第19話
翌日、沙羅と出会ってのっけから、この話題だ。
「里莉どうだった?」
「上手くいったんだけどね・・・」
「そこからが問題で・・・」
沙羅に自分のふがいなさで上手くいかなかったことを全部ぶちまけて、今日は、帰りに街によって福引きをしに行くのだ。母から朝もらった福引き券があるので帰る途中に運試し。
「なるほどね。それでいい賞がとれれば、これから先いいことが起こるという訳
ね。」
「そうなんだ。」
「暇だし、私もついて行くよ!」
いつもは降りない、新幹線の止まる大きな駅に沙羅と降りる。福引き会場のある大型商業施設までは駅から大きな歩道橋でつながっているので、そこをテクテク二人で歩いて福引き会場に向かう。
「今日は天気もいいし、きっといい賞が取れるぞ。」
昨日、布団に潜って泣いたせいか、今日は逆に元気が良い。
福引き会場に到着すると、まあまあの列ができていた。まあ、急ぐわけでもないので呑気に待つことにする。
「もし、一等が出たらどうする?」
「大型テレビか。自分の部屋にでも置こうかな。」
「そこで、夜一人で恋愛ドラマを見るんだ。」
「いいねぇ。部屋真っ暗にしたら感じが出るぞ~。ホラーはどう?」
「それは、こわいなぁ~」
「だったら、私も里莉の部屋で一緒に見てあげるよ!」
そんな、くだらない話をしていたら順番が近付いてきた。
「チリンチリンチリン」
少し前の人が何かを当てたみたいだ。
「おめでとうございます!1等大型テレビです!」
さっきまでの、あの盛り上がりは何だったのだと肩を少し落とす。
「大丈夫だよ。里莉。2等の炊飯器だっていいかもよ。」
「確かにそうだ。藤井さんにおむすびでも作ってあげようかな。」
そうこう話をしている内に番が来た。
「はい、1回分ね。」
「ごろごろごろ。ポテ」
ピンク色の玉が出た。
「ピンクって何等だっけ?」
「えっと。」
「はい、ピンクはここから先です。賞品の表示を見るより早く係の人が教えてくれた所を見ると、ティッシュ、トイレットペーパー、ポテチの小袋が並んでいた。」
「どうしよう。」
「ポテチはどう?藤井さんにプレゼント!」
「う~ん」
まんじゅうならまだしも、ポテチなんて、いい大人相手にあげるのは恥ずかしい。
「でも、まあしょうがないか。」
帰りながら、沙羅とくだらない話をする。
「まあ、里莉仕方がないよ。そんなこともあるよ。」
「うん。そうなんだけどね。せっかく気持ちを切り替えるチャンスだと思ったんだよ。」
「でも、トイレットペーパーやティッシュよりはいいんじゃない!」
沙羅がニタニタして言った。
「ねえ、沙羅たまには飲まない。」
「いいねぇ。飲もう飲もう!」
ということで、お酒をたんまりと買い込み、そのまま電車に乗って漁港近くの我が家に向かう。
「ポテチだと分かっていたら、わざわざ途中下車して行かなくても良かったんだけど。まあ、こんなこともあるか。ちょうどいいや。これは酒の肴にしよう。」
藤井さんにあげるのは、子ども向けの地蔵祭りのご褒美菓子のようで、気が引けるので、また、今度別のものをプレゼントすることにした。
「ただいま。」
「お帰り。あら沙羅ちゃん久しぶりね。元気だった?」
「はいっ。この通りです!」
「今日、沙羅と飲むんだ。村田のおじさんに魚もらってくる。」
「いいわね。私たちの分ももらってきてよ!」
「うん。じゃあいってくるね。」
沙羅と一緒に村田さんという近所の漁師さんのところに行く。いつも、売り物にならないような小さな魚を分けてくれる気前のいいおじちゃんなのだ。
「村田のおじちゃん。今日魚ある?」
「あるよ。その辺にあるのもっていっていいよ。」
「ありがとう。うれしいナ。」
二人で黄色い声を出して、しげしげと少しでも型のいい高級魚を探す。
「またくるね!」
「ああ、いつでもおいで!」
頼もしい「味方」を手に入れて、夕日を背に帰路につく。
「沙羅、今日は思いっきり飲むぞ。やけ酒だ。」
「いいね。私も負けないからね。」
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