第17話 そんなテンプレはいらない
「聞いてないわよ!」
ノエルさんが再起動してから、いきなりそう怒鳴る。
「聞いてないと言われても俺も初めて言ったし……多分だけど」
「なんだ。お前達は魔王を知らないのか?」
「知らないわよ!」
そりゃ魔王がいると言われれば慌てるよなって思ったけど、どうも
「ねえ、お姉さんは魔王を知っているの?」
「あ~いや、正直に言えば、いるのは知っているが、どういうのかは知らないな」
「えっと、見たこともないし、話したこともないということ?」
「ああ、それで合っている」
「ノエル、今お前が憤慨してもどうしようもないだろう。先ずは落ち着け」
「ダリウス、だって魔王よ! 魔王がいるって言うのよ!」
「だから、魔族がいるんだから、ソイツらの王の魔王がいたって不思議じゃないだろう」
「そ、そうだけど、だって魔王なのよ!」
「もう、いいから。それは分かったから、コータ続きを頼む」
「いや、もう全部話したよ」
「そうか……」
俺もシュリの記憶を読み取った時に「魔王っているんだ」と思っただけで『肯定します』とメッセージが流れるんだものな。思わず「勇者もいるのかな」と思えば『……』となった。
ここでイヤな予感がした。
魔王がいる。そして異世界転生した俺がいる。転生させたのは女神イーシュだ。魔王x女神x異世界転生者となれば、必然的に俺が勇者なのかと思えば『肯定します』と出た時には今すぐ叫びだして逃げたいと思ったよ。
でも、逃げたところで、ここは女神イーシュが治める世界だ。所謂、お釈迦様の手の平の上と言ってもいいだろうと思えば『肯定します』と流れたのを見て殴ると決めた。
だから、このことはいくらなんでもギルマス達に話すことは出来ない。そしてもう一つ、シュリの記憶を読んだ時に『邪神イリス』というのがあった。
俺はこの『邪神イリス』がもし『女神イース』なら単純で楽なのにふと思ったら『肯定します』とメッセージが流れた時には思わず二度見したが結果が変わることはなかった。
自分達が信じていた女神が実は、元々の創世神である女神イーシュを追い出し、魔王が崇拝する邪神イリスで、魔法衰退の原因を作った女神イースだったなんて、正にテンプレの王道じゃないか。そして、そこには異世界転生の勇者とも知らされずにいた俺がいるのもテンプレと言えば、テンプレになるのだろうか。そういうのは読んだ気がしないではないが。
まだ、ノエルさんが「魔王……」とか、呟いているよこで、俺がそんなことを考えていると、
「俺の名前はどうなったんだ?」
「あ! そうだったね」
「まさか、忘れていたのか?」
「いや、そんなことはないよ。そんなことは……」
「お前、俺がある程度の思考を読めることを忘れているだろ?」
「へ? あ!」
「ふふふ、思い出したようだな。もう、こうなればお前の思考の中からお前が呼ぶのを躊躇うような名前を……そうだな、く「分かった。ちょっと待て!」……そうか。ならば、早く言うのだな」
「あ~もう、分かったよ。考えて無いわけじゃないんだって。ただ、候補がいくつかあってどれがいいのか搾っていただけだから」
「ふむ、嘘でもなさそうだな。なら、それを言ってみるがいい」
「……偉そうだな」
「いいから、早く!」
「分かったよ。えっとね、俺が考えたのは『
「え~っと、『
「『
「そうか、響きで決めたんだがな。そうか、私はこれから『アオイ』なんだな」
「これで俺も冒険者になれるんだな」
「あ、そうだった。ノエルさん、ノエルさんってば! もう、戻って来てよ!」
『ワフ!』
「あ、タロ様……あれ? 私はいったい……」
「あ、よかった。ノエルさん、アオイの冒険者登録をお願いします」
「アオイ? ああ、
「お願いします」
「魔王が……」とぶつくさ言いながら、ノエルさんが部屋を出て行くのを大丈夫かなと見ていたらギルマスが言う。
「お前、ソイツの擬装を忘れるなよ。少なくとも種族は絶対に見られないようにしとけよ」
「あ、そうか。じゃ、ちょっと待ってよ」
「うん、なんだ? 揉むのか? ほれ?」
「いや、も……揉まないから! いいから、ちょっと動かないで!」
「お前、そういうのは人がいないところでしろよな」
「ほら、勘違いされちゃったじゃん! ほら、動かないで!」
「……」
俺はアオイに動かないように言うと、種族を『
「うん、これでよし。ギルマスどうかな」
「どうかなって、お前『擬装』出来るんだな」
「あれ? ダメだった?」
「もういい。お前で驚くのは面倒になってきたよ」
「え、ヒドくない?」
『否定します』
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