#38 輪転する回廊、泡沫の揺光
都市がまだ目を覚まさぬ時間帯、時計の針は六時を少し回ったばかり。
機械仕掛けの風が、天井から床へと滑るように吹き抜けていた。
空調の排気口がわずかに唸り、壁際を撫でるように流れた気流がブラインドに触れて、微かに揺れる。
湿度は低く、室内には施設に染みついた金属と油の匂いがどこからともなく漂っていた。
照明は落とされていたが、窓から差し込む光が朝を告げ、静寂が部屋を包んでいる。
簡素なデスクに置かれた情報端末が待機状態を示すアイコンを規則的に点滅させていた。明滅する光が、簡素な室内の輪郭を淡く浮かび上がらせる。
ここは、無限回廊内の仮眠室の一つ。割り当てられた部屋のベッドの上に、ブラストが無言のまま横たわっていた。
仰向けで、夢現にぼんやりとコンクリートの素地そのままの天井を眺めている。
頬がわずかに動いた。舌が内側を探るように動き、目線は天井に定まる。
枕は硬く、マットレスの反発も決して上等なものではない。寝返りを打てば、金属フレームの感触が伝わってくるほどだった。
身体の節々が微妙に軋むのは、きっと普段とは違う寝具のせいだけではないだろう。
上体がゆっくりと起き上がる。
筋肉の動きに呼応するように、義肢が静かに駆動する。左腕を持ち上げ、関節の鳴る音がわずかに空間に落ちる。
手のひらを開き、閉じる。指先が一度だけ震えるように動いた。
動作に異常はない。だが、左腕の重さが、わずかに自分の腕ではないもののように思えた。
遠く感じるその違和感に、ブラストは小さくため息を吐いた。
足を床に降ろし、立ち上がる。
壁面は天井と同じ灰色のコンクリートで覆われており、装飾らしいものは何一つない。
部屋の入り口付近に備え付けられたクローゼット。簡素なデスクと椅子。寝心地の悪いベッド。それがこの部屋の全てだった。
寝起きの身体に流れる鈍く重い緊張を解すようにブラストは両腕をゆっくりと天井へ向けて伸ばす。肩の関節が微かに鳴った。
続けて背を反らし、吐く息と共に肩を回しながら立ち上がる。
その歩みは室内に設けられたドア以外の小さな開口部。明り取りの小窓に向かった。
指先がブラインドのコードに触れる。
カシャン、と乾いた音を立てて半分ほど引き上げられたルーバーの隙間から、眩い白光が室内を照らす。人工太陽灯による疑似的な朝の光だ。
遥か上空から投下される光は無限回廊の金属とガラスで構成された層を屈折し、プリズムのように複雑な模様を描いていた。淡く、揺らめきながらコンクリートの壁に反射し、幾何学的な影を床に落とす。
静かだった部屋に一つ、電子音が混ざる。
デスクに置かれた情報端末が起動し、淡いブルーのUIが立ち上がる。ブラストは視線を落としながら、その横に置かれたコーヒーのスティックパックを手に取った。
電気ケトルが湯を沸かしはじめる。小さな気泡がポコポコと音を立て、白い蒸気がふわりと立ち昇る。
カップにインスタントコーヒーを注ぎ、無造作にステンレスのスプーンでかき混ぜると、空間に香ばしい苦味が立ち込めた。
そのまま椅子に腰を落とし、携帯端末に指先を滑らせる。
トップニュースの一つが、ブラストの目に留まった。
《六大企業連合部隊『
記事に添えられたアイキャッチ画像には、互いに手を重ねる各企業の重役たちの姿が映っていた。
背後にはイヅナ精密電子、極東重工、京極ハイテックス、キサラギ化成、バード商会、そして國の企業ロゴが並び、調和と団結を演出するように構成されている。
しかし、ブラストは感慨なさげにふぅんと一つ呟くだけで眉ひとつ動かさず、そのまま親指を滑らせた。
表示されたニュース記事のサマリーを一瞥し、読み飛ばしていく。
