RR022  霧の最中で

*>>ハルト視点




 きりの中、見えない陸地に違和感を感じた俺達。その途端、目の前に現れたクエスト画面がその違和感を肯定した。



「とまぁ…、どうにかしなくちゃいけなくなった訳だが…w」


「これの謎って言われても。なにか探せばあるのですわ?」



「さあ?wとりあえず色々動いてみるしかないだろ?」



 情報は限りなくゼロに近い。わかるのは陸にたどり着けないこと。濃い霧が立ち込めていること。下は湖だということくらいだ。いちばん怪しいのはこの湖ではあるが、〔水泳〕できるスキルは未だに発見されたと聞かない。


 湖の底、つまり水中に入る=死だ。


「まさかこの下に原因があるとか?w」


「泳げないのにどうやって探すんですの?」



「まあな…」




 一先ずアリアとは休戦。この異常事態に対処するべく〔地図〕を確かめる。が、当たり前のように地図は湖のど真ん中を現在地として指しており、動いてみても全く微動びどうだにしない。


 しばらく移動しながら探してみるが全くそれらしい反応もなかった。アリアは〔気配感知〕を持っている。俺は〔熱感知〕のスキルを使いながらだが、生物の気配はない。




 そのまま数十分ほど探すも全く反応無し。


「やっぱり普通に探したんじゃ見つからないな…」


「…、そろそろ疲れてきましたわ」


 何も変化のない景色が数十分続けばさすがに飽きてしまうのか。アリアは魔力回復薬を飲みながらそう呟いた。ちっ、MP切れも気にしないといけない。アリアほど魔力を多用しないし、そもそも魔力回復薬はこう見えてバカ高い。俺も予備で持っとけば…


「…ん」


 ん?


「どうせ、魔力回復薬なんてもの持ってないんでしょ?余裕ぶってますが見え見えですわ」


 顔を逸らしながら妙にぶっきらぼうな物言いに少し…いやかなりこいつ可愛いな…と感じてしまった。男なら誰でも少しグッとくる。

 一応顔が赤いのでたぶん素でやってるんだろうな…。と遅れながらに納得したが。照れ隠しが全く機能していない。


「お、おう、サンキュー…」


 俺はいつも通りに礼を言えたのだろうか?

 危うく墜落ついらく溺死できし寸前だったとは意地でも言えないのでそれだけしか言葉に出せなかったが。アリアはそっぽを向いたままなので気にしていないだろう。


「ともかく、このまま続けても埒が明かないな。なにかいい案ねぇーか?w」


「こっちに投げないでですわ…」


 少しシーンとした空気感。木々の音もしない。霧が覆う湖に少し気まずくなった。だから問いかけたのにアリアはツンツンしている。オーブの件でお怒りのようだ。


「なんだよw。優等生だろ?」


「そうですわね?あなたの妨害がなければもっと優等生でしたわ」




「否定はしないのな…」


 こいつ、頭の回転だけは早いからな。


「…、ではそうですわね…。意外とこの湖は潜っても大丈夫とかないですわ?ハルト、1回潜ってらっしゃい」


「ふむ、いや待て!、それもしダメだった時確定死するからな?」



「じゃあなにかハルトも案を出しなさいよ」


「…、霧が邪魔だから吹き飛ばす…とか?お前〔風〕って使えるのか?」



「時間かければ行けますわ。ただMP空っぽになりますわ…。でも…」


「わかった、あとは俺が面倒見る。全部吹きとばせ!」




 別にMP空っぽになっても俺がいるからな!


「もう!どうなっても知りませんわッ!〔風〕なんてほとんど使わないのに…」



 アリアはその場で停止し、先程回復したばかりの〔魔力〕を全て使ういきおいで魔力を消費する。



「ハルト!私の真下に陣取りなさい。あと、見えなくても上は向くなですわッ!」


「え?」


 ドユコト?


「その風、辺りをこばみ遠ざける壁となれ。我はめいず、終わりなき旅時たびじの寄り道を、その性質とともにここへつどいて、不可視の力を束ねれば。不変ふへんであり不定形ふていけい御身おんみもことをす。この湖の霧。辺りから消し去り吹き飛ばす」


「なげぇな…」


 アリアはゆっくり唱えこの詠唱だけで1、2分はかけている。ほんとに長い。あくびが出てしまいそうだ。


「[にえは我が身 まといし魔力。目指すは水平。どこまでも遠く進みゆき、ゆける限り吹き荒れろ]」


 一区切り。詠唱を言い終えたか?


「詠唱終わりましたわ」


「詠唱終わったら喋れるのな?w」



「あとは〔技名〕を唱えるだけですわ。名前は何にしますの?」


「え?名前決めてねぇーの?w〔技名〕なのに!?」


 魔法って技名決めずに使えんのか?


「そもそもこれは〔魔法〕ですわ。それに普通の魔法や〔詠唱〕と違って〔大魔法〕。大魔法の詠唱は即席その場で作り上げなければいけないのですわ。つまりほぼ1回きりですわよ」


「へぇ。んじゃ適当に【大魔法「エリアウィンド」】とか」



「いきますわ【大魔法「エリアウィンド」】」


「なんでもよかったんだろw」




 上は一応見ない。何となく察したがゲームの仕様上見えないのに気にするか?w

 風が吹く。静かだった湖上が風切り音で賑わい始めた。目に見えてその風は頭上へ、アリアへと集まっている。

 そして逆流。一斉に吹き抜ける風が全方位の霧を巻き込みながら爆風のように広がった。

 さながらの台風の強風が全方位から吹き荒れるカオス空間のよう。というかッ!?体制維持が難しいんですがッ??1歩謝れば吹き飛ぶか湖に落ちるぞ!?



 その風が収まった時、あたりは見通しよくなっていた。文字通り霧を吹き飛ばせたようだ。

 それと同時に落下するであろうアリア。残念ながらこのタイミングだけは上を見ないとキャッチできないのでやむなしやむなし。見えんし。


「おっと…。重ッ」


「お、重いってなんですの!!そんなに私重くないですわよ!!」


 何とか受け止めたが落下の勢いもあってつい言葉に出ちゃったぜw

 顔が真っ赤なアリアがさらに真っ赤になった。悪かったってw

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Reality barrage Gamers外伝〜Sky Scramble〜 Diamond @diamond1515

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