第7話 獣人の町

 正確に言えば、獣人。人間みたいに二足で立ち上がっており、種類もゾウや猿、キリンなど――多種多様だった。


 私が改札を出た途端、一斉にパンッという破裂した音が鳴った。


 紙吹雪が舞う中、獣人達は一斉に「ようこそ! アニマラングちょうへ!」と声を上げた。


 どうやら人間と同じく話せるらしく、あっという間に囲まれてしまった。


「ねぇ、ねぇ、君、名前は?」

「どこから来たの? 北? 南?」

「私、サリー! よろしくね!」

「どこに住むの? 近所だったらいいな!」


 様々な動物達が四方八方に話しかけられるので、私はどうしたらいいのか分からず、「あの……えっと」とマゴマゴしていた。


「こらっ! あなた達、そんなに囲まれたら困っちゃうでしょ!」


 突然、囲んでいた彼らの声よりも大きくて通る声が聞こえてきた。


 すると、彼らはその声を聞いた途端、すぐに離れた。


 開かれた場所に、また新たな獣人がいた。


 狐だった。一人は着物を着ていて、黒の椿のかんざしを付けていた。


「ようこそ、モローさん、私はこの町の町長をしております、ラングと申します。以後、お見知りおきを」


 ラングという獣人は旅館の女将みたいに深々と頭を下げた後、切れ長の目でニコッと微笑んだ。


 "モロー"――新しい名前だからか、何か違和感がある。けど、前のよりはずっといい。


「私、パロルって言うの! よろしくね!」


 今度は、ラングの隣にいた獣人が挨拶してきた。パロルという獣人はオーバーオールとスカーフを頭に巻いた格好をしており、ラングとは真逆の性格を感じた。


「よ、よろしくお願いします」


 私は二人に深々と頭を下げると、ラングは何故か笑った。


「そんなによそよそしくしなくてもいいのよ。この町の住民になった時点で、私達は家族と同然なんだから」


 ラングはそう言いながら近づいて、抱き付いてきた。滑らかに、蛇に巻かれているかのように。


「今日からよろしくね」


 まるで恋人に語りかけているかのような口調でそう言われたので、私の全身が痺れてしまった。


「は、はい……」


 そのせいで、私は間抜けな口調で返事をしてしまった。

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