第45話 世間は狭い
「元地球人?」
「あぁ、お主らと同じ黒髪黒目をした日本人だった。しかし不慮の事故により、この世界へと招かれたのだ。」
「つまるところ、転生ってわけか」
まさかこんなところで日本人に会えるとは。
ファトムさんの師匠であるササキコジロウ、そして今回のドムラルク。
思ったより地球からやってきた人は多いのかもしれない。
「他の地球人にあったことはあるか?」
「そう焦るな。質問は一つにつき一つ答える。当初の質問通り、その力をどこで、どうやって手に入れた」
俺達は召喚された状況、経緯、そして異世界でどんな風に歩んできたか、後々質問材料として有効そうな情報は伏せつつ説明した。
「ふむ、やはり己を鍛えしは、過酷な環境と優秀な師の存在か。」
どうやら納得してくれたようだ。
「そして、他の地球人と接触したことがあるか、と言う質問だったな。」
「あぁ」
「ある。二人だ。一人は我と同じ転生者だが、もう一人は転移者だ。」
やはり俺達と同じ転移者もいたのか。
勇者として召喚された俺達の話は、酒場や冒険者ギルドに入ればたまに耳に入ってくる。だが、他の国からの転移者がいると言う話は聞いたことがない。
アリラドの勇者の話がホットだからか、それとも公にされていないだけ、なのだろうか。
「今どこに居るとかわかるか?」
「そこまではわからん。だが、セイヤだったか?と同じ指輪をしていたのを覚えている。」
「同じ指輪、もしかしてこいつらのことじゃないか?」
そう言って俺は、イロの花に魔力を流した。
「猫の耳に、金色の髪にこの青い目、うむ、我が知っている地球人の見た目と重なっている。」
この二人は地球人だったようだ。
じゃあなぜこの指輪は今俺達の手にあるんだ?そう聞こうとして足音が聞こえた。
激しい足音から見て、走っていることがうかがえる。
「冒険者ギルドのものだ!Sランク冒険者であるドムラルク殿が若者を恐喝していると通報が入ったのだが!」
息を切らしながらやってきたのは通報を受けた冒険者ギルドの人だった。
どうやら盛大な勘違いをされていたらしい。
確かに、おっかない獅子の顔をしたドムラルクと俺達じゃあ、弱いものいびりをしていると思われても仕方ないだろう。
「ドムラルク殿、ご同行をお願いします」
「では、我はここらで失礼する。また会えることを願っている。」
え?まだ聞きたいことがあったのだが。
仕方あるまい。しばらくここに滞在するんだ。またどこかで会えるだろう。
まぁ本来の目的であるアリラド王の殺害は一旦置いておいて、このモフモフヨセフを存分に楽しみたいと思う。
そういえばあいつら、今何やってるんだろ。
知ったこっちゃないことだけどな。
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