえてきた。


「なんだ?」

広間の上空にドでかい映像が映し出されていた。


『争いはやめろ。さもなくば、ここでお前らを失格とする』


大男

「……!」


大男は盛北の手を離した。


『そこの人間ども、そこに一列に並べ』


死神は人間たちが並んでいるところを指差す。


盛北

「仁!!」

体が自由になった盛北が再び仁へ殴りかかろうとする!

しかし、今度は手越によって取り押さえられる。


盛北

「離して!!」


手越

「落ち着け盛北!ここで失格になりたいのか!!」


盛北

「失格になったっていい!ここであいつをはっ倒さないと気が済まない!!」


盛北は怒り心頭で興奮が収まらない。


手越

「やめとけ盛北。殴りかかればその瞬間消されちまう」

「気持ちはわかるがここは我慢だ」


「なあに…いつか張り倒すチャンスが巡ってくるさ。ここは我慢だ。な?」


京はひょうひょうと口走ったが、下ろした拳からは血が流れていた。

拳を握り絞めて流血していたのだ。

盛北は京の拳を見て、暴れるのをやめた。


手越

「よし…よく我慢した」


手越は盛北を連れて列へと向かう。

京と愛海とウルハも手越に続き縦一列で並ぶ。


「ッチ」


仁は舌打ちをし、仲間を引き連れて列へ並ぶ。

京たちは無言で大人しくその場で待機した。


しばらく待つと、後方からこの広間へ5人のプレイヤーがやってきた。

その5人は人相が悪く、そしてそのうちの1人は片手にショットガンを持っていた。



京はそのショットガンを持つ人物を見て、背筋が氷づいた。


「あいつは…」


手越

「どうした京?」


京の様子が変なことに気づいた手越が京へ話しかける。


「まさか……いや…そんなことが……」


愛海も京の様子が変なことに気付く。


愛海

「京?」


京はショットガンを持った男を見つめる。


「似ている…。俺たちを襲ったあの男と似ている…!」

「間違いない。あの時の殺人鬼…!」


手越

「京…おい京!!!」


京は手越に肩を叩かれ、手越に気が付く。


手越

「京…大丈夫か?顔色が悪いぞ」


「……」


手越は京の緊迫した表情に戸惑う。


フィイイイイイン!!!


