50話

ウトゥはまた噛まれた首筋の痛み甘受しながら、擦り寄る翔颯かけはやてを抱き寄せた。

そろそろ寝かしつける必要があるからだ。

抱き寄せた体はすっかり大人に成長していた。

ウトゥのような体に成りたいと言うから、一緒にジムで鍛えた体躯からは、かつての翔颯を想像するのは難しいだろう。

健康的な肌、精悍な顔つき、そしてずっと不安だった陰毛も生え揃っている。

ウトゥは時折それを整える。

翔颯はそれが普通だと思っている。

稀にそういう非常識をウトゥは翔颯に教えるのだ。

偶にバレるが翔颯は気にしない。

だってウトゥの事が大好きだから。


抱き寄せられた翔颯は、寝かしつける気だなーと察した。

でもまだ、もう少し、ウトゥとおしゃべりしたい。

買い替えた、ばかりのランプで美しい相貌をじっと見て抗議する。


「…翔颯…」


「いーじゃーん、あと、ちょっとだけー」


「まったく仕方無し」


むふふって笑ってしまう。

だってウトゥは翔颯に甘い。

極上に甘い。

この特別を永久に味わえるだなんて。

これ以上幸福で贅沢は、この世の何処にも存在しない。

翔颯もきゅむっとウトゥを抱き締め返し、ちらっと室内に目を向けた。


白地に四芒星と波型の紋様がはいった壁紙は張り替えたばかりだ。

お風呂もトイレも改築工事済み。

キッチンと存在していなかったダイニングも増築されている。

そして今度サウナとバルコニーも増築する予定だ。

全部翔颯の為に。

ぜーんぶ全部、翔颯の為だけに。

翔颯は別に古臭くて生活しにくくても良かった。

ウトゥの家に家族として生活する。

それだけで十分だった。

なのに杖化け物。

優しくて甘いから何でもしてくれる。

もう、どーしてくれんだよー、と翔颯はウトゥのおでこにいっぱいキスをした。


「如何した」


「好きが好きでさー」


「そうか、ふふ」


今のすごい嬉しそうな反応何。

翔颯は急いでその表情を求めた。

ウトゥが、笑ってた。

何度見てもすごいきれいかっこいい。

そして変わらぬ金の双眸。

新しいランプの所為かな、きらきらしてて。


「そーいやこの間のパーティ楽しかったなー…」


綺羅びやか、だけど落ち着いたお屋敷で開かれたパーティーを翔颯は思い出した。

主催は勿論杖化け物。

そして集まったのは数人で、翔颯以外杖化け物だった。

名目はウトゥが番を得たお祝いだ。

だからすっごくお祝いされて、楽しかったのだ。

でも、番に成ってから随分経ってからの開催だったので「何でいまさらー?」「ようやく全ふ、員に連絡が取れたのでな」そう言われ翔颯は首を傾げた。

普段何をどう過ごしているのか、本当に杖化け物は不思議な存在だ。

ウトゥは幾つか会社を経営しているので、お手伝いをしている翔颯はウトゥは普通の杖化け物という認識だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る