新生不可視の短剣

ここで新生不可視の短剣インビジブルダガーのイカれたメンバーを紹介するぜ!



1番! ドキドキめもりあるの栄えある主人公!

ゲームでは光の聖女なんて呼ばれていたらしいのに、最近では殺戮聖女と巷で有名になってしまった俺の婚約者! ユーリエル・ロウエル!


この前ユーリの父親であるダミアン・ロウエル公爵から、娘を本当に頼むね? と死にそうなくらい疲れた顔で言われたぜ!


ロウエル公爵家内で何かあったっぽいけど、詳細は知りたくないんだぜ!



2番! 本人は原作ゲームでは設定だけあって出てこないらしいが、最近再会した父親が原作の攻略対象キャラだった事が判明した俺の同郷の女の子! 獣人族の秘奥を操る冒険者!

リリー・オールドアイアン! 本名はリコリス!


娘が協力するならと、その父親と愉快な仲間達(服役中のテロリスト)もウチの部隊に入る事になったのは5ヶ月前!


しょうがないので、不可視の短剣インビジブルダガー内に特殊近接獣人部隊『スティレット』を新設したぜ!


でも、リリーと楽しげに話してると本気の殺気を叩き付けるのは止めてくれ!


俺はちゃんとまだ童貞だ!



3番! 頼れる皆のマッドサイエンティスト!

いや、魔法使いだからマッドウィザードかな?

ロンドリング教授!


この砦で日々量産される人工魔宝石を使って何か作りたいと言うから自動車を提案した所、たった3ヶ月で試作品を作り出した天才だ!


しかし、一応は極秘扱いだったのに何故か自動車の情報を聞き付けた馬や馬車の既存権力団体からの猛クレームを受け、乾いた笑いのキングに呼び出されたのはつい先月の話!


誰がリークしやがった!?(マジギレ)



4番! ちょいちょい裏切り疑惑があるものの、一応は頼れる副官!クーガーと旧不可視の短剣インビジブルダガーのメンバー達!


幸か不幸か原作ゲームより扱いが良くなってはいるらしく、今や部隊数850名オーバー!上限には達していないものの、大隊を名乗れる大所帯になった!


日々俺にこき使われてはいるが、給料弾むから頑張ってくれ!


目下の所、自動車関連情報をリークした下手人を炙りだせっ!!



俺の腹積もりでは、このイカれたメンバーにさらに3人の王子達を追加する予定だ。


片やメイン攻略対象キャラであるミカエル!


片や噛ませ犬の敵役とは言え、そのミカエルと同等の能力を持つ双子の弟、ウリエル!


さらに公式最強スキル所持者である隠し攻略キャラ、ガブリエル!



何せ予言の日まで残り5年を切っている。


俺一人の力ではどうしようもない事でも、愛とか友情とかのラベルを貼り付けた数の暴力なら全てを解決出来ると俺は信じている!


その為にはエルネスト王家の面倒な悩み事でも喜んで引き受ける所存だ!!




「―――この国には様々な問題が存在する。」


そう話しながら、俺はホワイトボードに貼られたこの国の地図をコンコンと叩く。



「先程クーガーが言っていた魔王問題に加え、既存の外交問題の癌である各地で燻っている国境戦線問題―――。例えば、常に魔物の暴走が危険視される東のアーネスト領。」


俺の言葉に従い、クーガーがホワイトボードに貼り付けられた地図に書き込みをする。


「海側である西の領土も問題がある。先日のランドマーク侯爵家失脚により、勢いは削れたが未だに独立の機運が燻る西側諸侯連合。教会の総本山である神聖共和国もそれに連動する動きを見せている。」


