嘆きのレジスタンス(3)
町角に立つビトルンが見えた。
ロニーは急降下してビトルンに体当たりした。ビトルンは吹っ飛んだ。ロニーの頭にピーと信号音が響いた。町にいたビトルンがロニーの周りに集まって来た。
ロニーはビトルン達を睨んで所構わずに体当たりをした。ビトルンとロニーは殴り合いになった。
異変に気付いた町の住民が集まって来た。
「新しい化け物か」「仲間割れか」
増える人だかりの中、ロニーは羽根を広げて町の中を飛び回った。
背中に羽根を着けたビトルンが追いかけて来た。ビトルンは肩甲骨の辺りに羽根を挿し込んで飛行出来た。
ロニーの指先が変化して針の形になった。ロニーはビトルンに突進して鋭い針で顔を刺した。ビトルンは顔を押さえて地面に落ちた。
(俺は飛んでいるのか)
痛みが治まり意識が戻ったロニーは目の前の光景に不思議と驚かなかった。追って来たビトルンが背後から飛びかかった。ロニーは指先の針をビトルンに向けた。飛び出した針をビトルンは右手で掴んで勢いに任せて回し蹴りをした。ロニーは吹っ飛んだ。
(この野郎!)
ロニーは姿勢を整えて飛んで来るビトルンの群れに突っ込んだ。
突然、頭にキーンと音がした。
ロニーは頭を押さえて宙で止まった。様々な意識が脳に注がれる感覚になった。人造人間の意識の共有が始まった。
(これが化け物の共有というやつか。見える……思想も知識も)
各地の景色、ブルーパからの指令、膨大な知識……沢山の降り注ぐ意識に感動を覚えた。しかしすぐに頭が割れるような痛みに襲われた。
「う、うわあああ!」
この姿になってロニーが初めて言葉を発した。人間には受け入れられない膨大な意識の量でロニーの脳機能が限界に達した。
「苦しい!」
ロニーは叫びながら飛び回った。伸びた指先の針を辺りに乱射した。針が体に刺さったビトルンは力なく地面に落ちていった。
針をよけながら五人のビトルンがロニーの体を掴んだ。ロニーは必死に抵抗したが次々とビトルンに掴まれ砂漠に落ちて取り押さえられた。
「俺が消える……」
ビトルンに抱えられたロニーはうなだれた。
新たに誕生した人造人間は改造を重ねて《ホルネット》と名付けられた。
量産化に成功したホルネットは紛争地域の鎮圧に投入された。薄い四枚の羽根で空を早く飛び指先から毒針を出すホルネットは大きな戦果を上げた。
ロニーが住んでいた町はレジスタンスが一時占領したがホルネットの部隊による空襲で解放されビトルンとホルネットが駐留する基地に変わった。
ロニーは余命宣告された半年を過ぎても生存し研究所で実験体として軟禁された。
脳が変異しロニーとしての人格は喪失したが時折悲し気な表情で天井を見上げていた。
その表情からブルーパやビトルンから《嘆きのロニー》と呼ばれた。
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