まだ覚醒していないレベル1のクソザコだけどエロさ全振り聖女様の使用済み装備を売って、俺は楽して最強装備!鬼畜外道勇者と行く、聖女の染み付きパンティロード!
第37話「風が吹けば桶屋が儲かると言うように、魔物がいるから武器防具屋が儲かる。言ってみれば魔王軍と武器防具屋は一心同体。大事なお得意様であり大切な資金源だ。討伐なんてもってのほかだ」
第37話「風が吹けば桶屋が儲かると言うように、魔物がいるから武器防具屋が儲かる。言ってみれば魔王軍と武器防具屋は一心同体。大事なお得意様であり大切な資金源だ。討伐なんてもってのほかだ」
「邪魔するぜ」
「おう勇者様。こんな丑三つ時にどうしたよ? くくっ、さてはベッドから追い出されたな?」
「うるせぇよ。アイツのいびきがうるさくて眠れねぇからちょっくら外の空気を吸いにきただけだ」
「なるほど。そういうことにしておくか。でも残念だ。このままじゃあ、お約束のあのセリフが言えねぇじゃねぇか」
「お約束のセリフ?」
「
「ケッ。あんなオンボロベッドでお楽しみもクソもねぇだろうが」
「違いねぇ。ところでどうした? 勇者様がガラにもなくメイドなんて連れて駆け落ち逃避行なんて」
「アイツはメイドじゃねぇ。聖女アレクサンドラだ」
「なにっ!? メイドな聖女様と駆け落ち逃避行だと? それなんてエロゲ?」
「駆け落ち逃避行から離れろよ。アイツは訳あって勝手についてきたんだ。だから俺も仕方なく従者として付けているにすぎねぇ」
「仕方なく、か。オレにはそう見えなかったけどな」
「あ?」
「勇者様はさっき、ここで夜を明かさせて欲しいと言った後、こう続けたじゃねぇか。
「ンなこと言ったか? 覚えてねぇな」
「ククッ。覚えてないくらい、自然と口から出ちまうようならよほど重症と見えるな」
「何が言いたい」
「あの聖女様をいかに大切に思ってるか、ひしひしと伝わってくるぜ」
「なッ……! 大切? 俺がアイツを? バカも休み休み言え」
「素直じゃねぇな。それに聖女様が着ていた服。ありゃあプラチナメイド服だろ? あんな高価な服で着飾らせるなんて、それ相応の女ですと証明しているようなもんじゃねぇか」
「……」
「つまり勇者様にとって、聖女様は一心同体。なくてはならない存在ってわけだ」
「なくてはならない存在。まぁ、確かにそうだな」
「だろ?」
確かに、アレクサンドラがいないと俺の楽してリッチな旅は進まない。
それは紛れもない事実……なのだが、ヨーデルのやつ、なんか勘違いしてないか?