上空に映し出されていた映像から再び死神が話し出す。

京たちは一斉にモニターへ顔を向ける。


死神

「よくぞここまで残ったプレイヤーの諸君」

「君たちは過酷な条件をクリアし、そして遂にここまでたどり着いた」

「ゲームも終盤。あと少しで勝利者が決まる」


手越

「…ついに最後か?」


「……」


死神

「生き残ったのは約20名。たったの20名だ。今から行うゲームでさらに10人以下に絞られるだろう」

「今から行うゲームが正念場だ。心して聞きたまえ!」


プレイヤーたちはモニターに釘つけだ。真剣な眼差しで死神の説明を清聴していた。

死神は引き続き今から行うゲームの説明を行う。


死神

「今から行うゲームは…」


『カギ取り合戦だ』


「今お前たちはちょうど5人で共に行動している」

「5人で1チーム、つまりここまで一緒に戦ってきた他の4人が仲間というわけだ」

「よってチームは4つ。それぞれ4チームで互いのキーを奪い合うことになる」


「キーは今から最前列に立っているものに渡す」


モニターから4つのキーが出現した。

そのキーは浮遊して、前列にたっている4名のプレイヤーの元に向かっていった。

彼らはそれぞれのキーを手に取る。


死神

「お前ら4チームは今渡ったキーを取り合うことになる」

「そしてチームには番号が振られている。チーム番後はキーにも印字されている」

「初めに到着した一番チーム。お前たちから見て右端のチームが1番だ」

「それから到着順に2,3,4番と附番されている」


仁たちの隣にいたチームが一番初めに到着したチームだ。

仁たちが2番目のチームとなる。

それから次に到着したのは京たちのチーム。3番目のチームとなる。

そして最後に来たショットガンを持つ男がいるチームが4番だ。


死神

「キーの奪い合いを行うが、ただ他のチームのキーを奪い合えばいいというわけではない」

「1番目のチーム。お前たちは3番目のチームのキーを奪うことが条件となる」

「そして2番目のチーム。お前たちは4番目のチームのキーを奪うのが条件だ」

「それから3番目のチーム。お前たちは2番目のチームのキーを奪うことが条件だ」

「そして最後に4番目のチーム。お前らは1番目のチームのキーを奪うことになる」


手越

「……なるほど。それぞれのチームでキーの奪い先が違うというわけか」


「俺たちは2番目のチームのキーを奪いに行きつつ、1番目のチームからキーを奪われないようにするって感じか」


死神は続けて説明を行う。


死神

「各チームのスタート地点は異なる。なお、スタート地点にはそれぞれ要塞が設けられている」

「要塞はチームごとにスペックが異なる」

「ここに早く到着したチームほど、要塞の防壁は堅い。どれほどの違いがあるかお見せしよう」


映像に巨大な防壁が映し出される。

防壁の奥には拠点があり、その拠点の周りに大きくて頑丈そうな鉄製の防壁が10枚ある。


死神

「これが1番目のチームの要塞だ」

「そして次に2番目のチームのものを映し出そう」


映像には防壁が5枚ほどある拠点が映し出される。映っている防壁はコンクリート製で、先ほどの防壁と比べると高さがやや低い。

1番目の要塞に比べ、全体的に小さい印象だ。


死神

「それから3番目のチームの要塞」


映像が切り替わり、別の要塞が映し出される。

その要塞はさらに小さく、防壁も3枚しかない。しかも防壁は木製のものだ。


愛海

「私たちの要塞これ!?」


ウルハ

「しょぼ」


「嘘だろ…差がありすぎるだろ」


死神

「そして4番目のチームのはこれだ」


4番チームの拠点が映し出される。拠点はあるものの、防壁が無い。筒抜けだ。

その映像をみたショットガンを持った男が大声で笑い出す!


ショットガンの男

「アヒャヒャヒャ! こりゃあいいや! 傑作だ!!」

「こんなにハンデの差があるとはな!」


ダアアアアン!! ダアアアアン!!


男はショットガンを片手に持ち、上空へ発砲しながら高笑いする!


盛北

「何なのあいつ!?」


手越

「相当気が触れてるようだ…。やばいぞあれは」


周りのプレイヤーが呆気にとらわれている。


死神

「一旦説明をストップする。ここまで何か質問はあるか?」


「キーを奪った時点で勝敗が決まるのか知りたい」


死神

「それはこの後説明しようとしていたが、先に答えよう」

「キーを奪うだけでは勝敗は決まらない。キーを手に入れたらあそこにある建物へ向かえ」


死神は腕をあげて指をさす。その方向には白い建造物が見える。

その建造物は長方形であり、扉のようにも見える。


死神

「映像をみたまえ」


映像が切り替わる。そこには地図が表示されていた。

映像のそれぞれの角に数値が1から4まで振られている。

そして、映像の真ん中には白い建造物の絵が映し出されていた。


死神

「この番号はお前たちのチームの番号を表している。そしてそこがお前たちの要塞の場所だ」

「自分たちが入手すべきキーを手に入れたら、この真ん中の白い建造物に向かえ」

「ここにある扉でキーを使い、次のステージへ進むことができる」


また映像が切り替わる。そこには白い建造物の扉が4つあった。


死神

「渡したキーと部屋の番号はリンクしている」

「キーを奪った後は、それぞれ該当する扉を開け」


「この扉を開いて先に進めば、勝利となる」

「逆にキーを奪われても、扉前で阻止できれば挽回することができる」


「なるほど」


死神

「説明は全て終了だ。他に質問はあるか?」


ダアアアアンッ!!


ショットガンを持った男がまた発砲した。


ショットガンの男

「俺から一ついいか?」


死神

「なんだ?言ってみろ」


ショットガンの男

「人を殺しちまってもいいのか?」


周りがざわつきだす…。


死神

「もちろんだ」


ショットガンの男

「ヒャッハー最高だぜぇ!!」


ダンッダンッ!!


ショットガンの男は大声をあげながら銃を上に向けて発砲する!


「チッ……厄介な」


手越

「なっ…なんだと!?」


プレイヤーたちが戦慄していく中、ショットガンの男はニタニタ笑っている。


ショットガンの男

「防壁なんていらねえ! 全員殺せばいいだけの話だ!!」


「あいつ……」


京はショットガンの男をみて睨み付ける。


死神

「補足するが、特に禁止ルールは無い。あらゆる手段を使って敵チームのキーを奪えばいい」

「もちろん相手を殺すことも可能だ」

「他に質問はあるか?無ければゲームをスタートする」


周りのプレイヤーは緊迫した表情で死神を見ていた。


盛北

「これじゃあ殺し合いじゃない」


手越

「ああ…もう来るところまで来ちまったようだ」


「俺はあいつだけは許さねぇ」


京はショットガンの男を睨まつける。


ウルハ

「京……?」


ウルハは京の並ならぬ苛立ちを感じ取っていた。


愛海

「わわっ!? 体が透けていくよ!?」


ウルハ

「うわっ!?本当だ!?」


プレイヤーたちの体が徐々に透けていく…!


死神

「今からお前らを要塞へ転送する。転送後、ゲームスタートだ」

「検討を祈る」


手越

「おい!?いきなり始まるのかよ!?」


「ここが正念場か。面白い」


ショットガンの男

「ヒャヒャヒャ!! 皆殺し開始だぁ!!」


「……」


プレイヤーたちはそれぞれの拠点へと転送されていった。

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