AIの進化によって、将棋やチェスといった互いにすべての情報が与えられる完全情報ゲームでは、人間はAIに勝てなくなった。だが、そんな中でもまだ人類が勝てる可能性があるゲーム、それが麻雀である。牌が伏せられ、相手の手牌は見ることができず、何より勝敗を分けるにあたって運の要素が大きすぎる。そんな麻雀の世界で人間とAIが戦うトーナメント大会を描くのが本作品。
かつての大会では人間がAIを圧倒していたが、時が経つにつれてAI側が優勢になっていき、今大会ではとうとうAI側が超一流の雀士たちを下し始める。伝説の博奕打ちの後継者である主人公はこのAIたちの異常な強さの正体を見極めようとするが……。
AI対人間という題材は現代で多くのジャンルで見られるが、本作ではそれと同時に『麻雀放浪記』を始めとする麻雀小説や麻雀を扱った劇画では古くから扱われる、ある古典的なテーマを扱っている。それは「敵はどのようなイカサマをしているのか?」
麻雀という運が絡む遊戯では絶対勝者など存在せず、もし必ず勝っている者がいるならば、絶対に何らかの仕掛けをしているはずなのだ。はたして主人公は最先端のAIが卓上に仕掛けたトリックを見破れるのか? AIという最新の題材とイカサマという古典的なテーマを組み合わせた最先端の麻雀小説だ。
(「人生を賭ける人たち! ギャンブル小説特集」4選/文=柿崎憲)