大きな不幸や事件がなくても、日常の何気ない不安事や不快な出来事は、連続して起こると嫌なものですよね。
本作はそういう不快な出来事が虫として象徴的に描かれていて、主人公の胸にわだかまる嫌悪感や徒労感に自然と共感できます。
人間として生まれたからには、清く正しく無害に生きるなんてことはほとんど不可能なのでしょう。
私も虫を殺めるのは好きではないですが、それよりも部屋の中に闖入者がのさばっていることの方が嫌で、どうにか退治だけはできるようになりました。
ですけれども、虫を殺めた後のなんとも言えない不快感は、なかなか言葉にしづらいですよね。
人生における幸・不幸のバランスの悪さには辟易するものです。
今まで嫌な出来事が続いたと思ったら、今度はいいことがたくさん起こる。あるいは平静に戻る。
そのきっかけって、自分でも案外分からないものなのですよね。
その転換点と主人公の心情が仔細に描かれていて、心に残る一編でした。