興味はないわけではない。
ただ、それが「今」の彼の関心事ではないだけだった。
カップを手に取り、一口啜る。
熱が喉を下り、腹の奥でじんわりと広がっていく。苦味は控えめで、味も香りも薄っぺらい。
いつもの味。いつもの朝。
そんな定型句のような感想が、自然と胸の内に落ちた。
不意に、ブラストはブラインド越しに窓の外を見やる。
眼下には、無限回廊の中層にあたる構造壁が、波のような模様を浮かべていた。
静けさが辺りを包み込んでいる。
武器も装甲も身に着けていない、ただの
戦いが続く日常でごく稀に訪れるそんな朝を、ブラストは心のどこかで好ましく思っていた。
「そんじゃま、行くとするかねぇ」
簡素な仮眠室の一角。入り口すぐ横のハンガーラックには、整然と装備一式が揃えられている。
黒と蒼の装甲群が静かに主の手を待っていた。
束の間の“素”の時間は、ここで終わる。
ブラストはコーヒーカップを片づけると、ストレッチのついでに関節を鳴らしながらハンガーラックへ歩み寄った。
扉の内側には、武具の重量を受け止めるための補強ハンガーが設けられている。
その中央に、法務部制式の蒼い鎧が鎮座していた。
鈍く光る硬質な外装。肩と胸部にはI.P.E.法務部の刻印が彫り込まれている。
装甲は軽量化と機動性を重視した構造で、見た目以上に軽く、しなやかだった。
ブラストは、すでに身につけていた黒いインナーの上からその蒼鎧を身に纏う。
胸部のプレートを嵌め込み、左右のバックルを留める。
胴回りには冷却ベストと小型パワーアシストを内蔵しており、装着と同時に僅かな振動が体に伝わった。
続けて右腕の防具を装着し、肘と肩の可動域を確認する。
左腕には付けるものはない。肩から先に繋がるのは、I.P.E.の技術を結集させた最新の
甲殻を思わせる金属外装に包まれたその左腕に、ブラストはそっと視線を落とす。
指をひとつずつ折り曲げ、掌を開く。朝一番に感じたわずかな違和感は、すでに消えていた。
反応速度とサーボの駆動音を確認するように、何度かゆっくりと握り締めた。
次いで、電磁拘束杭を納めたユニットを右の上腕に装着する。
装甲にカチリと収まると、装填されたことを示す電源インジケーターが滲むように点灯した。
側面のラックから、二振りの刃が取り出された。
ひとつは風を纏う大振りの刀。ブラスト専用装備、その銘『
刃鳴りが微かに空気を切り、目に見えぬ気流が周囲を撫でていく。
その刀を、ブラストは迷いなく右肩背面の鞘に納めた。
続いて、簡素だがしっかりとした造りの鞘に収められた無骨な鋼剣。
『ヘスペラス』と呼ばれるそれは、重戦車のフレームシャフトから削り出された超硬鋼の塊だった。
ギャング時代から使い続けている十年来の相棒を、彼は左腰背面のスロットに収める。
金属同士が触れ合う鈍い音が、小さく室内に響いた。
そして、両腰のホルスターには短機関銃を一丁ずつ。
それぞれ『マリア』、『カタリナ』と名付けられた二丁一対の改造サブマシンガンは、片手でも精密射撃ができるよう取り回しを重視したコンパクトな意匠で統一されている。
弾倉を装填し、スライドを後退。虚空へ向けて構え、一呼吸の後に排莢。
ブラストは二丁を抜き取っては一連の型のような動きを繰り返し、異常がないか確認した後、それぞれのホルスターへと戻した。
最後に、鎧の上から黒いロングコートを羽織る。
法務部の装甲服に合わせて仕立てられたその上着は、動きやすさと防御力を両立した特殊素材製で、裾が歩行のたびにわずかに翻った。
マントのような印象すら与えるそのシルエットは、彼の蒼という象徴とともに、無限回廊を舞う風のように映る。
