第13話 一週間ぶりだけど
私は、家を午前七時には出てりゅうのアパートに行った。アパートの合鍵は貰っている。彼はまだ寝ていて起こしたら悪いと思いながらも、私も下着だけになって彼のベッドに潜り込んだ。
りゅうの匂いが一杯する。彼はまだ眠たそうだったので、一緒に添い寝した。
うん?あっ、彼の手が。夢の中からゆっくりと出てくると同時に私の体の中に久しぶりの感覚が蘇った。
目を閉じたまま、声を押さえながら彼の仕草に応じた。
気持ちいい。先週も会っているのに彼が出張に行っていたというだけでこれだけ体が欲しているなんて。私って結構淫らなのかな。
でも嬉しい。
彼が一回目を終わらせると
「ごめん、久しぶりにまどかの肌を感じたら我慢出来なくなって」
「ふふっ、いいよ。私も同じだから」
「りゅう、寂しかった。やっぱりりゅうが日本にいないだけで不安になる。でもこうして居ると安心出来る」
「良かった。俺も同じだよ。もう少しこうして温まっていようか」
「うん、もちろんだよ」
出張のストレスなのか、思い切りまどかにしてしまった。まどかも積極的だった。
りゅうは、最初の頃から比べると随分上手くなった。本当はあいつと比較してはいけないんだけど、知っているのがあいつとりゅう。仕方ない。でも今はあいつよりりゅうとしている方が全然いい。精神的にも解放される感じだ。
「まどか、もう午前十二時半過ぎだ。そろそろ起きようか」
「うーん、このままでも良いけど」
「ここで起きておかないと体が慣れないから」
「仕方ないなぁ。いいよ。ねえ、今日泊まって行ってもいい?」
「えっ、でもご両親は?」
「私もう大人だよ。一泊位問題ないよ。実言うと着替えも持って来ている」
「えーっ。でもまあ。それなら」
俺達は、一度起きてシャワーを一緒に浴びて…何故か一時間位浴びてしまったけど。
それから簡単な昼食を摂った。USに行っていた為、冷蔵庫は空。仕方なしに近くのコンビニへ俺だけ行って昼の分を買って来た。夕飯は外で食べればいい。
それからまたして、午後五時に出かけた。本当は近所でも良かったのだけど、例の武石さんが居ると後々面倒なので渋谷に出かけた。
そして駅の近くの居酒屋で夕食。
「りゅう、私もお酒飲んでいい」
「構わないけど、アパートに帰る位の余裕は残しておいてね」
「だーめ。だってりゅう、居るんだし」
「だったら、帰りにコンビニで買って行こうよ。そうすればゆっくり飲めるよ」
「そうか、それもいいな。じゃあ早く食べて帰ろ」
「えっ?」
結局健全に中生を二杯だけ飲んで、ウィスキーは家で飲む事にした。まどかも一杯だけ飲んだ。
次の日は、一日ベッドの中にいた。そして午後七時に渋谷の駅まで送って行った。途中、まどかが
「ねえ、りゅう。もしりゅうがその気あるなら私の両親に会ってくれないかな?」
「それって」
「うん、私は気持ち的にはそう思っている」
「そうか、分かった。仕事の予定を見てそうしようか」
「嬉しいりゅう」
渋谷の改札で別れ際にキスをされた。思い切り周りの人の注目を浴びたけど。
まあ、俺も今年で二十七になる。まどかは確か二十三。早いけどおかしな年齢ではない。でも俺の両親はどう思うだろう?
私は翌月曜日、とても良い気分で出社した。昨日りゅうが別れ際に私の両親に会ってくれるって言っていた。もちろんその先の意味合いも含めた気持ち。嬉しい。
自分の席に着いて仕事始めた。午前中は難しい事も起こらず、順調に過ごした。同僚と昼食を摂ってから、私は近くのビルの中にある本屋に立ち寄ろうとして
「西島さん」
聞きたくない声を後ろから掛けられた。振り向かないで無視して歩こうとして肩を掴まれた。相手の手を外そうとして振り向くと
「ちょっと、この件で話があるんだ」
相手の手にはスマホが握られていた。そしてそのスマホの画面にはこいつと私がしている姿が映っていた。
「こ、これって」
「ちょっと、話したいんだけど。それともネットに上げてもいいかな?」
「じょ、冗談でしょ」
「冗談じゃないよ」
「…………」
「じゃあ、ちょっと来てよ」
ビルの間のちょっとしたベンチのあるところで
「明後日の水曜日。いいだろう。もうこれきりにするから」
嘘に決まっている。この動画を元に強請る気だ。
「絶対に一回だけですよね。それとそれを先に消してくれれば」
「もちろん、その条件で良い」
「分かりました」
水曜日はいわゆる定時退社日だ。特に事前に残業の申請をしない限り退社する事になっている。
「会社を一緒に出るのは君も不味いだろう。渋谷の映画館の前に午後六時でいいか?」
「分かりました」
それだけ言うとあいつは私から離れて行った。何て最悪なタイミングなの。昨日りゅうと大切な約束をしたというのに。
でも断ってあんな動画がネットに流れたら、りゅうと会えなくなるどころか会社にも居れなくなる。あいつはする前にあの動画を消してくれると言った。信用するしかない。
それから水曜日までは憂鬱で仕方なかった。周りに気付かれない様にしたけど、同僚から体調で悪いのかと言われたくらいだ。
そして水曜日の退社後、指定された場所に行った。あいつは何も言わずに歩き始めた。そしてそういう所に一緒に入った。
「する前にこの前の動画、目の前で消して」
「ああ、いいぞ」
あいつはそう言うと目の前でスマホから動画を消してくれた。
「これでいいか」
「…………」
ぐっと我慢したけど、負けてしまった。後はされるままに体が反応してしまった。気持ち悪い、でも体が反応する。最後は気絶直前まで行かされた。
この女は最高だ。胸は小さいが、そんな事よりも最高の物を持っている。簡単に離してたまるか。
解放されたのは午後十一時半だった。
「西島、またな」
「もうする訳ないでしょ」
「そうか、これもあるぞ」
「え、嘘。消したんじゃないの?」
「あれは消したよ。でもあれだけじゃないって事さ。PCにもバックアップしている。ネットに投稿されるのが嫌だったら、毎週、いやそれは俺が無理だな。二週間に一回は付き合え」
「いやです。駄目に決まっています。もう私は結婚する相手もいるんです」
「神崎か。あいつにこの画像送っても良いんだぞ。結婚するまででいいさ。断れないだろう」
もう、最悪だ。どうすれば…。
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