第30話 やれば出来る!

 部屋に戻ると半ば放心状態のアオイがいたので、どうしたのかと聞いてみる。


「コータ……人の姿でいるのは疲れるモノなんだな。ハァ~」

「疲れるかも知れないけど、出来るだけ人の姿でいてよ。っていうか、そもそもなんでそういう姿になったの?」

「あ~これか?」

「うん、そう。だから、そんなに持ち上げないで! 揺らさないで!」


 俺が疑問に思っていたことをアオイに尋ねるとアオイはそのを持ち上げて俺に確認してくる。


「ほれ、お前の頭の中を覗かせてもらっただろう」

「うん、アレは言葉を覚えるためだったんだよね」

「ああ、そうだ。だがな、言語だけを抽出するというのも難しいモノでな。コータの頭の中から要るモノなのか要らないモノなのかを大雑把に分類していた時に何やらペラッペラの薄い布の様なモノを身に着けている絵をいくつか見つけてな。コータが好きなモノなんだろうなとぼんやりと認識していたのだ。だから、こうやって人の姿になる時に出来るだけ、それに近付ければコータが喜ぶかと思ってな。ダメだったか?」

「……いえ。全く問題ありません」

「そ、そうか……」


 それからお互い何を言うでもなく暫く沈黙が続いたが、それを打ち破ったのは『グゥ~』と鳴り出したタロのお腹の音だった。


『ねえ、ご飯まだ?』

「あ、ああ、そうだな。アオイも腹が減っただろ」

「……そうかな」


 下の食堂に下りるとアオイを見たオジサン達が俺達の前からサ~ッと引いて行く。


「ありゃ、キレイに避けられたね」

「俺は何もしていないんだがな」

『ワフゥ』


 オジサン達が静かにしてくれるのなら、面倒なことにはならないだろう。俺達はそのまま静かに食事を済ませ部屋へと戻る。


「ちょっとイベントがないのが淋しい気もするけど、今はいいかな」

「俺はもうちょっと飲みたかったんだが」

「明日はこの町を出るんだから、ダメ」

「そうか……残念」

『ワフゥ~』


 部屋に戻るとアオイ達に今から俺がやることを黙って見ていてくれとお願いする。


「見ているのはいいが、コータは何をするつもりなんだ?」

「うん、殴りに行く!」

「は?」

「だからね、俺に黙って色々してくれたヤツを殴りに行くんだよ」

「行くってここは宿の中だぞ」

「分かってる。だから、黙って見ててくれたらいいから」

「まあ、コータがそう言うのなら。だが、助けはいいのか?」

「大丈夫! 絶対に殴って来るからさ」


 そう言って俺は右手を上に突き上げて見せる。


 さて、問題はどうやって行くかだけど、向こうが呼べるのなら、こっちから行けるんじゃないかと思ったところで『肯定します』といつものメッセージが流れたから行く方法はあるんだろう。


 じゃあ、その方法はと考えたところで、女神なら神殿なり教会だろうと考えた。ラノベでも教会でお祈りしたら会えたってのがテンプレだ。だが、女神イーシュは既に衰退した宗派だろうから、教会なんかの施設はないと思う。


 だけど、ないのなら創ればいい。何も大きいのを用意する必要はない。日本でも小さい祠に神様が奉られている。


「そういう訳で今から、女神イーシュの神殿を作ります。用意するのは土魔法で、それっぽいものを用意しましょう。例えば、こんな風に……はい、出来上がりです」

「コータ、何を言っているんだ? そして、その箱っぽいのはなんだ?」

「これは女神イーシュの神殿だよ。これから、この神殿にお祈りすれば女神イーシュのところに行ける……ハズ?」

『肯定します』


 いつものメッセージが流れたので、床に置いたなんちゃって神殿を前に両手を組み頭を垂れる。


「待ってろロリ女神!」

『……』


 目を閉じ「どうか女神イーシュに会えますように」と祈ると、周囲の雰囲気が変わったのを感じて目を開けてみる。


 すると、見覚えのある真っ白な空間だった。そして、俺の目の前には仰向けに寝転がって気持ち良さそうに寝息を立てているロリ女神がいた。


「おい!」

「ん~むにゃむにゃ……」

「クソ! 気持ち良さそうに寝やがって」


 ロリ女神の寝顔を見ている内に「俺を騙しやがって」とフツフツと胸の奥底から黒い何かが湧き上がってくるのを感じた。


 俺は手に大きめのハリセンを用意する。ここは精神の世界だと前にロリ女神から聞いていたので、試しにとハリセンを強く思い描くと想像した通りのハリセンが出て来た。


 俺は右手に持つハリセンで左手をパンパンと軽く叩くと思いっきり振りかぶってから、寝ているロリ女神の顔面にハリセンを振り下ろす。


『バチーン!』

「イタッ! え? 何? 何があったの? あ!」

「よう、来たぞ」


 ハリセンで叩かれた顔面の痛さと、その音で目を覚ましたロリ女神は何が起こったのか最初は分からなかったが、その痛がり様をニヤリと笑いながら見ていた俺に気付くと顔が引き攣る。


「え? どうして、ここにいるの?」

「どうしてって、どうしてだと思う?」

「え? なんで?」

「ブッブゥ~はい、時間切れ!」

『バシン!』

「イタッ」


 ロリ女神が答えないのでハリセンで頭を叩く。頭を叩かれたイーシュはその痛みから、頭を抑えて蹲る。


「ちょ、ちょっと待ってよ。なんで私が叩かれるの! ワケわかんない!」

『バシン!』

「分からないわけがないだろ。ちゃんとマジメに考えろよ」

「だから、なんなの! 私が何をしたのよ!」

『バシン!』

だと、それがダメなんだろ!」

『バシン!』

「だから、イタいって言ってるでしょ! もうなんなのよ!」

「お前、俺に言ってないことがまだたくさんあるよな?」

「……えと、なんのことかな? ふひゅ~」

『バシン!』

「イタい……」


 俺の質問に対し惚けて吹けない口笛を吹き誤魔化そうとするイーシュにハリセンを喰らわせる。


「もう、殺っちゃってもいいよね?」

『肯定します』

「え~そこはダメって言ってよ!」

『否定します』

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