すべての装備が所定の位置に収まった時、ブラストは全身の強張りをほぐすように小さく息を吐いた。
肩を軽く回し、手足を一度ずつ動かす。
風をまとう身体が、再び戦場を駆ける準備を整えていた。
足音を殺すように、部屋の床を歩き出す。
蒼い装甲と黒い装束が、仮眠室の狭い廊下のあいだを抜け、扉の前で立ち止まる。
センサーが反応し、低く息を吐くような音とともに、扉が横へと滑り込んだ。
廊下を照らす照明の光が室内へ淡く差し込む。
足が一歩、また一歩と外へ進み、やがて姿が完全に扉の向こうに消えた。
ブーツの靴音が遠のいてゆき、代わりに静けさが満ちていく。
扉はゆっくりと、休息の終わりを惜しむように閉じていった。
仄暗い仮眠室の前。誰もいなくなったその前室の一角に、微かな風だけが残されていた。
緊張と焦燥の気配が無限回狼の地下に満ちていた。
窓一つない無機質な連絡通路。真っ白な照明が上方から降り注ぐその場所には、法務部一課の選抜隊員たちが数人ずつ一塊に配置され、互いに距離を保ったまま出撃命令を待っていた。
『セクター34、法務部――課チームK、押されています! 数が、数が――多すぎる!』
『こちらセクター47! 回廊内で複数の敵影を確認、応戦中! 援軍を要請っ!』
『状況変化なし。セクター41、封鎖を継続。敵の動きは鈍い』
『こちらチームE、セクター55にて交戦中。敵戦力は小型の人型
『回線、落ちてます! いや、応答あり……ッ! セクター36より、増援要請!』
同時多発的に交錯する戦況報告。焦燥、怒号、沈着な報告。
いずれも無限回廊の戦略中枢地下深く、通称“バックヤード”で待機する一課兵士たちの耳に届いた総務部からの音声通信だった。
研究棟や、臨時の作戦指令室がある中枢セクターを中心とした無限回廊は、同心円状に60のセクターへと分割されている。
第一円層を4区画、第二円層を8区画、第三円層を16区画、そして最外縁部の第四円層には32のセクターが広がっている。
各セクターへ即応できるよう、法務部の戦力は最小単位に分割された。
法務部第一課の兵士たちは数名ずつで構成された小隊としてバックヤードに控えている。
明るく照らされた連絡通路には窓はなく、冷たい壁面と床が静かに光を返していた。
照明は白色蛍光灯。緊急時にも作業効率を落とさぬよう設計された、無装飾の実用空間だった。
遡ること、時刻は午前9時過ぎ。
”始業時間”と共に始まったキサラギ化成の大規模攻勢の第一波に応対すべく、I.P.E.は法務部二課の大部隊を無限回廊内の全てのセクターに配備した。
施設防衛をその存在意義として割り当てられた数千名の職員たちは、侵攻してきたキサラギ化成の私兵群『黄昏劇団』と交戦を開始。
無限回狼最外縁部にある四方の門から攻め込んできたのは、キサラギ化成の技術によって人工的に念動力を操る術を身に付けたデミ・サイコと、彼らが操る
感情や脳機能の一部を欠損させつつも念動力者としての異能を開花させた黄昏劇団は、施設の防衛設備を
しかし、その無血開城にも等しい侵攻こそが無限回廊の真の目的であると黄昏劇団の兵士たちが気付いたのは、第一波の全兵力を無限回廊が飲み込んでからだった。
第一波の収容を確認した作戦司令室は、静かに無限回廊の真の防衛機構を発動させる。
無限回廊内のセクターその全てが蠢き、反転し、前後も左右も出鱈目に稼働するさまは、まさに生きた迷宮そのものだった。
隊列も緊張感も蟻の行列のように長く伸び切っていた黄昏劇団の軍勢は、その機構により細切れに離散させられる。
不運な者は機構の駆動部に巻き込まれ圧死する者さえいた。そして、無限回廊の鳴動が落ち着いた時を見計らい小隊から中隊規模にまで分断させられた黄昏劇団の私兵と
