37話
「ほんとだっだぁ…」
落ち着いてキスしたら、また、柔らかくって幸せだ。
幸せで、少し恥ずかしくて、鼻を中心に顔が熱くなる。
でもしあわせ。
「"此方は翔颯に虚偽申さぬと誓おう"」
誓いの口付けは少しだけ長く、息が絡まる。
翔颯はそれはやっぱり恥ずかしかったけど、自分は嫌じゃないからウトゥも嫌じゃないんだ、と。
瞼の隙間見つめ合って学んだ。
それに、キス続けてたらやっぱウトゥの息、乱れてきてる気付かなかった。
口を口にくっつけるだけ。
たったそれだけの単純な行為。
なのに幸せでお手軽で、翔颯は夢中になってウトゥの唇を奪い続けた。
「んぅ、ぁ、舌…いれるのー…?」
翔颯のキスの合間、お返しとばかりにウトゥも口付けていた。
角度を変え合わせる唇の位置も毎度異なり、気持ち良い。
翔颯は次第にそんなウトゥのキスを催促する為に、口付けするようになっていた。
だから唇の間に舌が滑り込んできて翔颯はちょっと驚いた。
「嫌か?」
それは否。
舌、また違った気持ち良さ感じた。
でも言葉の返答が恥ずかしい。
だから翔颯はあ、と口を開けた。
虫歯の無い綺麗な歯並び白い歯。
舌が震えていた。
誘ったつもりは翔颯にはなかった。
けれどウトゥにはあまりに魅力的だったから。
真っ赤な舌黒い歯、噛み付くような口付けで、翔颯を襲ってしまう。
「んっ、ンっ…」
先程までと打って変わって激しく唇を奪われ、翔颯は混乱した。
自然と涙が眦濡らす。
こわい。
こわいのにきもちがいい。
あの真っ赤な舌が口の中暴れているのだと思うと興奮が増した。
唇の裏と裏、重ねる心地に大人しくしてられない。
呼吸する事を一瞬忘れさせられ、ふぅふぅ鼻息が乱れる。
なのに、ウトゥの、舌が唇が、容赦無い。
密着と強襲が翔颯を掻き混ぜる。
何度も何度も、隅々、まさぐられる。
その舌が触れなかった所なぞないような深い口付けに、翔颯はしんなり蕩けてった。
ぷぁぁと奇妙な音が洩れ、ようやっと唇が離れてく。
糸が見えた。
翔颯は自分の口が原型を止めてないものと放心しながら、伝う糸切れるまで見送った。
そんな翔颯の頭を撫で、今度こそウトゥが離れてく。
追い掛けようと思ったが身体がいよいよ動かない。
心臓だけは元気に脈動していた。
むしろ飛び出そうなくらい、ドコドコいってる。
眠れない夜、冴えた頭に無駄に重い瞼、思うようにならない全身。
そういう感じに纏わりつかれ、翔颯は深呼吸じみた吸い吐きで胸を上下させていた。
色んな感覚、思い出しながら。
「わ、ぁ…うとぅ…っ」
どうしてか唾を飲んでしまった。
甘い味がした。
急に喉の渇き覚える。
何か無いかなって、ここでようやく辺りに視線を投げる。
だって急に目のやり場に困ったから。
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