第48話 意外な再会

ドーリッシュは何となく、以前ジーンにもらった地図を見た。

「やっぱり海からしか、旅には行けそうにないな……。まあ良いけど。今すぐにってわけじゃないし。店で働いている間は、しっかり頑張りたいしな」

ドーリッシュは眉間にしわを寄せながら言った。


涼はぴぃのケージを掃除する。

ぴぃはご機嫌にプイプイ鳴きながら、部屋の中を歩き回った。

「……首筋がいてぇ」

海で日焼けした部分のヒリヒリした感覚に声が出る。

「やっぱり後で、ドラッグストアを探しに行ってみよう……」

涼は小さくため息を吐いた。

「ぷー?」

ぴぃは不思議そうな顔で涼の様子を見る。

「ぴぃ、おやつ食べるか?」

涼はピーマンをカットする。

「プーイ! プーイ!」

ぴぃは早くピーマンを食べたいと催促する。

「本当にピーマン大好きだよな」

涼は笑って、ぴぃにピーマンの一欠片を手渡す。

しゃくしゃくと小気味の良い音をさせながら、ぴぃはピーマンを食べる。

涼はそんなぴぃを微笑ましく見つめた。


ぴぃのケージ掃除が終わった涼は、ぴぃをケージに閉まってからドラッグストアを探すべく、島の中を歩いてみることにした。


「そもそも、ドラッグストアなんてあるのかな?」

涼は少しコンビニに寄ってみることにした。

「あると良いな……、ドラッグストア」

コンビニに入ると、店員がいた。

「あら、涼……、だったよね? いらっしゃいませ」

ナギが笑顔で声をかける。

「あ、ナギさん。こんにちは」

ナギは昨日のドーリッシュへの差し入れのレジをしてくれたから、面識があった。

「あの、ちょっと聞きたいんですが……」

「何かしら?」

「この近くの地理をまだ完全に把握してなくて。この辺りにドラッグストアありませんか?」

「ドラッグストアね……。うーん、あるにはあるけど、あまり大きい場所じゃないわよ。案内する?」

「お願いします」

涼はナギにドラッグストアを案内してもらった。


「ここがドラッグストアよ」

コンビニから歩いて数分のところだった。

淡いオレンジ色の壁をしているドラッグストアがあった。

大きな主要駅にあるようなドラッグストアを少し広くしたような大きさだった。

「あれ? 思ったよりかは大きいかも」

「そう? でも、大抵の薬は手に入るから」

涼は内心で思った。

大抵の薬、ということは薬剤師さんがいるのだろう、と。

「じゃあ、私は戻るわね」

「ありがとうございます、ナギさん」

涼は深々と頭を下げてお礼を言う。


涼はドラッグストアへと足を踏み入れる。

「いらっしゃいませ……、あら?」

「あ……、こ、こんにちは」

涼は驚いたように言う。

「涼さん、どうしたの? 体調が悪いの……?」

心配そうに言う店員は、なんとラッテだった。(※8話参照)

涼にとっては、職場での最初のお客である。


「あー、実は……」

涼は恥ずかしそうにしながら、事の経緯を話す。

「まあ、じゃあワセリンね。後は、しっかり冷やすのがいいわ」

ラッテは笑顔でワセリンを出してくれた。

「冷やすとなると……、タオルでもいいですか?」

「ええ、しっかりと冷やしてね」

ラッテはニコニコしながら言う。


冷却シートとワセリン、塩タブレット、そして少し健康食品を買って、涼は店を後にしようとした。

「また家族でお店に行くから、ジーンにもお伝えくださいね」

「はい、ありがとうございます! では、失礼します」

涼は笑顔で言った。

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