「ヨーデル。お前の言う通り、アレクサンドラは俺の大事な金の卵だ」
「ま、せいぜい大事にしてやんな」
「心得ておくぜ。うっし、軽くオチがついたところで、これを買い取ってくれないか」
「おいおい、唐突だな。あん? なんだこの袋に入った太く縮れたブロンド糸は――って、ぎょええええええ!!!! これ、
「その、まさかだ。たった今、採取してきた」
「あわ、あわわわ……。オレも長年商売をやってきたが、未だ生命の温もりティ感じる
「価格推移表を見る限り、また上昇傾向にあるようだな」
「そ、それはそうだが勇者様。たった数行前までのやり取りを思い出せよ! 感動的なストーリーの開始をそこはかとなく匂わせてたじゃねぇか!」
「匂わせ? 旅路も紆余曲折があり、汗と涙と、時おり愛が交錯する、エキサイティングかつハート・ウォーミングな冒険譚をか?」
「ああ。流れ的にもそうだろ?」
「あのなぁ。この話はそこらの有象無象の冒険譚とは違うんだよ。アレクサンドラはあくまで俺の旅の資金源として連れているに過ぎねぇ」
「き、鬼畜だぜ。オレが言うのもなんだが、聖女様を資金源だと公言するなんて、マジで限りなく黒に近いグレーな鬼畜じゃねぇか!」
「ヨーデル。お前も一商売人ならくだらねぇこと言ってねぇで商売のことだけを考えろ。世の中はカネだ。だろ?」
「……ハッ!」
「ようやく気付いたようだな。この世界の摂理に」
「オレとしたことがうっかりしてたぜ。オレは商売人のヨーデル。カネに生き、カネに死ぬ。そういう男だ」
めちゃくちゃな理論でも、勇者の俺が放てばたちまち正論セイロンティー。
目つきが鋭くなったヨーデルは、さっそく机の上にルーペと宝石用手袋を取り出して下(シモ)の査定に入る。
「ひぃふぅみぃ……二十本か。豊作だな。それに太さも縮れ具合も隙がねぇ」
「どうだ。いい値がつきそうか」
「待て待て。うろたえるな。ここはじっくり
「すっかりプロの目になってやがる……!」
その後もじっくりと――。
ピンセットや定規を使っての査定は続き、永遠とも思える時を経て、ようやくヨーデルは顔を上げる。
「……完了だ」
査定を終えたヨーデルは、まさに一仕事終えた男の顔――すべてを悟り、魂を解放した、カタルシス顔をしていた。
「今回の査定結果は――」
「ごくり」
「ブロンドの
「ま、マジかよ! 太っ腹もここまでくれば狂気の沙汰だな」
「オレもまさか、ここまでの金額をそろばんではじき出すとは思わなかったぜ。これもまた、商売人冥利に尽きるってやつよぉ」
「うっし、ヨーデル。その値段で買い取ってくれ」
「まいどあり!」
「次はこっちの、限りなく黒に近いグレーな穢れた薄布の査定を頼む」
「忙しいぜ。今夜は眠れねぇな!」
「眠らせないぜ!」
そんなこんなで更けていく、限りなく黒に近いグレーな鬼畜男たちの夜。
大金が動けば動くほど、ヨーデルの商売人としての血が騒いでくる。
「ところで勇者様。こっちばかりが買い取りしてたらさすがにフェアじゃねぇよなァ」
きたな。ヨーデルの本領が。
「大切な聖女様に似合うとびきりレアな装備を用意してるぜ」
ふぁさ……。
と言ってヨーデルが取り出したのは、薄く透き通った大きな布――?
「これは、なんだ」
「ヴェールだ。
「花嫁?」
「今さらとぼけんなよ。この小屋を出て丘を北に登っていけば、古ぼけた小さなチャペルがある。そこではかの有名な聖女、アイアンメイデンが控えていて未来ある男女の月下氷人を勤めてくれるんだ」
「アイアンメイデン?」
どっかで散々聞いたような名前だが……マジで実在する人物なのかよ。
と言うか待て待て。チャペル? 月下氷人?
「おいおいヨーデル。チャペルだの月下氷人だの冗談じゃねぇぞ」
「チャペルで愛を誓った後は、その先の魔王城で魔王の討伐イベントでエンディングってのが定番の流れだな」
「勝手に流れを作んな。俺は魔王討伐なんて一ミリたりとも興味ねぇんだよ」
「興味がない!? まさか勇者様からそんな言葉が出るとは思わなんだ……」
「いいか? 魔王を討伐しちまったら、世界が平和になっちまうだろうが。もしそんなことになれば、武器も防具も売れなくなっちまうんだぜ?」
「ハッ……!」
「風が吹けば桶屋が儲かると言うように、魔物がいるから武器防具屋が儲かる。言ってみれば魔王軍と武器防具屋は一心同体。大事なお得意様であり大切な資金源だ。討伐なんてもってのほかだ」
「そうか。うっかりしてたぜ。オレは商売人のヨーデル。カネに生き、カネに死ぬ。そういう男だ」
「分かればいい」
「ったく、勇者様の方が魔物よりよっぽど悪人面だぜ。結局のところ、魔物なんぞより人間が一番怖いってこったな」
「ンなに褒めんなよ……って」
後頭部をぽりぽりと謙遜しがてら、店内の様子をそれとなく窺うと――、
「ややっ!」
突如視界に入ってきた懐かしいディテールに、俺はビックリ仰天!