そして現在、午前十時を半ばも過ぎた頃。
幾人もの兵士が、それぞれの装備のチェックを終え、そわそわと壁際をうろついていた。焦燥が、抑えきれないのだ。
だが、ブラストは違った。
鎧の胸部を留めたまま、金属の柱に背を預けて座り込んでいた。脚を伸ばし、肩の後ろで手を組むその姿は、緊張とはほど遠い。
その隣、漆黒の飛行装備“
「……落ち着いてますね。少しは緊張感を持たれては?」
「緊張はしてるさ。ただ……」
ブラストはフルフェイスマスクの奥で笑った。
「俺たちが動くまで、まだ何人か死ぬんだろ? わかっちゃいるけど、今行ったところで、全部ひっくり返せるわけじゃない」
「ええ。それが、部隊戦ですから。臆病風に吹かれているわけではないとわかって安心しましたよ」
ヒューズは肩の大型ウィングバインダーをひとつ確認し、装備の調整に戻る。
黙って会話を聞いていたのは、スナイパーのカームだった。
彼女は背後の壁に背を預けることもせず、脚を組んだまま直立して目を閉じていた。
その細身の体には、黒に翠を差した軽装鎧が装着されている。左肩から垂れるマントは、着脱可能な光学迷彩仕様。狙撃時には体ごとその存在を包み隠すものだった。
やがて静かに目を開けると、ブラストを見据えて言った。
「動きたがってるのは、貴方じゃなくて、その脚でしょう?」
「ハッ、“
カームは小さく肩を揺らすと、再び目を閉じる。
「その異名で呼ぶのはやめて」
その言葉に、ブラストは片眉を上げたが、反論はしなかった。
カームの表情は波一つない海のように、ただ静かだった。
黙ったまま、マスクの奥で息を整える。脚はじりじりと、しかし確実に地を蹴る準備を進めていた。
カームが再び黙したのを合図のように、空間に静寂が戻る。
ヒューズは再び宙を仰ぎ、ブラストは刀の柄に軽く手を添えたまま、足元のトラベレーターを見下ろしていた。
しかしその一瞬の静けさは、まるで空気を読み違えたかのような大音声で打ち破られた。
「おうおうおうおうッ! やってるやってる、イイねイイねェ! このピリついた空気、嫌いじゃないぜッ!」
けたたましい足音と共に、ひとりの男が駆け込んでくる。金髪混じりの髪を爆発させた青年、名はブリッツ。
上半身はI.P.E.制式の戦闘ジャケットだが、前を開けてタンクトップがのぞいている。
腰には【雷切】と名付けられた改造制式刀がぶら下がり、どこか不良じみた印象だ。
「よォ、我が相棒! 風神様は今日もご機嫌ナナメかァ?」
そう叫びながら、勢いそのままにブラストの背中を叩こうとするが。
「うるさいねぇ。騒ぐな、ブリッツ」
低く、凛とした声が彼の動きを止めた。
いつの間にか現れたネーベルが、ブリッツの首根っこを引っ掴んでいる。
濃紺の法務部制式鎧に改造銃【雪椿】を背負い、柳眉を逆立てこちらを睨んでいた。
「アンタ、また前線で空回りして足引っ張ったら、私がぶん殴るからね。わかった?」
「ハハッ、それはそれで光栄だぜ、魔弾の姐御ぉ」
ブリッツが茶化すように笑い返す。
ネーベルは鼻を鳴らし、視線だけでカームに軽く頷く。
「久しぶり。元気そうで何より」
「……おかげさまで。ネーベルさんも、相変わらずですね」
控えめな返事にも、ネーベルは微笑を返す。
彼女はブラストの同期の一人であり、戦闘教育生時代から人付き合いが得意ではないカームに何かと世話を焼いてくれていた。カームにとって、戦場では数少ない“気心の知れた先輩”だった。
「ふふ……十年も経てば、一課の顔も様変わりするものですねぇ」
ヒューズが小さく呟き、空を仰いだままつぶやく。