ランドマーク侯爵はあれだ、ミカエルとウリエルを担いでいた第2妃の取り巻きだな。


即時解体なんて事にはならなかったが、それなりに痛い目に合う予定らしい。


俺としてはその辺は興味のない話だ。



「そして、ここ。エルネスト王国北側、マルクゼール辺境伯領にある帝国との国境線。」


俺達のいる駐屯地の北側にあるマルクゼール辺境伯にクーガーが印を付ける。



「これらの諸問題に対する即応体制を確立させる事がこの国の国防にとって急務なのは間違いない。その為に俺としてはここにいるメンバーを中核にした不可視の短剣インビジブルダガー強化を計画している! 」



「異議あり!! 何で俺様達がそんな事をせにゃならんのだ! 別に王家の責務を放棄するつもりはないが、不可視の短剣インビジブルダガーの戦場に俺様達が立つ理由はないだろう!」


ブンブンと手を挙げて発言するウリエル。


態度は悪いが、ちゃんと会議で発言する時に手を挙げる所に育ちの良さを感じる。


―――うん。至極もっともな意見だ。


確かに、基本的に不可視の短剣インビジブルダガーは非正規戦闘を目的とした非合法部隊。栄えある王子達が立つ戦場としては不向きであろう。


しかし、そんな事は当然承知の上での判断だ。


そんな理由で躊躇する段階はとうの昔に過ぎ去っているのだ!


邪神のスキル呪いのせいで、この国の諸問題が表面化するスピードは異様に加速してしまっている。


通常の手続きで進めていては本来解決出来る問題も解決出来なくなってしまう。


この国の国防の為、そして引いては俺が今度こそ天寿を全うする為にも三王子の引き込みは決定事項なのだ!



「―――安心しろ。既に王の許可は取り付けてある。」


胸元に隠し持っていた王直筆の手紙を取り出す。


そこには投げやりな文字で、良きにはからえとデカデカと書かれていた。


それの書面を見て、ある程度事前説明を受けて事態を察していたガブリエルとミカエルが諦めた顔で大きく溜息をつく。


「ど、どういうことだ!?」


事情を知らされていないウリエルが驚愕する。



「お前達さ、まだ婚約者いないんだって?」


えー、ウソー?マジー?その歳で婚約者いないのってぇ王族としてヤバくなーい?婚約者がいない貴族が許されるのって5歳までだよねー。



「お、お前……! まさかっ!? 」


ようやく察したウリエルが目を見開く。



「お前、婚約者の話になると一目散に逃げ出してたんだってな。お前だけ前情報なしで拉致るのも仕方ないだろ?」


うん。王家の責務って事で諦めてくれ。


「3人の王子に3つの国境戦線。しかも都合が良い事にその王子達には婚約者がいない。……後は分かるな?」



簡単に言うと―――。


なーなー、三馬鹿王子ー。

俺達と一緒に国境線で大暴れして戦線を平定させて、その暁に政略結婚しよーぜ?


あ、でも本当に結婚すると今後のイベントに差し障るから婚約だけにして、それでなし崩し的に俺達の非正規戦闘に参加し続けろよー。


大丈夫大丈夫!

ちゃんとキングから国境戦線問題と王子達の婚約者問題解決するなら大抵はOKって言われてるからさ。


後処理問題が大変?


モーマンタイ! ウチの実家の家臣団が頑張るって言ってるから大丈夫!(言ってない)


―――と言う訳である。



「アル。質問良いか?」


固まってしまったウリエルを他所に、リリーが質問を投げ掛けてくる。


「いやな? 頭の良くないアタシでも北側の帝国と西側の諸侯連合の話は分かるんだよ。」


「あ、そうそう。私もリリーと同じ事が気になってたんだ。アルくん。アーネスト領地の国境戦線って魔物が原因だよね……。」


ユーリも話を聞いた時から気になっていたのだろう。2人揃って同じ事を尋ねてきた。



「「魔物と政略結婚するの?」」



リリーとユーリのごく当たり前の疑問を受けて、何故か皆がウリエルを見る。



「ば、馬鹿野郎!! せめて人間と政略結婚させろっ!! 」


一般的な感性の持ち主であるウリエルの叫びが会議室に響き渡る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る