果てしなくて、近い。

心がぎゅっと締め付けられるような作品。

距離というテーマが物理的なものだけでなく、心の隔たりや時間の流れの中で変わっていく関係性を表していて、物語が進むに連れて「遠くなるのに近づいていく」のがなんともいえない。にんまり。

友達との何気ない別れの瞬間、遥香のヤンキーっぽい強さとその裏にある脆さ、そして母との激しい衝突。
そこから逃げ出すように、求め合うように、2人が「シリウス」を目指す旅が始まります。

要所に【東京から**Kmの**】の表記が、物語を追うごとに遠く、戻れず、果てしない距離になっていく。
この文がすごい好きで、何度も読み返しました。

数字が表すSF的なスケールの大きさと、二人の内面的な距離が縮まっていく過程に読んでいて胸が熱くなるのとともに、じれったさも感じました。

そして結末は悲しくもあり、優しく包み込んでくれるようなラスト。
奏向と遥香がお互いを求め合いながらも葛藤しつつ、最後にたどり着いたシンプルな結論が愛おしいですね。

距離は自分たちがどう向き合うかで変わる。そう教えてくれるような作品でした。

その他のおすすめレビュー

陸前 フサグさんの他のおすすめレビュー239