「なんだ? そこのイカした装備のオッサン……バードの傭兵か。昔のイヅナ一課とやり合ったことでもあんのかよ」
「ええまぁ、そんなところです。伊達に傭兵業は……失礼、先日登録したばかりの新人でした」
「ははーん。訳アリっつーやつね。詮索は無しにしとくわ。ヤれんだろ? なら問題ねぇ」
ブリッツの言葉に応えるように、ヒューズは無言で腰の刀に手を添えた。
笑っている者も、睨んでいる者も、誰一人として逃げ腰ではない。
誰もが皆、前線で戦う仲間を救いたい。その想いで、出撃の時を今か今かと待ち構えていた。
そして、数分後。
バックヤードの天井に仕込まれた赤色灯が、一斉に点滅を始める。
硬質な電子音が空気を裂き、次いで爆ぜるようなアラートが響き渡った。
『警告します。無限回廊内に、新たな敵性反応を多数検知。キサラギ化成による第二波が投入された可能性あり。法務部全職員に告ぐ。戦闘準備態勢、レベル3に移行してください」
凛とした声のアナウンスが、総務部オペレーターからの一斉通信で叩きつけられる。
「戦闘モード、起動。心拍正常、機構反応良好。ブラスト、単独先行はくれぐれも控えて」
カームが静かに囁く。すでに迷彩マントのフードを深くかぶり、遮光ゴーグルを装着していた。狙撃銃は折り畳み状態で背中に収められており、いつでも展開可能だ。
彼女の隣で、ヒューズが口元を歪める。
「もう、間もなくですね。ブラスト、私を上手く使ってみせなさい」
ホバリングするように床から浮かび上がったヒューズが、腰の刀を引き寄せ鯉口を切ってみせた。
そして、再び総務部オペレーターの通信が響き渡る。
『法務部第一課に告ぐ。敵の第二波に対し、迎撃を許可する。作戦指揮官より制限解除の承認あり。全員、第一種戦闘配備。繰り返す、第一種戦闘配備! 制限解除の承認……あり!』
その一言に、充満していたヒリついた空気が一変する。
バックヤードのあちこちで、一課の兵士それぞれが設定した制限解除の“号令”が響き渡った。
遠くで、頭ひとつ飛び抜けた体格の男の持つ水晶のように透き通った刀身が黒い霞を纏う。
その奥では、褐色肌に短い金髪を煌めかせた男がナックルダスターを打ち合わせていた。
ブラストもまた、通信を聞いて背中を預けていた柱から身体を起こす。
「ようやく気合い入ったかよ、相棒」
「相棒じゃねぇし、同じチームですらねぇだろ。さっさと持ち場に戻れブリッツ」
「そう言わずに、俺の制限解除でも見て行けって。吼えろ! 雷切ィィィ!!」
ブリッツが絶叫と共に愛刀を掲げた。刀身に電撃が奔り、青白い雷光が周囲を染める。
「ここで命賭けないで何が法務部一課さ。ブラスト、アンタも気張りなよ。咲き誇れ、雪椿!」
ネーベルが背中のライフルを抜き、螺旋状の術式を銃身に走らせる。
跳弾制御プログラムが走り、彼女のHUDが高精度の軌道予測を描き出した。
「先に行くぜブラスト!」
「カーム。このスットコドッコイのケツが重かったら、アンタが蹴飛ばしてやんなよ」
ブリッツとネーベルが駆け出す。通路の奥、トラベレーターの起動ランプが青く点灯する。
轟音と共に動き出す床の上を、一課のメンバーたちが次々と走り出していく。
その後ろ姿を見送りながらブラストは肩をすくめ、背中に納められていた蒼い刀を抜き放った。
「そういうアツいのは、ガラじゃねぇの。――劈け、
ブラストが静かに呟くと、蒼い刀身が一瞬、風をはらんだように揺らめく。
振り抜かれた刃の軌跡には、ブラストの抑えた激情そのもののような暴風が吹き荒れていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます