第11話 俺のせいじゃないし

「ダリウス! いいから、ちゃんと話を聞いて下さい!」

「お、おお。痛ぇな~」


 ノエルさんに叩かれた後頭部をさすりながら、ギルマスが俺の対面に座る。


「で、どうしたんだ?」

「その前に、自己紹介して下さいね。いい加減、怒りますよ?」

「怒るって、さっきのじゃ足りないのかよ。ったく。まあ、さっきのは悪かったな。俺はここのギルドマスターをしているダリウスだ。それでお前は何者なんだ?」

「えっと、俺は今日、ここのギルドに冒険者登録をしに来ました。コータです。で、従魔のタロです」

『タロだよ』

「ふ~ん、コレが俺を呼びつけた原因か」

「ダリウスは分かるのか?」

「なんだ、ハンスは分からなかったのか?」

「ぐっ……」


 ダリウスと名乗った冒険者ギルド キンバリー支部のギルドマスターは俺を一瞥してからタロを見ると一目でフェンリルと分かったようだ。そして、ハンスさんにはこんなことも分からなかったのかとでも言うように口角が少しだけ上がる。


「まあ、大体の事情は分かった。ノエル、この従魔用の首輪に『偽装』と『隠蔽』を付与して来てくれ。費用は俺持ちでいいからよ」

「分かりました。でも、費用は本当にいいんですか?」

「ああ、さっき揶揄った謝罪の代りだ」

「分かりました。では気が変わらない内に済ませてきます」

「あいよ~」


 ノエルさんはダリウスさんが卓上に出した従魔用の首輪を大事そうに抱えると部屋から出て行く。


 ノエルさんが出て行ったのを確認したギルマスは、部屋から出て行くのかと思えばなぜだか俺の顔を覗き込むようにジッと見ている。


「気に入らねえ……」

「え?」

「おいおい、ダリウス。お前、何言ってんだ?」

「ハンス、お前は何も感じないのか?」

「だから、何をだよ。お前、何殺気なんか出してんだよ! コータみたいな子供相手によ!」

「だから、気に入らねえって言ってんだろ!」

『ガルルゥ……』

「タロ、いいから落ち着いて」

『キュ~ン』


 ギルマスは俺を見ていたかと思えば、開口一番に「気に入らない」と言う。


 俺自身、まだ鏡も見ていないから、俺の風貌の何が気に入らないのかが分からずに不安になるが『鑑定を使われています』とメッセージが流れたのを読み、なんとなくだけど、あ~弾いたんだろうなと思っていると『肯定します』と言われたのが、これがことなんだなと理解してしまったので、隣で唸っているタロに大丈夫だからと落ち着かせる。


「お前、何を隠しているんだ?」

「ダリウス、絡むなよ」

「ハンス、コイツはさっきから俺の鑑定を弾いてやがるんだぞ」

「え? コータ、それホントなのか?」

「さあ、何かされているなとは思ったけど、アレが鑑定なのかは分からないよ」

「な? 気に入らないだろ」

「いやいやいや、それでも子供相手に絡むなよ。いいから、落ちつけよ」


 ギルマスは俺がさっきから鑑定を弾いているのが気に入らないとハンスさんにも同意を求めるが、ハンスさんは子供なんだからと相手にしない。そんなハンスさんにギルマスは十分に怪しいだろうがと更に食ってかかる。


「あのな、ハンス。フェンリルを連れた子供が俺の鑑定を弾くんだぞ。どう考えても要注意案件だろうが!」

「……あ~あのな、ダリウス。よく聞いてくれよ」

「なんだよ。そんな奥歯に物が挟まったような物言いを俺にするんじゃねえ! 言いたいことがあるんなら、ハッキリ言えよ!」

「じゃあ、ハッキリ言うが、この子はソフィア王女のお客さんだ」

「へ?」

「だから、王女様と一緒にクレイヴ領まで行く途中で、領主様の館に宿泊中のお客さんだ。今は、買い物と冒険者登録をしたいってことで俺が案内をしているところだ。分かったか?」

「はい?」


 ギルマスは俺が王家に関わりのある人物だと言われ、急に大人しくなる。もし、ギルマスから音がしたならば『フニャフニャ』という音が聞こえただろうと思う。そのくらい急に萎れていった様に見えた。


「コータ君、お待たせ! コータ君のギルドカードとタロ様の従魔用の首輪も付与してきたわよ。って、ダリウス? ハンス、何があったの?」

「あ~実はな……」


 部屋に明るい調子で入って来たノエルさんがギルマスの落ち込みっぷりに驚きハンスさんに説明を求め、ハンスさんがここであったことを正直に話す。


「あ~なるほどね。ダリウスも元Aランクだから、まさか鑑定が弾かれるなんて考えもしなかった訳ね。まあ、いいクスリになるんじゃない。そんなことより、はい」

「あ、ありがとうございます」

「タロ様も……私が着けますね」

『ありがと』

「いえ、そんな……恐れ多い……」


 俺はノエルさんからギルドカードを受け取るとその表面に書かれている項目をジッと見る。


「これがギルドカードか~」

「嬉しいか?」

「うん、だってこれがあるとないとじゃ大違いだよね」

「ああ、そうだな。ちなみにだが、このギルドカードには預金も出来るし、討伐記録も載るんだぞ。仕組みは分からないが凄いだろ」

「うん、凄いね」

「だろ? 俺も元Bランクだからな。分からないことがあったら、なんでも聞いていいぞ」

「ホントに?」

「ああ、いいぞ」

「はいはい、そういう話は他でしてね。コータ君、これで手続きは終了よ。最初はGランクだから、依頼不達期間には注意してね。じゃあ、タロ様もお疲れ様でした」

「はい」

『ありがと』


 項垂れているギルマスとノエルさんに挨拶をしてから、部屋を出るとオジサン達に囲まれた。


「おい、なんのつもりだ?」

「ハンス、お前はもう冒険者を引退したんだろ。なら、引っ込んでろよ」

「そうだぞ。これは俺達冒険者同士の問題だ。そうだろ、小僧」

「確かに俺達臭いよな。それは分かっている。でもな、そんな小僧に言われるとむかっ腹が立ってしょうがねえのよ」

「それにな小僧、お前の手続きが終わるのを待っていてやったんだぞ。俺達に何か一言ないのかよ」

「だがな小僧、泣いて謝って身ぐるみ全部置いて行けば許してやらないこともないぞ。おっと、そこの従魔は大人しくしていな。さもないと……」


 一人のオジサンがナイフを俺の首筋に当てるが、タロはと言えば……何故だかキョトンと首を傾げてこちらを見ている。あれ? ここってご主人の危機に対して荒ぶる従魔が誕生する場面なんじゃないの? テンプレ展開はどこにいったの?。

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