「どうしたよ。素っ頓狂な声を上げて」
「そこに飾ってあるのは朝露のローブ、デュクシのフードじゃねぇか!」
「おおっ、さすがは世界を股にかけて暗躍してる勇者様だけあってよく知ってるな。これはほんの数日前に仕入れた珍しい品でな」
「よく知ってるも何も、そりゃあ俺が初めてお前の兄弟に売ったアレクサンドラの装備だぞ」
「な、なにッ!? と言うことは、巡り巡って再び勇者様の前に現れたってわけか」
「そのようだな」
「面白ぇ。カネが天下の回り物と言うように、装備もまた天下を巡る。どこかの誰かがこれを着て旅に出、旅先で新しい装備と交換する際に手放す……その繰り返しだ」
「深いな」
「ああ」
ちょうど新しい着替えも欲しかったところだし、この際買い戻してみるか。
それに、今まで色々な服をコスプレさせてきたが、やはりアレクサンドラは白く清楚なローブがよく似合うし、映えるし、しっくりくる。
これはいわゆる、コスチューム変更ができるゲームにおいて、結局のところ初期デザインのコスチュームに落ち着く……と言う現象に通ずるものがある。
「ヨーデル。その装備一式と……そこのなめし皮のブーツを買おう。いくらだ」
「占めて三千イェンってところだな」
「ずこーーーー! 安すぎだろ!」
「いくら古い祝福が施されているローブと言えど、多くの人間が袖を通したとあっちゃ祝福も薄れてくるってもんだ。デュクシのフードも同様にな」
「そんなものか」
「ああ。だが、聖女様が再び袖を通した……とありゃあ、新たな祝福が色濃く施され、買い取り価格が上昇するかもしれねぇ」
「マジかよ。ったく、つくづく都合がいいよな。聖女補正は」
聖女のユーズド・ブースト錬金術の再来に、俺はニヤリと口元を歪ませる。
これはますますアレクサンドラから目が離せなくなりそうだ。
つーことで、気分が良くなった俺はついでに自分の装備も一新!
スクランブルソード、バジリスクアーマー、マキシマムレッグギアと言った、冒険者なら一度は装備してみたい夢の憧れ装備を購入してもお釣りがくる始末。
「サンキュー、ヨーデル」
「こちらこそ、今後ともごひいきに」
交渉は滞りなく進み、俺はノーリスクで高レアリティと高オリジナリティの装備をリターンすることに成功。
そしてその恩恵をもたらした主は、俺が部屋に戻ったときも出かける前と変わらずあどけない顔で眠りについていた。
「すこー、すこー、ふしゅる~、すやすや、あふンっ。もうっ、ゆうしゃさま~ぁ、まりょくかっぷらーめんとんこつあじ、めんがのびちゃいまふよぉ? れもっ、のびたらかさがましてむしろらっきー?」
「こいつ、まだカップラーメン食ってるのかよ。食い過ぎだろ!」
未だシーツをもぐもぐするアレクサンドラに心底呆れながら、俺は適度に温まったカップラーメン布団に潜り込む。
(ああ、そう言えば)
ヨーデルに夏用のタキシードを不当に押し付けられたことに対して抗議してやろうと思ったけど、機会を逃しちまった。
(まぁ、しょうがねぇな。今さら布団から出たくねぇし)
いや、それはただの言い訳に過ぎない。
なぜなら俺は、寝相の悪いアレクサンドラに大好きホールドされ、その膨らみを不当に押し付けられて物理的に身動きが取れないのだ。
だからしょうがない。そう、しょうがないから後は、膨らみの感触を楽しみつつ、風呂上がりの体臭を鼻いっぱいに楽しみながら眠ると言う選択肢に身をゆだねる他ないのだ――。
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