第5話

中学時代は全国大会でも優勝を繰り返していた私なのに、入学直後の4月に開催された地区ごとの記録会で予選敗退。

その後も

毎日の「坂道ダッシュ」や大会の一発勝負に備えた予行練習ともいえる「タイムトライアル走」といった部活の練習でも自分が思い描くような走りが出来ない日々が続いていた。


美琴は

高校進学のきっかけにもなった「陸上」が嫌いになるのが怖くて、でもそのことをなかなか誰にも打ち明けることが出来なくて、心を閉ざしかけていた。



「宇佐さんだよね?練習お疲れ様!」

そんな、孤独を強く感じるようになっていた私に声をかけてくれたのは短距離走で昨年日本一になった南雲先輩だった。

連覇のかかる大事な時期で自分も追い込まれてきていると思うが、それにも関わらず私の話を親身になって聞いてくれる南雲先輩。


美琴は


「先輩の貴重な練習時間が短くなるから早く話を切り上げないと」


と思う反面、心のどこかで


「先輩ともっと長く話していたい」


と、先輩と話をする度に天使と悪魔の葛藤が私の中で渦巻いていた。

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心の支えって… 葵羽 @kamatama822

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